8・17・2020
新型コロナウイルスで戦後最悪の不況となるなか、企業業績への影響が深刻化している。中小企業のみならず、ついに上場企業でも、全社員に退職勧奨を行ったり、売上高が前年比で97%減に陥る企業も出始めた。
(東京経済東京支社情報部 井出豪彦)
● コロナ収束後に 備えて大ナタ 戦後最悪の大恐慌の割に新型コロナウイルスの影響による倒産件数は思ったほど増えていない。
なかでも上場企業の倒産は8月17日現在、レナウンの1社だけで、そのレナウンにしても、業績不振は昨日や今日始まったことではなく、親会社の中国企業との間でも深刻な亀裂を抱えていた。取締役会が開けず自ら民事再生手続きを申し立てることができないため、子会社に債権者申し立てをさせたことでもわかる通り、コロナ以前に経営は操縦不能のダッチロール状態。コロナは最後のダメを押したにすぎない。
倒産が少ないのは政府による各種の資金繰り支援策が功を奏しているうえ、金融庁との阿吽(あうん)の呼吸で民間金融機関も貸し出し姿勢を緩和ポジションのままに据え置いているためだ。けっして各社の業績が持ちこたえているわけではない。企業は仮に売り上げがゼロでも融資が受けられていれば倒産しないものだ。
しかし、政府には財源の制約がある以上、いつまでも現在のレベルの支援策を続けることはできない。銀行も不良債権を作りすぎれば自分が倒れてしまう。つまりやがて厳しい選別のときがくる。コロナ禍が収束しても多くの産業で「需要が戻らない」という現実に直面し、淘汰(とうた)される会社が大量に出現するだろう。
それを見越して傷の浅いうちに事業継続に見切りをつける廃業が増えるのは必然だ。実は上場企業でも既存事業に大ナタを振るう会社が出てきた。
● 全社員を対象に 退職勧奨を実施
東証2部に上場する「オーミケンシ」は5月13日に「事業再構築案に関するお知らせ」と題したリリースを行い、不採算のレーヨン短繊維・紡績糸やテキスタイル(織物)関連事業から撤退すると表明した。併せて「全従業員」(3月末時点の単体ベースで219人)を対象に退職勧奨を実施することを決めた。
不動産賃貸事業や環境問題対応の研究部門などは残すとしているが、前期の売上高90億円のうちおよそ8割に相当する70億円を稼いだ繊維部門からの撤退に伴い、「会社側は200人程度にやめてほしいと考えている」(関係者)という(オーミケンシはダイヤモンド・オンラインの取材に対し、「現在、従業員と面接中であり、退職の規模については決まっていない」と回答)。
従業員の9割を削減するというのはリストラというよりほとんど廃業に近い。
事業撤退は6月末から9月末にかけて行われ、退職勧奨の対象者については10月末の退職をめどに労働組合と交渉しているというが、「当然労組もすんなり応じているわけではない」(同。オーミケンシはダイヤモンド・オンラインの取材に対し、「労働組合との協議は順調に進んでいる」と回答)。
会社側は構造改革に伴う特別損失を2020年3月期と21年同期合わせて60億円計上する一方、21年3月期は保有不動産売却などで34億円の特別利益を計上できると見込んでいる。
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