goo blog サービス終了のお知らせ 

ニュースなはなし

気になるニュースをとりあげます

危ない実験>最強生物「クマムシ」の遺伝子を人間の幹細胞に挿入する遺伝子実験を中国の軍事研究チームが実行 「スーパーソルジャー」開発へ

2024年04月18日 15時05分07秒 | 科学のはなし

最強生物「クマムシ」の遺伝子を人間の幹細胞に挿入する遺伝子実験を中国の軍事研究チームが実行 「スーパーソルジャー」開発へ

4・6・2023


 


最強生物「クマムシ」の遺伝子を人間の幹細胞に挿入する遺伝子実験を中国の軍事研究チームが実行、核攻撃の放射線に耐性を持つ「スーパーソルジャー」開発へ



 極度の高温や低温にも耐え、秒速825メートルで射出されても生き残ることが報告されているクマムシは、高線量の放射線にさらされても生き延びることができるとされています。

 中国の軍事医学研究者チームが、クマムシの遺伝子を人間の幹細胞に挿入し、放射線に対する耐性を大幅に増加させたことが報告されています。
 研究チームはこの実験の成功によって、核兵器による放射線に耐えることができる「スーパーソルジャー」の開発につながる可能性を提示しています。

 Chinese team behind extreme animal gene experiment says it may lead to super soldiers who survive nuclear fallout | South China Morning Post

(以下略、続きはソースでご確認ください) 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

初回分が即完売した世界初「一般人が買える量子コンピュータ」>すぐには役に立たず、誰が買うかもわからない」はなぜ開発できたか

2024年04月15日 21時03分37秒 | 科学のはなし
すぐには役に立たず、誰が買うかもわからない」初回分が即完売した世界初「一般人が買える量子コンピュータ」はなぜ開発できたか 

世界初の「買える量子コンピュータ」が深圳から生まれた理由

3/15/2023



筆者が勤務するスイッチサイエンスが日本総代理店をしている、量子コンピュータ企業のSpinQでは、世界でも珍しい、量産型の量子コンピュータを販売している。

そうした関係性があることから、筆者が担当している早稲田大学経営管理研究科(MBAコース)の「深圳の産業集積とハードウェアのマスイノベーション」という講座で、今年は初めての試みとして、共同創業者のDr.Fengと学生にディスカッションしてもらった。


みとして、共同創業者のDr.Fengと学生にディスカッションしてもらった。


SpinQ共同創業者 Dr.Fengの講義

SpinQは118万円という価格で、2量子ビットの量子コンピュータ「Gemini-mini」を量産し、教育機関や研究機関に販売している。NMR(磁気共鳴)という方式で、冷却もメンテナンスも不要なので、多くの研究者にとって「初めての量子コンピュータ」になっている。

量子コンピュータは、0と1で計算する現在のコンピュータ(電子計算機)に対して、0でも1でもある量子状態を使って計算するコンピュータだ。現在はまだ計算も遅く、エラーも多く、複雑な計算も実行できないが、さまざまな方面で技術開発が行われていて、2030年頃には実際に役立つ計算が可能(電子計算機では解けない問題が解ける)なレベルになると言われている。

Gemini-Miniの2Qbitという性能は、大抵の人間が暗算したほうが早くて正確だ。人間や他のコンピュータよりも早い計算はできないので、実用性という点では価値がない。NMR量子コンピュータの開発には、量子力学だけでなくて電磁波、材料、電子回路など、様々な分野のスキルを統合する必要がある。そうしたタレントあふれる研究者チームに加えて、量産するためには量産設計などの仕事も発生する。そうした大きなチームを率いて、役に立たないとわかっていて、誰が買うかもわからないものを作るのは、役立つものを作るよりも難しい。

深圳でないと作れないプロダクトとは?

