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前科で人を選別する仕組み

2025年07月01日 03時08分02秒 | 社会のことなど
 
 
前科で人を選別する仕組み


園田寿甲南大学名誉教授、弁護士
5/12(日) 9:31 2024
(c) sonoda
はじめに
子どもに対する性犯罪を予防するために、性犯罪前科で人を選別し、教育や保育の現場での就業を制限しようとする「日本版DBS」の国会審議が始まっている。


子どもに対する性犯罪の卑劣さ、被害の重大さは言うまでもないことであるが、それを予防するための「日本版DBS」はいわば劇薬のようなもので、その副作用はどこまで広がるか分からない。そんな怖ろしい法案である。以下、いくつかの問題点を指摘しておきたい。


犯罪が起きないような環境づくりこそが重要
教育や保育の現場で起こっている性犯罪の圧倒的大多数は、実は前科のない「初犯」である。前科がないから、DBSは使いようがない。


前科情報はもっとも慎重かつ厳格に国が管理してきた個人情報であるが、その縛りを解いて民間に流し、それを犯罪予防に使おうという発想じたいに、許容しがたい無理がある。


そこで、対象を広げて、前科がつかない少年時代の性犯罪や成人であっても示談などで不起訴になった事案も対象に含めるべきであるという意見がすでに出されていて、(予想どおりだが)止めどなく悪い方向に向かっている。むしろ、初犯や再犯にかかわらず、犯罪が起きないような環境づくりこそが重要であって、ここに社会の知恵を絞るべきである。


今問題なく働いている人も職場を追われる
この制度は、今働いている人たちにも適用がある。この点も重大だ。


過去に過ちを犯したものの、治療を受けたり、また本人も努力したりして、何年も問題を起こさず真面目に働いている人もいるだろう。にもかかわらず「日本版DBS」は、その人の過去を詮索し、ほじくり返して職場から排除しようとする制度である。


刑法では禁錮刑(拘禁刑)以上の執行後10年、罰金や執行猶予の場合は5年で「刑が消滅」する。つまり前科がリセットされ、刑の言渡しがなかったことになる(刑法第34条の2)。


だれでも不本意ながら恥とスティグマ(烙印)を抱えて生きているが、中でも前科はもっとも生きづらさの原因になるスティグマの一つであり、人生のやり直しを難しくする。刑法は、一度罪を犯して躓いた者に更生のチャンスを与えるために、このスティグマを消すのである。


しかし法案は、この刑罰制度の根幹を軽んじて、禁錮刑以上の重い場合は執行後20年前まで、軽い犯罪で罰金刑の場合や執行猶予の場合は10年前まで遡って前科(前歴)情報を照会し、利用できることにしている。


かりに10年前に事件を起こして罰金刑に処せられたが、その後反省して何も問題を起こさず真面目に働いている人もいるだろう。そのどこに「危険性」があるのだろうか。


更生に向けて努力するのは本人だけではない。家族や友人、周囲の人びと、あるいは官民で犯罪者の更生保護に携わっている人びとがいる。一度躓いた人たちの社会復帰を支え、社会へ後押しする、これら関係者の献身的な努力を法案はどのように評価しているのであろうか。


無実の人にも前科は残っている
えん罪の問題も無視できない。法案では、都道府県の迷惑防止条例違反、とくに痴漢などの前科も対象になっている。



通勤通学途中などで痴漢に間違われ、無実なのに、しぶしぶ示談に応じたり、罰金を支払うケースなどが、実態としてどれくらいあるかは分からないが、大きな社会問題になっているほどである。この人たちにも「前科」は残っている。しかも、異議申し立てはできず、かりにできたとしてもどのような資料(証拠)にもとづいて、だれに向かって、どのように無実を証明すればよいのか。


教育現場で働いている人は約140万人ほどいるといわれているが、DBSが実施されれば現場はパニックになるだろう。もしも前科が発覚すれば、そのまま働き続けることはできなくなる。二重三重にもスティグマが押されることになる。本人はもとより、家族や友人、職場、地域社会は大混乱になるだろう。


結語
法案が成立すれば、さらに職域が拡大されるおそれもある。それが社会全体に及ぼす影響は、想像以上に大きいだろう。


何度でもいうが、重要なことは、初犯や再犯に関係なく、犯罪を行いにくい環境をどのようにつくるのかということである。過去の前科情報に頼り、それに基づいて人の選別を行なう犯罪予防策は、刑事政策的にも間違っている。


