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糖尿病の指標「HbA1c 6%遵守」は犠牲者を生むだけ…医師・和田秀樹が警鐘を鳴らす"健康診断・標準値の大ウソ"

2023年12月21日 19時03分59秒 | 医療のこと

糖尿病の指標「HbA1c 6%遵守」は犠牲者を生むだけ…医師・和田秀樹が警鐘を鳴らす"健康診断・標準値の大ウソ" (msn.com)

© PRESIDENT Online

健康診断の数値とはどう向き合うべきか。医師の和田秀樹さんは「糖尿病の状態を示すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の基準値は長年6パーセントとされてきたが、2008年の大規模調査では7~7.9パーセントくらいに保ったほうがはるかに死亡率が低いという報告があった。ところが、糖尿病学会はこの5年後の2013年に初めて条件付きで新基準を採用した。日本はエビデンスより偉い医者たちの意見のほうが勝ってしまう恐ろしい国だから、ストレスになる健康診断は受けなくていい」という――。
※本稿は、和田秀樹『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。


エビデンスより偉い医者の意見が勝つ恐ろしい国・日本
かつて人間ドック学会が、血圧は収縮期(最大)血圧を147mmHg、拡張期(最小)血圧を94mmHgを高血圧の基準にするという基準案を出したことがあります。
これは彼らの150万人にもおよぶ調査データに基づくものですから、エビデンスに近いものです。


ところが途端に循環器内科や高血圧学会の偉い医者たちが「それでは、将来の心血管疾患や脳卒中、腎臓病の発症予防にならない」と激しく、その基準案を叩きました。


結局のところ、人間ドック学会は、収縮期血圧を130mmHg以上で軽度以上というように逆に基準を厳しくしてしまいました。


本書でこれまでも論じてきたように、高血圧学会も循環器の学会も大規模比較調査をしていないのです。


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日本はエビデンスより偉い医者たちの意見のほうが勝ってしまうという、わたしにいわせれば恐ろしい国なのです。


では健康診断は必要ないというのか? と思う人もいることでしょう。


はい、そのとおり。健康診断には意味がないというのがわたしの持論です。


健康数値にエビデンスがない以上、「この数値では病気になりやすい」ということすらわからないわけで、個人差はまったく考慮されていません。


健康診断の場合、「そういえば頭痛がする」といった自覚症状はほとんどありません。


多くの人が健康診断の数値を見て「異常値なんだ」と知るわけです。


身体に不具合がなく、快適に暮らしているのに、この数値だと将来病気になると脅されて、薬を飲まされ、食事や酒を我慢させられる。


しかし、病気が増えるかどうかの調査は海外でなされたもので、日本人の体質は無視されています。


健康数値に一喜一憂することがストレスになる
現代の日本以外の国での考えかたでは、人間は心と身体が相互連関している生き物で、両者が健康であってこそ健康といえるのですから、健康数値に一喜一憂することがストレスになるなら健康とはいえないのです。


よけいな心配事を増やすことがストレスになりえるという視点が現状の健康診断から抜け落ちていることにわたしは納得がいきません。


健康診断は「このままではマズイかもしれない」という仮説を振りかざして、標準値からちょっと外れている人までも薬漬けにして生活の質を下げてしまう装置のようなものです。


そもそも人が健康に生きるための方法に正解はないのです。


たとえば子どもには、ほめるとのびるタイプと叱ることでのびるタイプがいます。


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仮にほめるほうがのびた子が7割いたとすると、ほめたほうがいいというのがエビデンスがある言説ということになります。


しかし、それは統計学的な話。自分の子どもは少数派の叱られてのびるタイプかもしれません。エビデンスというのはその程度のものなのです。


仮にエビデンスがあっても、自分の子どもは叱ったほうがのびる子かもしれない。それなのにほめ続けて成績が下がり続けても、やはり叱らないのでしょうか?


医者のいうことを聞いて調子が悪いなら、自分は少数派のほうの人間かもしれないという個人差を考える姿勢が身を守ります。医者は通常は個人差を考えてくれないのですから。


何も知らなければ薬を飲み始める必要もない
いずれにしても標準値がアメリカ(イギリスのこともありますが)の、しかも統計学的なものでしかない以上、そのうえ、日本では統計学的にどちらが身体にいいかもわからない以上、数値が悪いといって治療したほうがいいかどうかはわからない。


しかも今のままで不具合はない。ならば健康診断を受けない=知らぬが仏の幸せを選ぶという選択があっていいはずです。


数値が悪いと知らされれば気になる、気になるから医師の指導に耳を傾ける、その結果としてすすめられるままに薬を飲み始めてしまうのですが、何も知らなければ薬を飲み始めることもなく、薬によって不具合が生じることもなかったということも十分にありえるのですから。