「量産型・一般向けの量子コンピュータ」という唯一のプロダクト。しかもそのプロダクトは、技術的にもすごいが、よりすごいのは実用的な価値はなく、マーケットが予測できない中、どうやって企画を通して市場に出したのか?という視点だ。

Dr.Fengはその問いに「深圳だから」と回答した。深圳は前例のないチャレンジに対して投資家の理解や意欲が高い。そして発売後、深圳の新しく開設されたGezhi Academy(先生を育成する師範学校、中学から一貫教育を行う)では、何十台もSpinQを購入して、学内に「量子コンピュータ室」を作ったという。



講義で紹介された「量子コンピュータ室」
「低性能の量子コンピュータであっても、目の前で触ってみたい」というニーズは実際にあったのだ。筆者たちが日本で販売を始めたところ、初回入荷分は1週間たたずに完売し、その後も仕入れを繰り返している。深圳に限らず、日本でも市場はあった。
ビジネス的なリスクを取ったSpinQ
SpinQの量産型・一般向けの量子コンピュータは、技術的なブレークスルーというよりも、経営面でリスクをとったこと、市場がそれに応えたことといった、企画やマーケティング、経営面のブレークスルーである側面が強い。
Dr.Fengの講演、質疑応答が終わったあとも、中国からの留学生も交えて、翌日以降の講義を含めて数日に渡ってディスカッションが続き、出た結論は「こういう冒険的なプロジェクトを止める力が、深圳は弱い」というものだった。
中国で、優秀な大学や人材が集まる場所はとにかく北京、次いで上海だ。深圳の名声も高まっているが、国内では「山師、一発屋が集まる場所」としての評価が定着している。
中国で優れた大学の多くは北京にあり、研究開発型ベンチャーもたいていは北京にある。中国でも量子コンピュータ企業が多く誕生しているが、ほとんどは北京の会社だ。深圳にあるのはSpinQだけで、Dr.Fengに確認しても「未だにそうだ」と言っていた。

深圳と北京の違いとは?
学ばないことの強さ

R&DをResearch & Developmentというように、リサーチと開発は表裏一体だ。一方でR&Dだけでは、SpinQのような製品は生まれない。もちろん学ぶほうが効率的だし、間違いは減る。だがリスクテイクするために必要なのは、愚かさ、向こう見ずさだ。

SpinQの共同創業者Dr.Fengは34歳。責任者として製品をつくる人としては若い。SpinQは量子コンピュータ研究の大家もコミットしているが、平均年齢は若く、チャレンジしても失うもののない会社だ。


その環境は学ぶ相手がいないという意味ではマイナスだが、チャレンジを止める人がいないという点ではプラスだ。筆者は中国のトップ大学である精華大学や、その投資集団であるTusStarにも友人が多いが、彼らエリートはインテルやGoogleといった世界トップ企業を熱心に学び、同じフィールドで「中国のインテル」「中国のGoogle」、あるいはさらに優れた企業をつくろうとする。


そしてしばしば、実際に本家並、さらには本家を超えるような企業を作ってしまう。論文数や引用数などに現れる中国の研究開発力は、AIなどの分野では先行するアメリカを追い抜く勢いだ。北京にはどの分野にも優秀な人や大家がたくさんいて、学ぶには事欠かない。

だが、そうした研究開発からは「量産型・一般向けの量子コンピュータ」のようなリスキーな製品は生まれない。

アメリカのシリコンバレーは、前例のないスタートアップを多く生んでいる。そうしたスタートアップの多くは、「先人から学ばず、常識の枠の外に出た」ことが成功につながっている。また、新しいことを始めるスタートアップの多くが、アメリカに移民してきた、既存社会のエリートネットワークの外側の人々であることも事実だ。


学ばないことは、そうした強さを生む。

リスクの面から考えると、SpinQでいま働いている量子コンピュータの専門家たちは、会社が失敗しても次の職探しには困らないだろう。出資している投資会社からしても、いくつもある一発屋狙いの一つだ。つまり、リスクの大きい事業はしているが、全体的なリスクはコントロールされている。深圳でわざわざ北京と同じような会社を作るよりは、SpinQのように新しい方向性を打ち出すことは、別な意味でのリスクマネジメントとも言える。



https://finders.me/articles.php?id=3609
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ノーベル賞受賞者28人を輩出しても『次が見えない』…日本の名門工業大、医大が驚きの統合」

2024年04月10日 10時05分17秒 | 科学のはなし
「ノーベル賞受賞者28人を輩出しても『次が見えない』…日本の名門工業大、医大が驚きの統合」(2) (msn.com) 

ノーベル賞受賞までに要した平均研究期間は約22年だ。このため、ノーベル賞の減少傾向は過去20年あまりの科学技術政策の失敗を意味するのではないかという指摘が出ている。日本の研究者が特に問題視しているのは日本政府の「選択と集中」政策だ。「失われた30年」の間、すぐに成果が出る分野にのみ投資するようになり、この副作用という見方だ。