「日本版DBS」は、真実の石に刻まれた言葉ではない。百害あって一利なしである。(了)

 
 
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“最強のオービス”の導入が加速。移動式で風景に溶け込み、10km/hオーバーも見逃さない

2025年06月20日 13時03分55秒 | 社会のことなど
 
 
 
“最強のオービス”の導入が加速。移動式で風景に溶け込み、10km/hオーバーも見逃さない――大反響トップ10 | 日刊SPA! (nikkan-spa.jp) 
 
 
“最強のオービス”の導入が加速。移動式で風景に溶け込み、10km/hオーバーも見逃さない――大反響トップ10
 
板倉正道
バックナンバー
 
3/25/2023
 
日刊SPA!で反響の大きかった2022年の記事からジャンル別にトップ10を発表。今回は集計の締切後に、実は大反響だった記事に注目。年間ランキングで忘れられがちな11月後半から12月31日までに公開した、第6位はこちら!(集計期間は2022年11月後半~2023年1月。初公開日2022年12月29日 記事は取材時の状況)  
 
 
*  *  *

「移動式オービス」の導入が加速

 年末年始は、交通量の増加や日没が早い時期ということもあり、交通事故が最も多い時期と言われています。また、忘年会や新年会など、呑みに関する集まりも多く行われることから、飲酒運転も多くなる傾向にあるのです。
 
 
 一年を通して交通違反・交通事故が最も多く起こる時期ということで、必然的に警察も「交通取締りに最も力を入れるシーズン」となります。 
 
 
12月中旬、読売新聞の取材によると、北海道の一般道に設置された「固定式速度違反自動取締装置」、通称「固定式オービス」(オービスはボーイング社の商標)が11月までにすべて撤去され、速度違反に関しては、「可搬式取締装置」、通称「移動式オービス」を中心とした取締りに移行する事が判明しました。 
 
 
 
全国で導入が増えている「センシス MSSS」
 北海道県警で使われる移動式オービスは、ニュースによるとスウェーデンの計測器メーカーが開発した「Sensys(センシス) MSSS」です。移動式オービスの中では最もコンパクトで、警視庁が主力としている東京航空計器(株)の「LSM-310」などに比べ目立ちにくく、風景に溶け込むスタイルです。
 
 

 

最強の移動式オービス「MSSS」とは

 MSSSは現時点では最強とも言われる移動式オービスであり、性能は折り紙付きです。 
 
 
ストロボ部とカメラ部はかなり離れて設置されている
東京航空計器 LSM-310 分離式だが、ストロボとカメラは上下に設置されている。
 
 固定式オービスで見られた「取締り予告看板」も、埼玉県警のように必ずオービスの手前に設置しているところもあれば、千葉県警のように告知すら行っていないところもあります。
 
 
運用方法は各都道府県によって異なる
 また、愛知県警のようにウェブサイトにて取締りエリアを告知するパターンもあり、移動式オービスの運用は、各都道府県独自の方法で行われているのです。
埼玉県警の事前告知看板。ライトの光でしっかり反射するので見落とすことはないだろう。
 移動式オービスは、もともと生活道路などの取締りを強化する目的で開発されました。SNSなどでは10km/hオーバーでも撮影され、後日呼び出しが来たと話題に上がったこともありましたが、メーター誤差やタイヤ交換による誤差もあるので、実際には15km/h以下のスピードオーバー程度の速度違反で、警察に呼び出しを食らう可能性は限りなくゼロに近いでしょう。  余談ですが、LSM-310は最高速度220km/h、MSSSは360km/hまで測定が可能となっています。無論この速度以上出せば写らないといっている訳ではありませんが……。国内で許されている最高速度は120km/hなので、これ以上の速度を出すのならそれはゲームの中だけにしておいて欲しいですね。
 
 
 
設置場所をローテーションで変えるオービスも
 
 一般道や高速道路の固定式オービスは、どのエリアでも撤去の方向に動いていますが、一方で「半固定式オービス」と呼ばれる、移動式オービスを固定して使用するタイプも徐々に増えてきています。これは複数箇所に設置場所を設け、ローテーションで設置場所を変えるタイプのオービスです。 
 
 2021年に大阪で初めて導入されたのを皮切りに、2022年12月現在では、熊本、長野、茨城県の計12箇所で半固定式オービスが運用されています。今後はメンテナンスや予算の関係で、固定式からこの半固定式オービスに切り替わるという話もあるようです。
 
