スズメバチ「このままでは死ぬ」と駆除で100万円を請求 悪徳業者のトラップを防ぐたった一つのコツとは
5/21(火) 11:31配信
AERA dot.
夏に向け、スズメバチは巣作りを行う(写真はイメージです/gettyimages)
害虫駆除をめぐるトラブルが急増している。昨年度、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は過去最多。夏に向けて活動が活発化するスズメバチの駆除で、「今すぐ駆除しなければ命が危ない」と、100万円を請求された人もいる。
【写真】軒下にできた巨大すぎるスズメバチの巣を駆除するプロ
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「ウチにスズメバチの巣があるなんて」
東海地方に暮らす50代の女性は昨年秋、自宅の庭木に大きなスズメバチの巣がついているのを発見。大慌てで、ネットで駆除業者を探した。
■「見積価格700円」で釣って100万円を要求
すると、「24時間365日対応」「最短10分で到着」「見積もり無料」という業者を見つけた。ネット上で簡易見積もりをすると、「参考見積価格約700円~」と表示された。電話で相談すると、「今すぐにそちらに向かう」とのこと。
やってきた業者は、スズメバチの巣を見るなり、「早く駆除したほうがいいです」。女性がためらっていると、「このままではハチに刺されて死ぬ」「近所の人が刺されて死ぬと裁判になって大変な費用がかかる」「今なら約150万円を約100万円にする」と、畳みかけた。
女性は不安にあらがえず、その場で契約書にサインした。作業内容には「サービス一式」とだけ記載されていた。駆除作業は数日間にわたって行われ、巣は確かに取り除かれた。
ところが、冷静に考えると、業者の話は変だった。100万円という金額も高すぎる。幸い、代金はまだ払っていなかったので、地元の消費生活センターに相談した。
■業者のネット検索に要注意
国民生活センターによると、インターネットで見つけた業者に依頼し、トラブルに巻き込まれるケースは多い。業者の言うままに料金を支払ってしまったケースが大半だという。
近畿地方在住の70代男性も、自宅の庭でスズメバチの巣を見つけ、ネットで駆除業者を検索した。「追加料金一切なし」「料金は約600円から」と大きく表示されたサイトを発見。電話で駆除を依頼すると、自宅に業者がやってきた。
■合計請求額は11万円
業者は現場を見て、「殺虫スプレーを使用するので3千円かかります」と言った。男性は「3千円くらいなら」と了承。だが、作業を始めると今度は「駆除剤として4万円」と、追加料金を要求してきた。話が違うと思ったが、駆除の途中で帰ってもらうわけにはいかないと、男性は渋々受け入れた。
ところが、それで終わりではなかった。作業後、手渡された請求書には「巣の除去費」などが加算され、合計請求額は約11万円。納得できなかったが、駆除は完了したので仕方ないと思い、料金を支払った。
■まずは自治体の相談窓口へ
国民生活センターは、悪徳駆除業者にだまされないために、ネット検索に頼るのではなく、自治体の相談窓口か、害虫駆除の業界団体「公益社団法人 日本ペストコントロール協会」の窓口を利用してほしいという。同協会は全国47都道府県に地区協会を設けている。
東京都ペストコントロール協会の会長で、スズメバチの駆除を手掛ける「ヨシダ消毒」(練馬区)の清水一郎代表取締役は悪徳業者による被害の現状を嘆く。
「自宅など身近な場所でスズメバチの巣を見つけると、普通の人はパニックになってしまう。一刻も早く駆除したいが、どうすればいいのか、わからない。ネットで検索すると、怪しい業者に引っかかってしまうケースも多いんです」
■駆除の相場は5万円前後
スズメバチの駆除料金は、業者によって異なるが、相場は5万円前後だという。前述のケースの「600円から」は、業界の常識では考えられない額だが、一般の人は目安を知らない。ネット広告を見比べても、まともな業者とそうでない業者の見分けがつかないのだ。
清水さんは「スズメバチだけでなく、ゴキブリやトコジラミなど、害虫で困ったら、まず自治体に相談してほしい」と訴える。
スズメバチの場合、無料で駆除を行ったり、駆除に補助金を出してくれたりする自治体がある。今の時期であれば、一般の人でも比較的簡単に駆除できるため、駆除用の防護服を貸し出してくれるところもある。自治体に相談すれば、保健所などを通じて最寄りのペストコントロール協会の窓口を教えてくれる。
「東京の協会の場合、住まいに近い会員業者を3つ紹介します。そこに電話して見積もりをとり、納得したうえで、駆除を依頼してください」
業者は現場を見て、「殺虫スプレーを使用するので3千円かかります」と言った。男性は「3千円くらいなら」と了承。だが、作業を始めると今度は「駆除剤として4万円」と、追加料金を要求してきた。話が違うと思ったが、駆除の途中で帰ってもらうわけにはいかないと、男性は渋々受け入れた。
ところが、それで終わりではなかった。作業後、手渡された請求書には「巣の除去費」などが加算され、合計請求額は約11万円。納得できなかったが、駆除は完了したので仕方ないと思い、料金を支払った。
■まずは自治体の相談窓口へ
国民生活センターは、悪徳駆除業者にだまされないために、ネット検索に頼るのではなく、自治体の相談窓口か、害虫駆除の業界団体「公益社団法人 日本ペストコントロール協会」の窓口を利用してほしいという。同協会は全国47都道府県に地区協会を設けている。
東京都ペストコントロール協会の会長で、スズメバチの駆除を手掛ける「ヨシダ消毒」(練馬区)の清水一郎代表取締役は悪徳業者による被害の現状を嘆く。
