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ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

Frederica

2006年11月22日 | H-I

Heyer, Georgette. 1965, 2004. Frederica. Arrow Books.
                              
満足の

主人公はおしゃべりだけどしっかり者の長女Fredericaと、ものすごくお金持ちでハンサムなAlverstoke侯爵。でも第一章で女たらしで家族に対して冷たい嫌な男という印象をゆるぎないものにしています。
主人公はこの二人だけど、次々と問題をもたらすFredericaのいたずらっ子弟達と絶世の美人だけどあんまり頭の良くない妹も重要な登場人物たち。

Fredericaは、一目見た男性誰もが恋に落ちてしまうほどの美人の妹を社交界デビューさせるために、遠縁にあたるAlverstokeに援助を頼みます。

ほんの数日前に自分の姪達をAlverstoke自身の邸宅でデビューさせてほしいという願いをむげに却下した侯爵ですが、ふと気まぐれでFredericaの手紙を思い出し彼女を訪ねます。
何もかもに飽き飽きし、自分のお金にむらがる「親戚」にはうんざりしていたAlverstokeですが、Fredericaのノンストップのおしゃべりとそこに見える聡明さに説明のつかない魅力を覚えます。でもやっぱりこの遠縁と名乗るFredericaも結局は他の親戚達とあまり変わりないか、と思って帰ろうと立ち上がった瞬間、Fredericaの末の弟Felixが飼い犬と共に部屋に舞い込んできます。ここから侯爵は次々と家族のドタバタ劇に巻き込まれていくのですが、本人も不思議なことに、楽しんでいる自分がいるのです。

Fredericaの最初のベラしゃべりには引きますが、すぐに彼女は家族思いのしっかりした賢い女性だと分かります。一番上の弟Harryが本当は一家の長ですが、まだまだ遊び盛りで頼りない大学生。Fredericaはずっと妹と弟達との面倒を見てきて、24歳となったいま、もう結婚はせずに、美人の妹Charisを結婚させ、弟達JessamyとFelixが立派に成人するのに人生を費やすんだとがんばっていました。

爵位有り、お金持ち、ハンサムで花婿候補No1のAlverstokeはデビュー以来、
あの手この手の「結婚」の罠を避けて、今37歳。結婚なんてするものか、しかも一生飽きないような女性との結婚なんて有り得ないと思っていました。
そんな、なんでもすぐに飽きてしまう侯爵でしたが、Fredericaの弟達が次から次へトラブルに巻き込まれるのに関わるたびに、心配はするものの、なんだかこのMerriville一家と関わるのが楽しくなってきます。Felixが自分のことをヒーローのように崇拝するのなんだかうれしいし。
そして次第に、Fredericaの重荷を少しでも自分が背負ってあげられればという気持ちが強くなっていきます。こんな気持ちになったことのないAlverstokeは戸惑います。しかも、自分を異性として、花婿候補として見てくれない女性も初めて。そんなFredericaにどう接近していいものか、女たらしと呼ばれた侯爵がちょっと切ない思いをします。

Fredericaが最初に持ち込んだトラブルといい、弟のFelixが次から次へと"Cousin Alverstoke! Cousin Alverstoke!!"といって色々なことを無邪気にかわいくおねだりし侯爵をギョッとさせる様子などは大爆笑。
Felixが乗った気球が不時着した実際の場所などここで見れます。

現代に書かれたヒストリカル/リージェンシーロマンスのようなのを期待すると、やっぱり昔のものはつまらないと感じる読者もいるかもしれません。E・A・ポーなど昔のものを読んでがっかりする読者がいますが、ポーやへイヤー以前にこのような作品を書いた人がいなかったことを忘れてはいけません!現代に書かれたものはこういったオリジナルのストーリーラインをリサイクルし、現代の読者の意向に沿った肉付けをしてあるので、現代に書かれたもののほうが「マネ」なんです。
それを踏まえて読めば、この作品(だけに限らず他のものも)も、ユーモアや主人公二人のロマンスの心理描写などものすごく新鮮だし、しかも現代の私達でさえも共感できるのに驚きます。

私はこれの後にWallpaper Historicalを読み始めたのですが
、舌が肥えてしまったので後回しにして、ロマンスでない普通の小説を今読んでいます。

古い表現や言葉などで読みづらいと感じる人もいるかもしれません(40-50年で結構言語って変わるもんですね)が、質の良いロマンスに飢えているならHeyerもオススメ


Lady Thief

2006年11月15日 | H-I

Kay Hooper. 2006. Lady Thief. Jove Romance.
                       