少なくとも闇雲に薬を飲み始めるのはやめたほうがいいとわたしなら考えます。


日本には労働安全衛生法があって、企業が従業員に健康診断を受けさせなければならないという決まりになっていますが、欧米にはありません。


日本では定年退職後も役所から「健康診断のお知らせ」が届きますが、公費を使って同じ項目の検査をする習慣があるのは韓国と日本だけ。


なぜ他の国では健康診断に重きをおいていないのかといえば、早期発見早期治療が確実に死亡率を減少させるというエビデンスがないと考えられているからです。


欧米では健康診断は強制されていない
諸外国では、自分の健康が心配だという人は100パーセント自費でやってくださいという方針で、つまり実際に役立っているかどうかわからない健康診断に国のお金は使わないとしているのです。


フィンランドで会社員を対象に15年にわたっておこなわれた追跡調査では、毎年きちんと健康診断をして、異常値に関しては食生活を改善する、薬で治療をするとしたA群と、調査票の記入だけさせてまったく医学的介入をおこなわなかったB群を比較しています。


その結果、B群のほうが心臓血管系の病気、高血圧、がん、各種の死亡、自殺、いずれについても健康を管理されていたグループより数が少なかったという結果が出ています。


ストレスがないことのほうが身体にいいということでしょう。


A群のほうが少ないだろうと考えられていた心臓血管系の病気に関してもA群のほうが多かったという皮肉なデータが残っています。


30年以上、高齢者を専門に患者さんを見てきたわたし自身の経験を踏まえてみても、健康診断を受けたからといって寿命がのびることにつながるとは思えないのです。


健康診断を受けている割合が多い男性のほうが、受ける人が少なかった時代に中高年時代をすごした女性より寿命がのびていないのです。


わたしの見るところ、好きなものを食べて暮らしている人は長生きの傾向があります。


食べたいものを我慢して血圧や血糖値は標準値に戻すことができても、免疫が低下してがんになるリスクが高まってしまうということも大いにありえるのです。


マーガリン論争「身体にいい」から「悪い」へ
また、何が身体にいいかという知識も時代とともに、変容しています。


マーガリンが身体にいいと真剣に推奨されていた時代もあり、学校給食でも毎食マーガリンが出てきていました。


でも今ではマーガリンにはトランス脂肪酸という不飽和脂肪酸が含まれ、それをとりすぎると心血管系の疾患のリスクを増すことがわかり、マーガリンは忌避されるようになりました。


治療法にしても、たとえば乳がんになったらハルステッド法といって乳房を全摘し、大胸筋までとり去るという手術一辺倒でした。


このことに対して、医師の近藤誠さんが、「がんだけとり除いて放射線を当てる乳房温存療法でも、全摘した人との生存率は変わらない」という海外の有名な論文を日本の雑誌に発表したところ、外科の教授たちによる激しいバッシングを受けました。


しかし、それから15年ほどたってから、乳房温存療法はあるステージまでの乳がんの標準治療となりました。


エビデンスがあるのにもかかわらず、なぜ15年もかかってしまったのかという理由がこれまた恐ろしい。


外科医の多くが乳房温存療法に内心では賛同しつつも、偉い先生たちが引退するまで本音をいえずにいたからだとされています。


少なくとも公然と乳房温存療法をおこなうと、大学内では出世できなかったのです。


厳しすぎる数値の犠牲者は国民
糖尿病の治療法は、現在、過去1~2カ月程度の血糖値を反映するとされる指標であるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の基準値は長年6パーセントとされてきましたが、7~7.9パーセントくらいに保つ緩い管理をした群のほうがはるかに死亡率が低いという大規模調査の報告が2008年になされました。


ところが世界でいちばん権威のある臨床医学の雑誌にこの論文が掲載されたのに、日本の糖尿病学会はいちゃもんをつけ続け、5年後の2013年になって初めて、低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合に限り8パーセントでのコントロールを許すという新基準を採用しました。


今でも、日本では6パーセントにこだわる医者がたくさんいます。


アメリカの内科学会では2018年に具体的な目標値としてほとんどの患者でHbA1c7パーセントを下限とする7~8パーセントとしたほか、余命が10年以内と推定される患者に対しては、HbA1cの目標値も不要とするガイドラインが出されています。


いずれにせよ、諸外国で大規模調査が出されても、偉い先生がたが標準値を変えようとしないために、より患者の死亡率が低い治療が導入されるのに、こんなに時間がかかるのです。


そして厳しすぎる数値の犠牲になって死亡率が高いままだったり、医療費を払わされ続けているのは国民なのです。


---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」 ----------





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