 
 
上信越道に設置された半固定式オービス。積雪地域ということもあり雪よけの屋根が設置されている。
 
 スピードは控えめで安全運転を心がけ、気持ちの良い年末年始を過ごしたいものです。 文/板倉正道 (初公開日2022年12月29日 記事は取材時の状況) 
 
 
 
 
 
 
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長寿であることが、なんら、おめでたくもない>そんな時代が訪れようとしています「年金月17万円」「貯金1,500万円」の80歳父「有料老人ホーム」に入居で息子 安堵も〈想定外の請求額〉に唖然

2025年06月15日 03時03分39秒 | 社会のことなど


長寿であることが、なんら、おめでたくもない……そんな時代が訪れようとしています。




「年金月17万円」「貯金1,500万円」の80歳父、「有料老人ホーム」に入居で息子、安堵も〈想定外の請求額〉に唖然「目を疑いました」
5/26(日) 7:02配信




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コメント29件




THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン)
(※写真はイメージです/PIXTA)


子世代に重くのしかかる介護負担。仕事との両立に限界を感じ、悲鳴をあげているケースも。そんなとき、選択肢のひとつになるのが「老人ホーム」です。昨今は終の棲家としても人気が高まっていますが、問題になるのがその費用。シミュレーションをしっかりしておかないと、とんでもないことに。みていきましょう。


【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額


父親の介護に限界!老人ホームへの入居を検討し始めたが…
――もう無理だ!


悲痛な思いを綴った50代の男性。思わずネットに気持ちを吐露した理由、それは「親の老人ホーム費用」。


80歳になる父親が老人ホームに入所したのは、さかのぼること2年ほど前。父親は妻(男性の母)を亡くし、自宅で1人暮らし。そんななか家の中で転倒、骨折したことがきっかけで、移動・歩行の際には人の助けが必要に。(比較的)近くに住んでいた男性は、仕事と介護の両立の日々を送っていたといいます。


ただ体力的にしんどく、老人ホームへの入居を検討するよう、父親に促したといいます。そこでネックだったのが、父親の状態。人の助けがないと移動が困難とはいえ、頭は非常にクリア。だからでしょうか、


――年寄りばかりのところには入りたくない!


――(いや、あなたも十分年寄りだよ)


老人ホームに対する要望はかなり高いものだったといいます。確かに、要介護で認知症が進んでいるような入居者が多い老人ホームでは、父親も孤立してしまうことでしょう。自立している人も多く入居し、介護サポートも充実していて……そんなサービスが充実する老人ホームは、当然価格も高めでした。


当時、父親の貯蓄は1,500万円ほど。そして月々の年金額は17万円程度(手取り15万円程度)。それに対し、候補に上がったホームは、入居一時金が1,000万~2,000万円、月額費用が25万円前後。


――入居一時金は貯蓄で払える範囲にしても、月額費用は年金+10万円は必要。老人ホームへの入居期間は平均4~5年といわれているから、最低、600万円ほどの貯蓄が必要……


そんな皮算用を繰り返していると、「親父が4、5年で死ぬことを前提に考えていて……なんかイヤだな」と、気分が滅入ったといいます。それでもなんとか決めたのは、入居一時金は1,000万円。月額費用は月24万円という「介護付き老人ホーム」。看取りも対応しているから、終の棲家としても安心。そう考えての入所でした。



入所して初めて「老人ホームからの請求」…想定外の金額に仰天
老人ホーム費用、5年ほどは父親の貯蓄&年金で賄える……シミュレーション上はそうでした。しかし、その算段は、入所して初めの1ヵ月でもろくも崩れ去ります。


――えっ、何でこんなに高いんだ? 月24万円だったはず


老人ホームからの初めて月額費用の請求&引落し。明細をみた男性は目を疑ったといいます。請求額は29万円ほど。想定よりも5万円も高いものでした。月額費用に含まれるのは賃料や管理・水道光熱費・食費で、雑費は含まないことは入所前に説明がありました。しかし5万円もかかるとは……。


有料老人ホームでは、月額利用料のほか「おむつなどの日用品」「嗜好品」「理美容代」「医療費」「レクレーション参加費」などが別途かかり、月額費用とは別に平均月2万円程度が別にかかるといわれています。そんな金額を考えずに費用計算をしているケースは多く、何が月額費用に含まれ、何が含まれていないのか、入所前に細かく聞いておくことが重要です。