Story:     
Dialogue:
Hero:      
Heroine:  
Sensuality:

今ではコンテンポラリーロマンス作家(らしい)のHooperがデビューした頃に書いたリージェンシーロマンス。全体的には十分楽しめる作品。表現などはGeorgette Heyerを意識しているような感じですが、Wallpaper Historicalです。

Miss. Jennifer Courtenayは、一見は怪しくも美しい金色の目をした上品な女性。実は最近上流社会を騒がしているキャットウーマン。昔実の父親を殺した殺人犯を捕まえるために「強盗」をしていたのです。「強盗」といっても、お金以外の貴金属は数日後には全て本人の元に返されるし(お金も後々きちんと返すつもりなので金庫にしまってあるし)、どうやら彼女は国を裏切るスパイを追っているようです。

ボウストリートと協力してスパイを追っていたSpencer公爵の馬車はある夜道、キャットウーマンに止められます。
宝石とお金を取ったあとこのキャットウーマンは、政府が盗まれたと思っていた重要な秘密書類をSpencerに渡し、スパイは政府内部に潜んでいるというアドバイスまでして去って行きます。
Spencerはスパイを暴くのに協力してもらうため、もう一度彼女と接触し話をしなければいけません。そのために数日後の夜、彼女が宝石を返しにホテルに現れるのを待っていました。
それと同時に、彼女の怪しく光る瞳とエレガントな仕草をもう一度見たい気持ちの方が強まります。

      
Georgette Heyerを意識しているだけに、Wallpaper Historicalな部分がよく目立ちました。とある伯爵がBowstreet Runnerの仕事ぶりに「高い税金払ってるのに」と現代の庶民のようなグチをこぼすのや、Hackney(貸し馬)や馬車を"Cab"と呼んだり。


あと、セリフがお定まりでメロドラマチックでしたが、誠実で一本気な性格のSpencerに免じて良しとします。
ロマンスノベルお約束のラブシーンはないけど、それでも二人が惹かれあう様子はアツアツです。
このお話の後に"Masquerade"という短編小説も入っています。私からはです。

An Enjoyable Read


Love Lessons

2006年10月25日 | H-I

Cheryl Holt. 2001. Love Lessons. St.Martin's Paperbacks.

Story:      
Dialogue:   
Hero:        
Heroine:    
Sensuality: 

Lady Abigail Westonは25歳でスピンスター。でもかわいい妹が幸せな結婚生活を送るためには性教育が必要。そこで何も知らないAbigailは、勇気をふりしぼって放蕩物で有名なMr. James Stevensを訪ねます。
賭博場を経営する青年実業家James。Abigailの申し出にはびっくりはしましたが、彼女の魅力の虜になってしまし、彼女に一から教えるため週2回密会する約束をします。
先日読んだ"Deeper Than Desire"とあらすじは似ていて、Jamesは実はどっかの貴族の庶子。父親との確執が後半のお話にツイストを効かせていますが、"Deeper..."で見た展開なので、面白みに欠けています。

全体的にストーリーは他のHoltの作品よりも良かったと言えば良かったのですが、それでもやっぱり希薄で、ラブシーンが中心のお話です。
私は居眠りしながらザザーっと流し読みしました。というのも、ラブシーンはほとんど他のお話と展開が同じで、何も知らないお嬢様に一から教える・・・というもの。
そんなにセクシーでもなかったし。

Holtのように主人公二人が何を根拠にお互い惹かれあうのか分からないけど、とにかく惚れてしまった、次に会うのが待てない、というのは私の中ではロマンスに入らないんです。
二人が少し離れている期間にお互いの(アンナコトヤコンナコト)ことを考えているのも全て、次のラブシーンのためのお膳立てのため。これがお話のセクシーな部分だと感じる読者もいるだろうし、私のようにこれでかなり飽きる読者もいると思います。
こういうのを読みたい気分ならこれはOKなのでしょうが、私はロマンスが読みたいので…。

私の中では、エロティカではないけどものすごくセクシーでしかもロマンスも文句なしだったのは、Liz Carlyleの"A Woman of Virture"、Christina Doddの"Rules of Engagement"やSuzan Enochの作品いくつか、などです。


Deeper Than Desire

2006年10月16日 | H-I

Cheryl Holt. 2004. Deeper than Desire. St. Martin's Paperbacks.

