高知ファンクラブ

“高知をもっと元気にする”ボランティア集団、「高知ファンクラブ」のブログです。

鈴木朝夫のぷらっとウオーク・・・マテリアル・マイレージ

2011-08-20 | 2011年2月~の記事

マテリアル・マイレージ   

             

              情報プラットフォーム、No.286, 7月号、2011

  

  食料の自給率が40%以下の日本、国民一人あたりのフード・マイレージが世界一の日本である。木材ならばウッド・マイレージ、石材ならばストー ン・マイ
レージであり、鉄やセメントなど建築資材も含めればマテリアル・マイレージが
対応する。「その場調達」でマイレージ(輸送コスト)を小さくすれば、環境保
護になり、地域経済にもプラスになるのだが、日本人は不足するものなら何で
も、海外から取寄せれば良いと思っている。 

 

  ヨーロッパの石積み建造物の場合、近くに石切場がある。日本でも、城壁の石材も近場での調達が多い。それでも重い石材を運ぶのは大変で、修羅 (そり)引く、浮きを付けて水中を引くなど様々な工夫が成されて来た。ギリシャのアテネで驚いたのは、全てが大理石だったことである。建造物だ けではなく、歩道のタイルも大理石である。遠くのオリーブの山々は大理石、納得である。地中海沿岸では、手近な安価な石材が大理石なのである。 

 

 

 

 

 


 決壊した堤防の仮止め工事で使う土嚢は「その場調達」そのものと言える。先日の高知新聞夕刊(2011/1/12)には、工科大発の土嚢建築が 紹介されていた。少量のセメントを加えた土砂を袋詰にした土嚢を、有刺鉄線で補強する工法である。面白い発想である。トン袋(フレキシブル・コン テナー)も仮土留めとして、また鉄線の金網の蛇籠に砕石を詰めて護岸として使われる。竹の蛇籠も昔は多かった。これらの詰め物の中身、土砂・砂 利・砕石など、その殆どが「その場調達」であり、マテリアル・マイレージを小さくしている。 

 

 

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鈴木朝夫(すずき ともお)
718-0054 
高知県香美市土佐山田町植718
0887-52-5154
、携帯 090-3461-6571  
s-tomoo@diary.ocn.ne.jp   

 

鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

鈴木朝夫の講演・出版の記録

環境保全で云えば、森林率84%の高知県だから、県産材を使ってウッド・マイ
レージを小さくしなければならない。土佐の森からの木の家を建て、それを長持ちさせて、CO2を貯蓄したい。さらに、持続可能な森に仕立て上げて、CO2を定期預金に廻そう。
木材を渡してその上に煉瓦を積む屋根、あるいはアーチ構造の屋根に積み上げている。内部は涼しく保たれ、暑く乾燥した気候に適して いる。雪の冬山での緊急避難的に作る横穴の雪洞では、急斜面が必須である。掘り出した雪の搬出に労力を取られないためである。横穴の雪洞とヤオト ンはよく似ている。アラスカのイヌイットがドーム状に積み上げる雪洞(イグルー)では、内側の床から圧雪ブロックを調達し、床を下げて行く。アド ベの日干し煉瓦と同じ発想である。いずれもその場にある土壌や氷雪を材料とする「その場調達」である。
 黄土高原では横穴住居である。崖に横穴、または中庭になる穴を掘ってから横穴を作る。この地下住居ヤオトンは断熱性が高く、冬夏を問わずに快適 だそうである。中近東では日干し煉瓦で家(アドベ)を造っている。日干し煉瓦は、繊維質の補強剤を練り込んで天火で乾かしたものであり、積み上げ て壁面を作る。
丸い川石の法面、角張った山石の法面、棚田の風情も異なってい る。ストー
ン・マイレージを子供ながらに読み取っていたようである。
 中国・雲南省西部は竹の宝庫である。ミャオ族は竹に関わる文化を持ってい
る。生活用品は勿論、家の壁や屋根、さらには橋も竹である。竹の揺りか ご
で、納骨は竹筒である。
子供の頃、父親の転勤で日本中を移動した。最も長距離は福岡から札幌で、3
の旅であった。中1の時である。煤煙に顔を汚しながら、車窓からの景色や風物
の変化を飽きもせず眺める旅であった。防風林・屋敷林の風情も異なる。トンネ
ルを抜け峠を越えると、粘土の種類に応じてだろうか、家々の屋根瓦の 色が変わっている。地域の個性が感じられ、集落の様子から環境の相違が見えてくる。