さらに想定外だったのが、昨今のインフレ。父親の入所から1年後ほど経ったとき、施設から「月額費用の値上げ」の連絡があったといいます。このご時世、人件費はもちろん、水道光熱費や食費も値上がり。このままの価格では、ホームの運営が立ち行かなくなる……時代の流れ、仕方がありません。ただ値上げ額は月3万円にもなるというから、男性も思わず「えっ⁉」と大きな声が出てしまったといいます。


入居一時金を払った後の、父親の貯蓄額は500万円ほど。1年目は170万円ほど貯蓄を取り崩しました。2年目は月額費用が「24万円」→「27万円」に。さらに毎月の雑費についてもインフレの影響で、月5万円ほどとなり、取り崩し分は200万円を超えそう。そうなると3年目で貯蓄はすべて底をつくのは見えています。


そんな計算をして、思わずネットに投稿したのが冒頭の言葉。男性のように、親の介護費用に右往左往される子供世代は、今後、ますます増えていくといわれています。親が長生きをすればするほど、子供は経済的負担を強いられる。そんなケースもあるでしょう。


長寿であることが、なんら、おめでたくもない……そんな時代が訪れようとしています。


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閉園から20年…廃墟遊園地「化女沼レジャーランド」が辿った“数奇な運命”の全貌

2025年06月12日 20時03分56秒 | 社会のことなど
今から5年前、廃墟マニアの私のもとを思わぬ人物が訪ねてきた。




宮城県から新幹線を乗り継ぎ、私の住む岐阜県までやって来てくれたのは後藤孝幸さん。“廃墟遊園地”として、一部界隈で有名な「化女沼レジャーランド」の所有者だ。 【画像】錆びついた観覧車、メリーゴーランド……「廃墟遊園地」の写真を全て見る(30枚) 


 かつては東北を代表する総合レジャー施設だった「化女沼レジャーランド」は、バブル崩壊後に経営が急激に悪化し、2001年に閉園。放置された遊具は錆びつき、朽ちていった。遊園地という、誰もが笑顔になるはずの空間から人が消え、時間の経過とともに全てが寂れていく光景は、ホテルや工場の廃墟よりも心に迫ってくるものがある。




廃墟遊園地を売ってほしい!?
 そんな“廃墟遊園地”の所有者が、私に会うためはるばるやって来てくれたのだ。だが、挨拶もそこそこに後藤さんが切り出した要件は、全く予想もしていない話だった。「私ももう85歳だから、(廃墟遊園地を)手放そうと思いましてね。買ってくれる人を、ぜひ鹿取さんに見つけてほしいと思って来たんですよ」 

 そう言って後藤さんは、「化女沼レジャーランドの概要」と書かれた冊子を取り出し、私に手渡した。敷地面積は4万5000坪、温泉の源泉もついている。希望価格は5億円――。断っておくが、私は不動産業者ではない。化学系企業のサラリーマンだ。後藤さんが廃墟遊園地の所有者で、私は一人の廃墟マニア、という関係に過ぎない。
「できればまた遊園地にしたいんです」


 そもそも私が初めて後藤さんと会ったのは、その“思わぬ訪問”の数年前のことだった。2001年の閉園から何年か経つと、「宮城県に廃墟遊園地がある」との噂が廃墟マニアの間で広まり、私もいつか行ってみたいと思っていた。そんな矢先、廃墟マニアに密着するドキュメンタリー番組の取材を受けた私は、その一環で化女沼レジャーランドを訪問し、後藤さんと出会ったのだ。 

 そこで後藤さんから聞いた話は、どれも衝撃的だった。銀行を駆け回って開業資金を調達した話や、アメリカやヨーロッパに渡って遊具を買い付けてきた話、有名歌手のコンサートの裏話など、どの話題にも興味が尽きなかった。そして私は、閉園してもなお、遊具をそのまま残しているのはなぜかと、後藤さんに尋ねてみた。 「ここには、遊んだ人の思い出と、私の夢がギッシリ詰まってるんですよ。そのシンボルである遊具は、どうしても撤去できなかった。できればまた遊園地にしたいんです。それが無理でも、みんなが笑顔になる場所にしたい」