"Love Lessons"よりもこれが先に手元に届いたのでこれから読みました。
以前に”
Total Surrender"と"Too Tempting to Touch"を読んでかなり嫌な思いをしたので、もういい!とか宣言しておきながら、これはあらすじが良かったのであの時の痛みも忘れ、手に取りました。
が、しかし、です…。

Story:    
Dialogue:
Hero:     
Heroine: 
Sensuality:

Holtの作品は需要があるかぎり本は出版され続けるのだと思いますが、私はこの人は消えても痛くないです。

1813年
Lady Olivia Hopkinsは家計を立て直すためにも、継母の言うとおり、自分の死んだ父親と同年代のSalisbury伯爵となんとか結婚にこぎつけなければいけません。
きっとプロポーズされるだろうという見込みのもと、Salisburyの邸宅にあいさつがてら泊まっていたOliviaは、ある晩、邸宅の書斎でSalisburyの庶子Phillipと出会います。
出会うと言っても、OliviaがこれまでにみたこともないHな本を見つけ眺めているところを見つかってしまいます。

もちろん、ここからOliviaとPhillipは、だめだだめだと自分自身に言い聞かせながらも夜中こっそり会う日が続き、恋に落ちていきます。

庶子としてのPhillipとこの隠し子に対してどう対処していいのかわからない父親Salisburyのピリピリした関係とその心理描写のおかげで、このつまらないお話を読むのを中断せずにすんだと思ったのですが、結局全体的に見ると中断しても別に痛くはなかったですね…。

OliviaとPhillipのロマンスが進展する前に、実はOliviaの継母Margaretの妹であるWinnieと伯爵が互いに一目ぼれし、激しく惹かれあい、こちらの話のほうが盛り上がります。
さらにこの二組と平行して、Margaretの実の娘、まだ16歳かそこらのPenelopeもお相手を見つけますが、反抗心旺盛のため、この人だけはやめて!というような「紳士」と関係を持ちます。この二人の関係が一番狂っています。

Eroticaに奥の深いストーリー性を期待してはいけないということを忘れなければ、これでいいのかな。少なくともHoltの作品中「ストーリー」らしきものは、それぞれのカップルが燃えるようなラブシーンを繰り広げるためのお膳立てなので、Baloghみたいなものを期待してると痛い目を見ます!しかも、今回のこの作品、ラブシーンも別に特別熱いものではありませんでした。主流のロマンスノベルのラブシーンではやらないようなことをやる、ちょっと「一線を越えた」感じはありますが、Total Surrenderほどではないし、かといってそういうのが私の好みかというとそうでもないですし。

これでEroticaはもういいやと思ったけど、EroticaはHoltだけじゃないですよね。もしかしたら"Love Lessons"はいいかもしれないし!

…。


これにめげず他の作家もがんばって試してみます。


Just One of Those Flings

2006年09月10日 | H-I

Candice Hern (2006) Just One of Those Flings.
Signet Eclipse Historical Romance.

The Merry Widowsシリーズ2作目。1作目は"
In the Thrill of the Night"です。
このシリーズの表紙の絵、好きです。よく見ると今回のは胸が・・・ 買った方はじっくり見てみて下さいね。

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:


お金も地位もあり自立性を謳歌している未亡人達"The Merry Widows"。元々はチャリティー目的で結成したグループですが、もうちょっと人生を楽しむためにも恋人がいたっていいじゃない、とみんな恋人探しも始めます。

今回のは35歳で2人の子持ちの未亡人、Lady Somerfieldがヒロイン。年下の元気な男の子(と言っても29歳)をムシャシャっといっちゃいたいお姉さま方、ド~ゾ~。

Beatrice、Lady Somerfieldは今年のロンドンシーズンは姪っ子のシャペロンで大忙しですが、ある晩、仮面舞踏会で謎の紳士と出会います。情熱に押し流されるように彼と熱いひと時を過ごしますが、根は生真面目なBeatrice、これではいけないと自分に言い聞かせ、名を告げずにその場を去ります。

実はこの紳士はインドから帰って来たばかりの公爵家の跡継ぎ、Marquess of Thayne、Gabrielだとわかった時には時すでに遅し。Beatriceの姪が彼の公爵夫人候補としてみんなに噂されるようになってからでした。

30歳までに結婚すると親に約束してしまったThayne。若い花嫁探しのためにあちこちのパーティーなどに参加しますが、あの仮面舞踏会で出会った女性のことが忘れられません。
それにしてももう一人、Thayneの気を引いて仕方ないのは、自分の花嫁候補のシャペロンで大人の魅力たっぷりのBeatrice・・・。
            
リージェンシーロマンスだけど、現代の独立した女性の気持ちとつがるようにしてあるので、こてこてリージェンシーが好きな私からはハートマーク3つです。
それでも、「年下の恋人」や「年齢差」などがテーマになっていて、いつも私が読むものとは違い、新鮮でもありました。

私の幼なじみ(28歳)が5つ年下の男の子と2年前付き合い始めた時、本人も他の幼なじみ2人もみんなで
「あともう一歩で未成年ワイセツ容疑で逮捕やったな」
と力なく笑ったのを覚えています。

年上の女性と結婚するのがリージェンシー時代にどんな反響を呼んだかはあまり知りませんが、興味深いテーマだと思いました。
特にこのお話では、ヒーローが公爵家の跡取りなので若い花嫁をもらって跡継ぎを生ませるのが重要というのは、登場人物だけでなくヒストリカルロマンスファンも重々承知。
プラス、ヒロインはもうすぐ36で二人の子持ちという設定。大多数のロマンス小説のヒロインの年齢・背景設定からはちょっとはみ出ています。Beatriceの姪も、叔母さんは「年だから」恋愛なんてしない、と信じ込んでいます。

処女でもなく出産の経験したって、恋に落ちる時は落ちるもの。Thayneの前で裸になった時にお腹のたるみを気にするBeatriceの気持ち、女性なら出産経験の有無に関わらず同感せずにはいられません。だからこそここで一気にThayneに惚れてしまうかも!