Fullscreen button
10月に東京工業大学と統合する東京都文京区の東京医科歯科大学キャンパス。


© 中央日報 提供
統合のメリットについて、両大学とも研究分野の拡大や研究費、研究人員の拡大を挙げている。両大は既に、感染症の原因微生物を特定する手法の開発や、アルツハイマー病の治療法確立などの共同研究に着手した。


名門大の自発的な統合や政府主導のファンド創設の背景には、日本の研究力低下への危機感がある。文科省の科学技術・学術政策研究所が発表した「科学技術指標2023」によると、国際的に注目される日本の研究者の論文は年を追うごとに減っている。被引用数が上位10%に入る論文の数は、1999~2001年は世界4位だったが、2019~2021年は13位に低下した。2019~2021年の韓国(10位)より低く、中国は10位から1位に躍り出た。


ノーベル賞受賞者も減少傾向にある。1949年に湯川秀樹が最初にノーベル物理学賞を受賞した後、日本では計28人の受賞者を輩出した。そのうち自然科学分野が25人と圧倒的に多く、特に2010年代は11人に上った。


ところが2020年代はノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏以外に受賞者は出ていない。2022年、2023年に2年連続で受賞者がゼロとなると、日本メディアでは「先細るノーベル賞人材」「日本の研究力 深刻な長期低落に歯止めを」といった報道が相次いだ。


ノーベル賞受賞までに要した平均研究期間は約22年だ。このため、ノーベル賞の減少傾向は過去20年あまりの科学技術政策の失敗を意味するのではないかという指摘が出ている。日本の研究者が特に問題視しているのは日本政府の「選択と集中」政策だ。「失われた30年」の間、すぐに成果が出る分野にのみ投資するようになり、この副作用という見方だ。2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典・東工大栄誉教授は最近開かれたセミナーで「日本の科学技術政策は、短期的な経済効率がすべてにおいて優先されるようになってしまった」と嘆いた。


東京科学大の出帆は日本の研究力復活に寄与するか。東工大の益一哉総長は3日の入学式で、新入生たちに英語で祝辞を述べた。東京科学大は英語を学内の「第2公用語」とする予定だ。入学式を終えた新入生の関野和広さんは「医科歯科大と統合してどんなことができるのかというワクワク感がある」と述べ、「日本の将来の発展のために頑張ります」と語った。


日本の4月は門出の時だ。研究力の復活と再び跳躍する日を夢見る日本の大学と科学界は、靴紐を再び結んで走り出そうとしている。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由

2024年04月03日 06時05分17秒 | 科学のはなし
実はそれは、無数にある宇宙の中で私たちの宇宙がたまたま、人間が生まれるのに都合のいい宇宙だったにすぎないというわけです。そのような宇宙だからこそ生まれた人間が、この宇宙の物理法則について認識していくと、それは人間が生まれるように都合よくできていた、これは言ってみれば当たり前のことです



「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」(佐藤 勝彦) | ブルーバックス | 講談社(1/4) (gendai.media) 






宇宙はどのように始まったのか……


これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。


そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。




*本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。






宇宙は人類のために絶妙にデザインされている?
本連載の締めくくりに、宇宙を考えるうえで避けて通れない「人間原理(Anthropic Principle)」の話をしていきましょう。


現在の宇宙の法則の中には、さまざまな物理定数があります。たとえば強い力、電磁気力、重力などの力の強さもそうです。つまり具体的に決まっている数値のことですね。これらの定数をよく見ると、まるで人類が誕生するように値が調節されているとしか思えないものがあるのです。たとえば、電磁気力の強さを少しでも変えると、生命は生まれなくなってしまいます。強い力の値をちょっと弱くすると、星の中で元素を合成するトリプルアルファ反応というものが起こらなくなります。これは3個のヘリウム4の原子核が結合して炭素12ができる核融合反応ですが、この反応が起きないと、炭素や酸素といった生命に不可欠な元素が生成されなくなるのです。


これらの例に限らず、われわれが住む宇宙は、人類を含めた生命をつくるために絶妙にデザインされているように見えるのです。これは否定しようのない観測事実です。


photo by iStock
このような話を聞くと、「ああ、やはり神様は人間を創造するようにこの世界を設計されたんだなあ」と思う人もあるかもしれません。しかし、科学者がそのように考えるわけにはいきませんから、このような物理定数のナゾをどう解決するかが重要な問題になります。人間原理も、この問題への答えとして考えられてきたものなのです。


