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米議会占拠事件の衝撃>国防総省は州兵の動員要請を6回も断った…広がる“猜疑心“>このときは?

2024年07月29日 00時03分50秒 | 国際情勢のことなど
バイデン次期大統領の就任式を1月20日に控えるワシントンDC市内の雰囲気は、一変している。 

1/30/2021

議会議事堂、最高裁判所、ホワイトハウスなどの重要防護施設周辺の角には、近隣州から動員された州兵たちが警備にあたる。中心地への車の乗り入れ、駐車はいずれも禁止され、人通りはまばらだ。

 「生きてここを出られないと覚悟した」(民主党アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員)。

襲撃があった議会議事堂は、高さ2メートルのフェンスが取り囲むように設置された。ホワイトハウス近くの屋台や歌のパフォーマーは姿を消し、街に立つのは軍服姿の州兵だ。その数は、最終的には2万人に膨れ上がる見込みだ。
首都ワシントンはまるで要塞

警備にあたる州兵や警察

新型コロナウイルスで低調だった市内のホテルも、政府機関から一気に200人分の宿泊予約が入ることがあるなど、降って湧いた特需で息を吹き返しているようだ。 州兵のほかに、FBI連邦捜査局、ATF米司法省アルコール・タバコ・火器取締局、近隣州の州警察、議会警察、公園警察、連邦保安官などの法執行機関の捜査官、特殊部隊が市内に動員されている。いま、ワシントンは、さながら要塞のようだ。 ただ、警備にあたる州兵を見ると、銃も防弾ベストも、警棒、盾も携行しない軽装備(というより丸腰)だ。次なる混乱や暴動が起きた場合、自国民に対して危害を加えた、という状況を避けたい警備側の事情がある。
広がる猜疑心“軍はトランプ支持者を鎮圧したくない?”

議事堂に乱入しようとするデモ隊 6日

実際、議会警察やワシントン市当局からの度重なる州兵動員の要請を、国防総省は少なくとも6回、断っていることが明らかになっている。 米陸軍の将軍は「すぐに派遣してくれ、というが、州兵を闇雲に派遣して事態が急変、悪化したら、どんな問題が起きるかわからない」と難色を示し、議会警察側を苛立たせたという。



 軍の側の懸念はこうだ。州兵は、基本的には軍事訓練を受けて軍事的論理で動く実力部隊であり、警察はまったく機能も発想も異なる。警察組織が、自己、相手、周辺も含めてあらゆる犠牲を出さずに目的を完遂することを目指すのに対して、軍事組織は、死傷者や犠牲が出る前提で作戦行動をおこなう。警察が暴動の鎮圧といった、市民と直接対峙するシナリオの訓練を受けているのに対して、州兵は基本的には戦闘訓練を受けているだけで、暴動鎮圧は主任務ではない。 そんな組織を、軽々に自国民に危害を加えることになりかねない状況に投入できない、というのが、国防総省の懸念だ。その意味では、州兵は警察部隊よりも抑制的である、ともいえるかもしれない。


 だが、断られた側は「この危機において、なぜ動いてくれない?」といぶかり、次第に「トランプ支持者に、軍はシンパシーがあるからではないか?」という猜疑心に変わっていく。この分断政治にあって「軍はトランプ支持者を鎮圧したくないから動員を渋った」という陰謀論的な思い込みに陥りやすくなる。


暴徒を殺傷せずに鎮圧するシステム

非殺傷システム「LRAD」国防総省提供

しかし、州兵や警察部隊は、自己の対処能力を超える混乱となりそうだ、と判断すれば、実力行使に出ることも十分にあり得る、と考えておくべきだろう。 その場合、使用されるのは「Active Denial System(ADS)」や「Long Range Acoustic Device (LRAD)」と呼ばれる“非殺傷システム”だと言われている。

 どちらも、暴徒を殺傷せずに鎮圧するためのもので、ADSはマイクロ波を照射し、火傷を負わない程度の熱を皮膚に感じるようになっているのに対し、LRADは、人間の耳に不快な高周波の音を、遠距離から発信することができる。 LRADは、黒人差別反対デモが全米各地で起きた2020年6月に、ポートランドやシカゴ、ニューヨークなどで実際に警察によって使用された、と言われている。

 2020年6月1日、ワシントンDCでも黒人差別反対デモが激化した際に、LRADやADSの使用が俎上にのぼったことを、ワシントンDC州兵の少佐が下院に内部告発している。

 この少佐が担当弁護士を通じて下院に提出した告発文によれば、ワシントンDCの州兵司令部が、一度はLRADの貸与を軍から受けるかどうかを検討したこと、ワシントンDC市警察がLRADを保有していること、が明らかにされている。 

軍が保有するLRADは、ワシントンから車で40分ほどのクアンティコ海兵隊基地に保管されている、と少佐は指摘しており、ワシントン市内に迅速に展開することは難しくないだろう。 

ちなみに少佐の告発文には、ホワイトハウス周辺でのデモが激化した昨年6月に、5.56ミリ弾と7.62ミリ弾の実弾7000発がワシントンDC州兵の武器庫に運び込まれていた、と証言している。デモ隊に対して実弾を使用するシナリオをも、州兵司令部は備えていたのである。 

続編となる「米議会占拠事件の衝撃【3】」では、事件の容疑者から浮かび上がるトランプ支持者の特徴と、20日の就任式に向けて緊張が高まる中、警備体制に潜む意外な“リスク”について、考察する。


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