つい先日、
Teach Me Tonightでロマンス小説の主人公達は18-35歳の間に設定されている(=35以上の人は恋愛しないというメッセージが無意識に植え込まれる)ことに触れていました。
もちろんターゲットにしている読者の年齢層を考えての設定ですが、実生活ではどの年代もロマンスは可能ですよね。
それを証明する映画"
Innocence"は私のお気に入りです。白髪になってもあの時の情熱は忘れられない!

(北条政子だったっけ?女の性欲は死んで灰になるまで、なんて言ったのは。)


Lord of Sin

2006年07月20日 | H-I

Hunter, Madeline (2005) Lord of Sin. Bantam.

ある作家のことが気に入ったので、過去の作品を集めたり、「昔の作風のほうが良かった」とかコメントを言い出すロマンスファンの中毒症状(?)をGlommingと言うそうです。

シリーズものに関しては全部読むのは躊躇することもあるけど、しっかりGlommingの症状がでてる私。先日読んだHunterの"
By Possession"が良かったので、過去の作品も気になって図書館で"Lord of Sin"を借りてきました。

Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:

このお話では Engravings [彫刻凹版(おうはん)](美術印刷・有価証券・紙幣などの印刷に用いる)が大きなテーマになってます。

「責任」や「義務」といったものからは程遠いお気楽な人生を送っていたEwan McLeanは思いがけずも伯爵領を継ぐことになりました。叔父と死に際に交わした約束を守るため、一路スコットランドのCameron氏に会いに行きます。しかしCameron氏自身はすでに亡くなっており、そこで出会ったのは娘のBrideと妹達。

Engravingの技術で、美術品だけでなく、生活のために紙幣もちょこっと偽造していたBride達。
ある日突然、Ewanが先伯爵の遺言でBride達の面倒をみるためにやってきたといってもあまり歓迎できません。生活費は欲しいけど、これ以上家計に首をつっこまれると紙幣偽造がばれてしまう。しかもEwanはEngravingの収集家!

EwanはBrideのことが気になってしかたなく、一生懸命誘惑しようとしますが、今ひとつ心を開いてくれないBride。
BrideはEwanにどんどん惹かれていくけど、妹達への責任があるのでRakeな彼に誘惑されるわけにはいけません。それに、なんと彼が紙幣偽造の真犯人を捕まえるために政府に協力していると分かってからはなおさらです。



Engravingやその技術、さらに美術品の偽造に関する参考書を読んでいるようでもあり、セクシーなお話ではあったけど、題名がほのめかすほどヒーローはSinfulというわけではありませんでしたよ。どちらかというと、かわいかったです。
ヒロインはスピンスターでウブなところもありますが、処女ではないので、このことでちょっと引いてしまう方もいるかもしれません・・・。

でも、全体的には十分楽しめるお話です。

この作品は以下のシリーズのスピンオフです。Hunterの<ホームページ>であらすじをどうぞ。
THE SEDUCER、THE SAINT、THE CHARMER、THE SINNER、THE ROMANTIC


Infamous by Virginia Henley

2006年07月12日 | H-I

Virginia Henley (2006) Infamous.
Signet.

Story:
Dialogue:
Hero:
Heroine:
Sensuality:

1290年代。スコットランド独立戦争の頃。

私がいつも読んでいるヒストリカルロマンスとは雰囲気が違い、"Infamous"はスコットランドの歴史マニアにはたまらないものになっていると思います。
歴史上実在した人物達を上手く甦らせてあり、彼らが歴史を築いていく様をヒロインMarjory(Jory)自身の歴史に翻弄される人生を通して見ることができます。
今回のお話は、前回作"A Year And A Day"の裏話です。このJoryの兄Lynxがヒーローのお話を"Infamous"ではJoryの目から見ています。