「自宅など身近な場所でスズメバチの巣を見つけると、普通の人はパニックになってしまう。一刻も早く駆除したいが、どうすればいいのか、わからない。ネットで検索すると、怪しい業者に引っかかってしまうケースも多いんです」
■駆除の相場は5万円前後
スズメバチの駆除料金は、業者によって異なるが、相場は5万円前後だという。前述のケースの「600円から」は、業界の常識では考えられない額だが、一般の人は目安を知らない。ネット広告を見比べても、まともな業者とそうでない業者の見分けがつかないのだ。
清水さんは「スズメバチだけでなく、ゴキブリやトコジラミなど、害虫で困ったら、まず自治体に相談してほしい」と訴える。
スズメバチの場合、無料で駆除を行ったり、駆除に補助金を出してくれたりする自治体がある。今の時期であれば、一般の人でも比較的簡単に駆除できるため、駆除用の防護服を貸し出してくれるところもある。自治体に相談すれば、保健所などを通じて最寄りのペストコントロール協会の窓口を教えてくれる。
「東京の協会の場合、住まいに近い会員業者を3つ紹介します。そこに電話して見積もりをとり、納得したうえで、駆除を依頼してください」
■10万円を超える金額は「ぼったくり」
会員業者には駆除内容と金額を協会に報告する義務があり、行政もそれを監査する。
「10万円を超える金額は明らかに『ぼったくり』です。もし仮に、協会にそのような業者がいた場合は排除します」
ヨシダ消毒の場合、電話で相談を受けた際、状況の詳細を聞いて、見積額を伝える。
「現場を見た後に金額が変わることはまれです。家屋の内部に巣がかかっていて壁の一部を撤去せざるを得なかったり、巣が聞いていた状況よりもずっと高い位置にあったりする場合などだけです」
■「ここがヘンだよ」テレビ番組
スズメバチの駆除に、危険で大変なイメージを持っていないだろうか。バラエティー番組で「スズメバチが飛んできました、危ない!」「ディレクターが刺されました」など、緊迫のシーンを見たことがある人も多いだろう。
ところが、清水さんによると、「ここがヘン」なのだという。
「まともな業者であれば、スズメバチを暴れさせるようなことはしません。我々が駆除する際は、スズメバチ一匹巣から出すことなく、あっという間に作業を終えますから、『えっ、もう全部取っちゃったんですか』と言われる。テレビの『絵』にはならないんです(笑)」
■ネット広告で「コールセンター」へ誘導
ネットで暗躍するスズメバチの駆除業者について、「実態のない会社ばかりです」と、清水さんは指摘する。ネット広告の業者の電話番号にかけると、コールセンターにつながることが多い。
「これが、いわゆる元締め業者。さまざまな害虫駆除だけでなく、『鍵をなくした』『トイレの水漏れを直してほしい』など、緊急性のある仕事の依頼を受け付けている。そこがかなりの金額を中抜きしたうえで、実際の業者に発注しているようです」
清水さんの元にも、そうしたコールセンターから依頼の電話がかかってくることがあるという。
「もちろん、すべて断ります」
元締めのコールセンターから仕事を受ける業者は、所在地も不明だったりする「得体のしれない」事業者が多いという。
「スズメバチの巣を見つけたら、対策をスマホで検索する人は多い。でも、巣に気がつくのは昼間ですよね。であれば、行政機関の窓口も開いていますから、まずは行政に相談してほしい。それだけで悪徳業者にだまされずにすみます」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)
会員業者には駆除内容と金額を協会に報告する義務があり、行政もそれを監査する。
「10万円を超える金額は明らかに『ぼったくり』です。もし仮に、協会にそのような業者がいた場合は排除します」
ヨシダ消毒の場合、電話で相談を受けた際、状況の詳細を聞いて、見積額を伝える。
「現場を見た後に金額が変わることはまれです。家屋の内部に巣がかかっていて壁の一部を撤去せざるを得なかったり、巣が聞いていた状況よりもずっと高い位置にあったりする場合などだけです」
■「ここがヘンだよ」テレビ番組
スズメバチの駆除に、危険で大変なイメージを持っていないだろうか。バラエティー番組で「スズメバチが飛んできました、危ない!」「ディレクターが刺されました」など、緊迫のシーンを見たことがある人も多いだろう。
ところが、清水さんによると、「ここがヘン」なのだという。
「まともな業者であれば、スズメバチを暴れさせるようなことはしません。我々が駆除する際は、スズメバチ一匹巣から出すことなく、あっという間に作業を終えますから、『えっ、もう全部取っちゃったんですか』と言われる。テレビの『絵』にはならないんです(笑)」
■ネット広告で「コールセンター」へ誘導
ネットで暗躍するスズメバチの駆除業者について、「実態のない会社ばかりです」と、清水さんは指摘する。ネット広告の業者の電話番号にかけると、コールセンターにつながることが多い。
「これが、いわゆる元締め業者。さまざまな害虫駆除だけでなく、『鍵をなくした』『トイレの水漏れを直してほしい』など、緊急性のある仕事の依頼を受け付けている。そこがかなりの金額を中抜きしたうえで、実際の業者に発注しているようです」
清水さんの元にも、そうしたコールセンターから依頼の電話がかかってくることがあるという。
「もちろん、すべて断ります」
元締めのコールセンターから仕事を受ける業者は、所在地も不明だったりする「得体のしれない」事業者が多いという。
「スズメバチの巣を見つけたら、対策をスマホで検索する人は多い。でも、巣に気がつくのは昼間ですよね。であれば、行政機関の窓口も開いていますから、まずは行政に相談してほしい。それだけで悪徳業者にだまされずにすみます」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)