かつては道路が渋滞するほど人気だった

 かつて戦争で焼け野原となった仙北平野を見た後藤さんは、人々に希望を与える娯楽施設を作ろうと、一人で立ち上がった。自治体や大企業に頼ることなく、資金集めから遊具の調達まで一人でこなし、1979年、ついに開園にこぎつけた。渡り鳥の飛来地として知られる化女沼の畔に立地することから、後藤さんは「化女沼保養ランド」と命名した(後に化女沼レジャーランドに改名)。敷地内には遊園地のほか、ゴルフ場やホテル、コンサート場なども併設された。  

週末になると周辺道路は渋滞し、観覧車やゴーカートに親子連れが列をなした。屋外コンサート場では数千人の観客が熱狂した。意外と好評だったのが“そうめん流し”だ。従来の“流しそうめん”とは異なり、円卓の丸い水槽の中をそうめんがグルグルと回る。1000人を収容できる日本最大級のそうめん流しは、遠足の定番スポットにもなった。人々に希望を与える娯楽施設を作りたいという後藤さんの夢は、現実のものとなったのだ。  

しかし、その夢も長くは続かなかった。月日が経つと目新しさが失われ、客足は徐々に遠のいていった。駅からも高速道路のICからも遠いという、アクセスの悪さも災いした。1990年代後半には、1日の入場者数が1ケタという状況に陥り、遂には2001年10月、資金繰りの悪化から閉園してしまった。


温泉を掘り当て、アクセスの悪さも解消されたが……
 観覧車やメリーゴーランドなどの遊具は、中古でも買い手がつく。しかし、いつかまたここを笑顔であふれる場所にしたいという強い意志で、後藤さんは売らなかった。その夢の実現に向けて、後藤さんは閉園後に温泉を掘削し、2003年、見事に掘り当てている。2004年には、化女沼レジャーランドの目と鼻の先にある東北自動車道長者原サービスエリアにスマートICが設置され、高速道路から1分で来られるようにもなった。再興の機運は着実に高まっているように思えたが、

しかし…… 「私があと10歳若ければね。もう一度借金してやりたいんだけど、でももう歳だから。土地は売りたいけど、切り売りはしない。夢も一緒に引き継いでくれる人が現れるまで、遊具は絶対に残しておきますよ」  この話を聞いて、私は心が震えた。そして、それから数年が過ぎた2015年、今度は後藤さんが私を訪ねてきて、化女沼レジャーランドを売ってほしいと頼んできたのだ。



それなりに切羽詰った状況が背景にあると想像できたが、どう考えても無茶な話だ。不動産業とは無縁のサラリーマンに、温泉が付いた4万5000坪の土地など売れるはずがない。しかし、後藤さんには並々ならない御恩があった。後藤さんは、遊具がボロボロになっている姿は残念だけど、それを見て楽しんでくれる人がいるのならそれも嬉しいと言い、廃墟マニアである私をあたたかく歓迎してくれたのだ。  そんな後藤さんに何か恩返しがしたいと、私も前々から思っていた。廃墟を売るのはあまりに荷が重いが、廃墟マニアなりに本気でやれることはないかと考えてみた。そして、ひとまず「廃墟遊園地の所有者に頼まれて、廃墟マニアが購入者を探している」とSNSで発信すると、これが瞬く間に拡散された。


企業や地方自治体から問い合わせが殺到!
 翌日にはテレビ局や新聞社から問い合わせが殺到し、私は対応に追われた。テレビで放送されると、それを見た人たちからの問い合わせも相次いだ。化女沼レジャーランドの知名度は上がり、いつしか“廃墟マニアの聖地”とまで呼ばれるようになった。  土地に興味を持った不動産会社など10社から問い合わせも入り、地方自治体からは東京オリンピックの選手村にできないか、という相談も寄せられた。関心の高い企業とは、直接会って話をすることもあった。


「廃墟を見学したい」との声
 全国紙に私個人の携帯番号が掲載されたこともあって、非常に多くの電話がかかってきた。特に多かったのは、廃墟を見学させてほしいという、個人の方からの要望だった。通常であればお断りするのだが、見てみたいという気持ちは痛いほど分かる。それに、廃墟の売却やそれに伴う電話対応も、あくまでも趣味として行っている。ならば同じく趣味の範疇で、そうした声にも応えようと思った。