が、
All About Romanceのレビューアーが言うように、この作品はロマンスノベルとしては不出来です。避けて通ったほうがいいかもしれません。

いずれにしても、歴史上の事実などがロマンスノベルにはリアルすぎるので、私はこういうの苦手です。ヒロインもなんだかアバズレになっていくし…。
          

Joryは、Surrey伯爵の姪という設定。(歴史上実際にSurrey伯爵は、後にスコットランドの独立戦争でWilliam Wallaceから大打撃を受けることになる軍を率いた。)
Joryはエドワード1世の娘Joanna王女に女官として仕えていました。
オテンバプリンセスJoannaから「政略結婚させられておとなしい妻としてつまらない人生を送ることになる前に一度パーっと(男と)遊んだら」とけしかけられ、JoryはパワフルでセクシーなWarwick伯爵に目をつけます。

お話は4つのパートに分かれており、パート1でJoryと16歳年上のWarwick伯爵が出会い、恋に落ちます。でも、作者がどれだけ二人は恋に落ちたと説明しても、読者には何も伝わってきません。

パート2でJoryは別の人と結婚させられ、パート3では未亡人となり、スコットランドの将来の王になるBruceと関係を持ちます。

あれ?ロマンスノベル買ったはずなんだけど…、と表紙などもう一度チェックしてしまった程、ロマンスがないんです。パート2で結婚した旦那とも、パート3で関係を持った恋人とも。

そしてなにより、パート2、3にはヒーローWarrickが全然でてきません。

パート4でやっと2人は一緒になりますが、パート1と同様、なぜ二人が惹かれあうのがが分かりません。Warwickはかっこいいんだけどねー。


今回、私にとって初のHenleyでしたが、当たり所が悪かったみたいです…。


By Possession by Madeline Hunter

2006年06月01日 | H-I
Madeline Hunter. 2000. By Possession. Batman Books Historical Romance.
                                  

Story:     
Dialogue:
Hero:      
Heroine:  
Sensuality:

A Page-Turner!

1324年、エドワード2世の頃のお話。

8年前に十字軍遠征で死んだと思われていたヒーローAddis de Valence男爵が生きて帰還します。
厳しさを身にまとい、すっかり雰囲気が変わってしまったAddisに対して、それでも昔から変わることなく憧れていたのはヒロインMoira Falkner。

AddisのいぬまにAddisの父と妻は亡くなっており、領地などすべて異母弟に乗っ取られていました。エドワード王に訴えても異母弟が王の腰ぎんちゃくのため、彼の権利はあっさりと無視され、Addisは兵を集め始めます。
Addisが行方不明だった間、MoiraはAddisの息子を引き取り育てていました。農奴の身分として生まれた彼女は数年前に自由の身になっていましたが、証人達が領地から出て行ったため証明できません。

何もかもなくし心も体もたくさん傷ついたAddisは、強くてやさしく、そしてセクシーなMoiraに安らぎを見つけ離れられなくなります。自分の側に置いておくためにも彼女を農奴の身分から解放する気はまったくありません。

ですが、異母弟から領地を取り戻すことは彼女を失うことになってしまいます…。

ヒーローがヒロインを強く求める気持ちがよく伝わり、ドキドキします。二人の個性も強く印象に残るお話です。

中世ロマンスには「オレ・オマエ・スキ」みたいな話し方しかできないぶっきらぼうなヒーローが多いじゃないですか。今回のヒーローはあまりそんな雰囲気はなく、彼なりにきちんとヒロインに気持ちを告げたり、彼一人で色々悩む時も彼の人間性の奥深さが分かるものになっていて良かったです。

中世物を書かせればピカイチのJo Beverleyの作品も、このHunterの作品も、時代背景に忠実なだけに、ヒロイン達が女性であるが故に苦しい目にあいます。だからこそ、エピローグが欲しかった!様々な障害を乗り越えてやっとハッピーエンドした二人の姿、特にMoiraが幸せになった姿をもっと見たかったです。

大ロマン。(字が小さくて、また視力が…)

このシリーズ1作目は"By Arrangement"。3作目は"By Design"です。

Total Surrender

2006年05月15日 | H-I
Total Surrender
By Cheryl Holt (2002) St. Martin's Paperbacks

Holtの作品2作まとめて。シリーズではありません。

昔のハーレクインロマンスと違い、最近はロマンスノベルは一般的に大人の女性をターゲットにしています。読者や年齢層が増えると共に、色々なサブカテゴリーも出来ました。Contemporary, Regency, Historical, Romance Suspense, Humour, Erotica, Vampire, Paranormal, Time Travel, Futuristic Romanceなど。
Holtの作品はこの中のEroticaのカテゴリーに入るものが多いようです。ラブシーンがとにかく多く内容もポルノすれすれのところなので、ラブロマンスを楽しみたい読者向けではありません。国によっては出版できないか官能小説扱いでしょうね。好きであれば作者もファンも文句はないのでしょうが、こういう作品がロマンスノベルファンに対する偏見を招くのだと思わずにはいられません。
なんにせよ、Eroticaとはどんなものかと思ってホルトを一冊買ってきて読み終わってがっかりしました。ふと気がつくと、彼女の別の作品を図書館で借りてきてあり、こっちはましかもと思って読みましたが…。なんともかんとも…。

Story:   
Dialogue: 
Hero:     Cad
Heroine:  
Sensuality: Repetitive and Disgusting.

