
東京五輪に合わせて来日中の国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が16日午後、広島市中区の平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花した。
新型コロナウイルス禍での五輪開催に賛否両論がある上、緊急事態宣言中の東京都との往来自粛を広島県が呼び掛ける中で、歓迎一色とはならない異例の被爆地訪問となった。

16日は国連で採択された「五輪休戦決議」期間の開始日。東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長が同行した。バッハ会長たちは、平和記念公園で湯崎英彦知事、小池信之副市長の出迎えを受け、原爆慰霊碑に献花。原爆資料館を見学し、被爆者の体験を聞いた後、スピーチする見通しだ。
市は、一連の訪問行事に伴い、16日午後0時半から3時半ごろまでの間、平和記念公園のうち慰霊碑、資料館、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館を含む範囲で、一般市民の立ち入りを禁止している。資料館と祈念館も同じ時間帯で一時閉館。資料館は再開後、閉館時間を当日に限って通常から2時間遅らせ午後8時にする。
また松井一実市長は、広島への原爆投下後に降った「黒い雨」被害を巡り、原告の住民たちが全面勝訴した14日の広島高裁判決を受けて急きょ16日午前に厚生労働省で田村憲久厚労相に面会し、上告断念を要請。バッハ会長との対談を欠席した。
バッハ会長は当初、5月に来日し、平和記念公園で聖火リレーの式典に参加する予定だったが、緊急事態宣言が東京都などへ出される中、来日を見送った。五輪開幕を前に今月8日に来日し、4度目の緊急事態宣言下にある東京都内に滞在。県は県民に、宣言の対象地域との行き来を最大限自粛するよう求めている。
この日、市民団体などが平和記念公園周辺でバッハ会長の被爆地訪問や五輪開催に反対し、デモ行進をした。