廃墟遊園地に子供の歓声が響いた
 そして、後藤さんの了解を得て見学会を開くと、全国から100人以上が集まった。廃墟の駐車場は、車でいっぱいになった。入場口には行列ができ、その中には親子連れの姿もあった。廃墟の遊具で遊ぶ親子は、とても楽しそうだ。化女沼レジャーランドに、再び子供の歓声が響いた。まるで現役の遊園地に戻ったような光景を、私は感慨深く眺めていた。隣にいる後藤さんも、とても嬉しそうな表情だった。 

「自分が子供の頃、親に連れてきてもらいました。自分に子供ができたら、連れてくるのが夢だったけど、もう無理だと思ってました。廃墟とはいえ、実現できてとても嬉しい」  こうした来場者の声を聞くと、これまでの労力が報われたような思いがした。後藤さんが尽力して遊園地を作り上げた時の気持ちが、ほんの少し分かった気がした。


錆びついた遊具は、今もそのまま……
 しかし、肝心の売却の話は進まなかった。問い合わせのあった企業は、いずれも連絡が途絶えた。廃墟を喜ぶのはマニアだけで、一般的には“ただのゴミ”というのが現実だ。残された建物や遊具を片付けるだけでも、莫大な費用がかかる。単純に土地を買ってビジネスを始めるには、割に合わないのだ。  ならば、聖地とまでいわれた廃墟をそのまま活用しようと、廃墟のテーマパークにするべくクラウドファンディングを立ち上げる人も現れたが、これもすぐに頓挫してしまった。  

その後、数年間にわたって見学会を何度か開催したが、廃墟が売れることはなかった。そして2018年、化女沼レジャーランドの所有権は、ついに後藤さんの手から離れてしまった。今なおアドバイザーとして関わり続けている後藤さんは、今年で90歳。錆びついた遊具は、今もそのまま残っている。いつか、化女沼レジャーランドが多くの人の笑顔であふれる場所に再生されることを、私は願ってやまない。 撮影=鹿取茂雄

7/11sat/2020

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イケアのサメ」に「ニトリのネコ」家具大手ぬいぐるみ なぜ人気?

2025年06月04日 09時03分47秒 | 社会のことなど


有給いただいてます!」――。



家具大手イケアの店舗が貼り出した、ある商品の在庫切れを知らせる貼り紙が今、SNSで話題になっている。その商品は、ぬいぐるみのサメ。


3/26/2022


/202

イケアのサメ」として知られ、50種類以上ある同社のぬいぐるみの中で一番人気だという。売り切れ店舗が続出しているというが、なぜこれほど人気なのか。そして家具店がぬいぐるみを扱うのはなぜなのか。そこには、企業のビジョンにもつながる大切な理由があった。

 【画像】「イケアのサメ」と「ニトリのネコ」 




 有給――の貼り紙を出したのは、IKEA福岡新宮(福岡県新宮町)。3月19~22日にイケアのサメ、正式名「ブローハイ」(スウェーデン語でヨシキリザメの意)の在庫切れを知らせる貼り紙を掲示した。3月23日に新たに入荷があったため、貼り紙はすでに撤去しているという。 

 この貼り紙に対し、Twitterでは「有給中なら仕方ないか~」「リフレッシュしてきてね!」などと好意的な反応が並んだ。  

「これは従業員のアイデアです。話題にしてもらいありがたいが、在庫切れについては申し訳なく思っています」と担当者は話す。 

 過去の品切れ時には「しばらくの間、故郷の海へバケーションに出かけることになりました!」と、サングラスとハット帽をかぶったブローハイのイラスト付きの告知も話題になった。  

ブローハイは全長100センチメートル、価格は1999円。50種類以上あるイケアのぬいぐるみの中で、日本では人気ナンバー1といい、2017年10月の販売開始から累計40万個以上が売れているという。なぜここまで人気なのか。


海外で擬人化が流行 日本にも伝わる



 ふわふわの肌触り、抱き枕に最適な大きさ、愛嬌ある表情――。

人気を呼ぶ特徴はたくさん挙げられるが、担当者によると、もともと、海外で購入客がブローハイを擬人化してSNSに投稿したのが流行の始まりだという。

  料理が並んだダイニングテーブルに腰を下ろす姿や、旅先で列車の窓外を眺める姿など、人間のように日常に溶け込んだ様子が大きな反響を呼び、流行は次第に日本へも波及。現在も同社の予想を大きく上回る売れ行きが続いているという。


以下はリンクで



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