家の財産を兄のギャンブルで食い尽くされてしまったLady Sarah Comptonは、貧乏生活に入る前に最後の思い出にとハウスパーティーに参加します。その毎年恒例のハウスパーティーとは乱交ありの悪名高いものだとSarahは知りませんでした。大胆にも彼女の入浴室に座って自分のことを見ていた紳士がMichael Stevensという悪名高き女たらしだということも知りませんでした。

とある伯爵の庶子であるマイケル、彼の女性関係はロンドンで最も有名です。ロンドンに嫌気がさしてハウスパーティーにきましたが、純粋な雰囲気の漂う赤毛美人サラを、自分の「客」と勘違いし誘惑に取りかかります。勘違いだと分かると、サラのような純粋なレディーがいる場所ではない、と帰るよう言いつけますがサラは聞きません。ちょっとダークな背景があるヒーロー・マイケルは、美しいけど頑固で自分の忠告を聞き入れないサラを、こんな卑猥なパーティーの最中、どうしても放っておくことができません…。

Spoiler(今回のSpoilerは読んでほしいです。)
何が嫌かって、ヒーローがお金こそもらってないけど「娼夫」なんです。
性生活に満足していないレディー達が入れ替わり立ち代り彼の所に来るのですが、彼はそんな彼女達の欲望を満たしてあげるのです。
しかも!ヒロインの部屋がたまたま「事」が起こる部屋の隣だったので、邸宅ものぞき穴だらけだし、彼女はのぞき穴から全てを見聞きするんです。全部は見えないし経験のない彼女は何が起こっているのかよく分からないということだけど、

いや、分かるでしょーー!!?? 結構グラフィックだしぃ!

セリフは70年代のポルノ並み(?)でかなり笑えるけど、ロマンスノベルではやっちゃいけません。
さらに、マイケルはサラと結婚することになりますが、貧乏でケチでずるがしこいサラの兄がこの結婚を企てたと(かなり強引に)勘違いし、マイケルは激怒します。
結果彼は、借金で何もかも全てなくなってしまったサラの実家に彼女を置き去りにし半年間放っておきます。仕送りもしません。
サラは暖炉に火をともすこともできず一人で畑をたがやし自足自給の生活を6ヶ月おくります!
こんなひどい男はロマンスノベルのヒーローどころか、人間として魅力ありません。
さらに、彼が色々とジゴロになった理由を書き立てますが、全く納得いきませんよ、Ms. Holt。

それに、最後サラのように許せる人間はバカとしか言いようがありません。

アマゾンでもあまり人気がないのに出し続けているところをみると、結構需要があるのでしょうか。              

Too Tempting to Touch

2006年05月15日 | H-I
Too Tempting to Touch
By Cheryl Holt (2006) St. Martin's Paperbacks

Holtの作品2作連続で。

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: Too many sex scenes. Tedious.

こっちの作品のほうがまだ、ストーリーラインはましです。

Alex Marshal(子爵か伯爵だったと思う)は結婚したら心を入れ替えて、浮気もしない誠実な夫になる気は満々(のつもり)です。でも、結婚するまではロンドンの乗り気なレディー達としっかり遊ぶ気も満々です。

ヒロインEllen Drakeは、10年前に兄が泥棒の(無実の)罪をきせられ家族は社会的排除にあい、自分もレディーの付き人Companionとなって細々と働いていました。 あるパーティーで、エレンは自分の雇い人であるレディーの婚約者Alexが別のレディーを誘惑しているのに遭遇します。忠実で生真面目なエレンは婚約者のレディーが傷つかないよう、女癖の悪いアレックスの浮気をことごとく邪魔します。

最初は腹が立ったアレックスですが、そのうち部屋の片隅でいつも邪魔する機会をうかがっているエレンのことのほうが気になり始めます…。

Spoiler
流刑にされていたエレンの兄とAlexの婚約者が恋に落ちます。この二人のお話も平行して進みますが、もちろんラブシーンがありすぎて飽き飽きします。

人によって好みは色々ですが、私はHoltはもう結構です。

The Seduction of an English Scoundrel

2006年05月11日 | H-I

The Seduction of an English Scoundrel
By Jillian Hunter ジリアン・ハンター
Ivy Books (Apr, 2005)

A Pleasant Read.このシリーズの他の作品も要チェックです。

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 7

待てども待てども、美しい花嫁 Lady Jane Welsham の花婿は教会に現れることはありませんでした。
花婿を待つ間、花婿のいとこで一家の長でもあるGrason Boscastle, Sedgecroft侯爵は、花嫁の魅力的なおしりを2時間程見つめながら、こんなに魅力的なジェーンを教会に置き去りにするなんてもったいないなぁ・・・、
もとい、いとこの責任は一家の長である自分が責任をとる!とかたく心に誓います。
そして台無しになった結婚式の後、ジェーンの名誉を回復するためにあちこち彼女をエスコートし始めます。

教会に置き去りにされても毅然とした態度を貫き通し、みんなから賞賛をあびたジェーンでしたが、実はこれにはちょっとした秘密が・・・。

秘密を打ち明ければジェーンの人生最大の計画が台無しになってしまうし、グレイソンの紳士としての名誉と親切心を踏みにじることになってしまうので黙りとおすジェーンですが、どんどん深みにはまっていきます。
でも二人はには抵抗できず互いに惹かれていきます。

 グレイソンのような「オレについてこい」タイプが好きな人も多いかもしれませんが、アマゾンの読者からは感じ悪いとの声も見られます。(ブルーストッキングが多いからね。)
家のためとジェーンのためを思ってのグレイソンなりの「紳士的」な行いは確かに強引でしたが、Womaniserとうたわれたヒーローが急に「紳士」になろうとした結果、不慣れなことをしたので不器用さが出ているようにも見えました。アマゾン読者が文句を言うのはきっと、ジェーンの秘密がばれた時の彼の反応でしょう。ちょっとロマンスヒーローとしての株が下がります。


購入した新刊とレビュー待ちの本です。
The Perfect Rake         by Anne Gracie
To Wed a Scandalous Spy  by Celeste Bradley
Bride of Lochbarr        by Margaret Moore
By Possession            By Madeline Hunter

The Naked Marquis        By Sally Mackenzie
The Bachelor Trap        BY Elizabeth Thornton
His Wicked Kiss          By Gaelen Foley


A Belated Bride

2006年05月08日 | H-I

A Belated Bride
By Karen Hawkins カレン・ホーキンス (1, 2001) Avon

ホーキンスも時々チェックするようにしてます。今回のは少し古いですが、アマゾンでも結構人気なので。

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 7

表紙の絵、言葉を失います。結婚式に上半身裸の花婿…。ヘシアンブーツをここまで詳しく描いた絵は少ないのですが。

アマゾンのも本の裏表紙のあらすじも読まないように気をつけて下さい。最後の数章で起こることが書かれています。 昔「デビルマン」の再放送を夏休みにやっていましたが、悪者退治の部分まで全て見せてしまう次回予告が楽しみで、兄と毎日見てはウヘウヘ笑ったもんです。でもロマンスノベルのあらすじでこれやられても、笑えないので 

ヒロインはヨークシャーの田舎で、叔母二人と足の不自由な弟の面倒を見ながら傾いた財産を一人で一生懸命立て直そうとがんばる26歳のアラベラ。
ヒーローは10年前、アラベラと恋に落ち結婚を申し込むところでしたが、破産寸前の公爵領を救うためにお金持ち令嬢と結婚を余儀なくされたルシエン、Deveraux公爵です。

10年経っても傷ついた心は癒されることがなかったアラベラですが、ある夜の帰り道で怪我を負い意識不明のルシエンと再会し、治療するためにも家に連れて帰るしかありません。

ルシエンは、アラベラを何とかして助けたいのですが、頑固な彼女は彼から援助を素直に受け入れてくれるはずもなく、あの手この手で援助を申し出ます。ナポレオンの懐を暖めている反逆者を探る仕事もありましたが、本当は彼女の家に少しでも長く滞在するための言い訳でも…?

ルシエンの「10年前彼女と結婚していたら」という気持ちと、アラベラの「彼はどうせまた去ってしまう」という10年間傷ついたままの心を守ろうとするのは切ないです。

あと、貴族の称号のまちがいが多くてびっくりします。脇役の男爵とヒーローの妹の呼び方が完全にまちがってます。それに、ヒロインの叔母達はれっきとしたレディーなのに、ヒーローは馴れ馴れしくAuntなんて呼んでます。

本当はハート4つあげたいのですが、裏表紙やアマゾンのあらすじがお話のプロットを台無しにしているし、称号が最初から最後まで間違っているので、ハート半分減点。

An Enjoyable Read.

(またまた予告と違うものレビューしてしまいました。


In the Thrill of the Night

2006年04月18日 | H-I
In the Thrill of the Night
By Candice Hern (2006) キャンディス・ハーン
Story:  
Dialogue:
Hero:   
Heroine: 
Sensuality: 7

地位もお金もある若い未亡人たちが寄り集まって、もう結婚生活や夫から束縛されることなく人生を楽しむゾ、とThe Merry Widowsを結成します。

マリアンは亡き夫を深く愛していましたが、Merry Widowsの他のレディー達の話を聞いていると、もしかして自分の結婚生活 - 特にラブライフ - のほうで何か欠如していたものがあるのではないかと思い始めます。
Merry Widowsのメンバーからの勧めもあって恋人をつくってみようと決心します。

亡き夫の親友でマリアン自身の友人でもあるアダムは、いつもきちんとしていて上品で魅力的なマリアンが恋人をつくると宣言しただけでなく、さらに恋人候補のリストまで見せたとき、大ショックを受けます。ちょうどアダム自身、別の女性と婚約発表してしまった後でしたが、そうでなければ自ら立候補していたところです。
リストに挙げられた男たちがマリアンを抱くなんて、想像するだけでもアダムはがまんできません。マリアンの計画をなんとか阻止しなければ!

おもしろいお話です。マリアンが恋人候補を読み上げ、アダムが一人ずつケチをつけるシーンは笑えます。
アダムはことごとく裏でマリアンの計画を邪魔し、マリアンがなぜこうもうまくいかないんだろうと不可解に思いながら心の中でリストが減っていくプロットもよくできています。二人のキャラクターや心の描写もよく書けていて、物語に引き込まれます。

ジュリア・クインが好きな人にはオススメです。

The Masqueraders

2006年03月13日 | H-I
The Masqueraders
Georgette Heyer (1928) ジョーゼット・ヘイヤー

ヒストリカルロマンスの元祖、へイヤーです。文学史的価値を除いても読む価値のある作品です。検索してみましたが、翻訳はされていないようです。

Story:   
Dialogue:  
Romance:  
Adventure: 

日本の平安期に書かれた「とりかえばや物語」を思い起こさせますが、これもオリジナルです。
ヘイヤーがまだリージェンシーに目覚める前に書かれた作品で、舞台はジョージ王朝期、主人公はプルーデンスと弟ロビンです。

若くてかしこそうなMr.ピーター・メリオットと清楚な妹Missケイト・メリオットがロンドンの上流社会にさっそうと現れ人気者となります。実はこの二人はワケがあって男装・女装しているプルーとロビンです。ピーターは紳士として男装しているプルーで、ケイトはレディーとして女装したロビンです。最初の1、2章では読者に分かるように書かれていないので、あらすじを知らないとかなり混乱します。

ロマンスとして分類されていますが、全体的には二人の冒険がお話全体を占めています。二人でレディー・レティーシャを危機から救い出したり、ピーターが暗いロンドンの夜道で襲われ戦ったり、ロビンが仮面をつけて再度レティーシャを救ったりと読者を飽きさせません。

二人はこの冒険でお互いの人生の伴侶に出会います。プルーはSir アンソニー、ロビンはレティーシャです。二人は同姓の友人としての付き合いしかできないし、二人の父が抱える問題からハッピーエンドはないだろうと少し悲観的でした。

いつも飄々としているが知的で鋭いアンソニーは、しかし、謎めいたピーターに興味を抱き接近します。実は最初数回会っただけで、ピーターが実は女性だと気付いていました。アンソニーがピーターの正体を問い詰めるシーンは、エロティックです。ワインがしたたるピーターの白くてか細い手首をアンソニーが強く握り締め二人は数秒間見つめあいます。かなわない思いを胸に秘めた女性としてのプルーの清純さとか弱さが一気にここで溢れ出し、一方のアンソニーは自分のことをもっと信頼してほしいという気持ちと彼女に対する尊敬と賞賛の気持ち、そして愛する女性を守るのだいう決意がにじみ出ています。アンソニーの率直なプロポーズは、ロマンスファンの心をギュッとワシ掴みです。

ロビンのほうのロマンスは、彼自身楽天的ですがやはりハッピーエンドはあまり期待していませんでした。相手のレティーシャとは女性の友人としてしか近付くことができなかったのですが、仮面舞踏会でブラック・ドミノとして彼女に近付き、人気のない薄暗いテラスで甘い言葉をささやきキスを奪うシーンは腰砕けです。

ですが、最初に触れたように、二人の冒険のほうが存在感が大きいという印象は否めません。現代に書かれたHRを読むとこのように思うのかもしれません。 登場人物全てが個性的で、会話もおもしろく、ロマンスは80年近く前に書かれたものとは思えません。現代に書かれたHRのようにラブシーンはありませんが、元祖ヒストリカルにしか存在しないエロティシズムがあります。これにかなうものを書ける現代の作家はそうそういません。

原作を読むのがもちろん一番いいのですが、ヘイヤーの作品が良い翻訳者に回り逢えることを願っています。