これまで人間原理については、いろいろな研究者が自分の見解を述べていて、量子脳理論のアイデアでも知られるロジャー・ペンローズはこう言っています。


「神様がわれわれの住んでいる宇宙と同じような宇宙を創り出すためには、途方もなく小さな空間の中の小さな定数が必要である」


 つまり、適当に物理定数を決めても、決していまの宇宙はできない。神様はよほど注意深くならなければならない、というのです。そして、どこから出てきた数字かわかりませんが、われわれの住む宇宙がつくれる確率は、10の10の123乗分の1だと、すこぶる具体的な数値を示しています。


この数字はおそらくジョークだとは思いますが、それくらいとてつもない精度で選択をしていかなければ、いまのような宇宙はできっこないというわけです。そして、なぜいまの宇宙がそうなっているかという問題は、人間原理でしか説明できないというのです。


宇宙の法則が少し違ったら人類はどうなっていた?

アメリカの理論物理学者テグマークが、電磁気力や、強い力が、われわれの宇宙とは違う多様な値をとった場合を考えたグラフがあります(図「テグマークのグラフ」)。






難しい言葉もありますが、要するにこれによると、2つの力の値が変わると炭素原子が不安定になったり、水素原子が生まれなかったり、重水素が不安定であったりなど、多様な不都合が生じます。その結果、知的生命体が誕生するのに都合のいい領域はごくわずかしか残りません。四つの力のうち、二つの力だけで考えても、これほどまで制限されるのです。


テグマークはまた、空間の次元や時間の次元を変えるという考え方でも生命体存在の可能性を考えています。




時間がわれわれの世界と同じ1次元の場合は、空間が1次元や2次元だと単純すぎて多様な構造が生まれず、一方で空間が4次元にまでなると不安定になるとしています。たとえば原子核のまわりを回っている電子も、次元の大きな世界では不安定になって原子核に落ち込んでしまうようになります。これでは多様な構造を安定してつくることはできません。結局は、3次元が多様な構造をつくるのには適しているというのです。


時間の次元が多い宇宙については、4次元以上だと不安定な宇宙になるのだそうです。しかし、時間の次元が増えるというのはどういうことか私にはわかりません。それこそ腕時計が二つ必要になる世界でしょうか? 冗談はさておき、時間の次元がゼロの場合は、彼も想像不可能としています。


テグマークの主張はともかく、私たち人類はよほどの条件が整わなければこの宇宙に存在できないことは確かなのです。

人間は「選ばれし存在」か?
およそ50年前、プリンストン大学の物理学者ロバート・ディッケは、もし宇宙が現在のようにきわめて平坦でなければ、人間は存在していない、だから人間は選ばれた存在であると言いました。




もし、宇宙を創ったときに、神様がいまよりも弱い勢いで膨張させたとすると、膨張はすぐに止まってしまい、1000万年後あるいは1億年後に膨張は止まって、つぶれてしまう宇宙になります。そういう宇宙では十分に生命は進化できず、人類は生まれないことになってしまいます。


一方、神様が宇宙を膨張させる力が強すぎた場合は、膨張する速度が速すぎて、ガスが十分に固まる前に宇宙が膨張してしまいますから、ガスが固まれません。つまり、星もできません。ですから炭素も酸素もつくられず、生命も人類も生まれてきません。


このように考えると、神様はきわめて慎重に、曲率がゼロになるように宇宙を創造したということになりますが、それは非常に困難なことです。これが「平坦性問題」です。この問題を説明するためにディッケは、人類は曲率がゼロに近いきわめて平坦な宇宙にだけ住むことができる。だからこの宇宙は平坦な宇宙なのだ、と言ったのです。


この平坦性問題は、インフレーション理論によって解決したことも前にお話ししました。ごく簡単に言えば、神様の力を借りなくても、インフレーションさえ起こせば、曲率ゼロの宇宙を創ることができるからです。インフレーションによって一様で平坦な宇宙ができるため、平坦性問題は人間原理を使わなくても、物理学で説明できるようになったのです。


photo by iStock




「人間原理」という言葉を最初に使ったのは、ブランドン・カーターです。


読者のみなさんはコペルニクスをご存じでしょう。地球は宇宙の中心にあるのではなく、太陽のまわりを回っているという地動説を考えた人です。このコペルニクスの考え方を太陽系だけに限らず、あらゆる一般的なことに敷衍したものをコペルニクスの原理と言います。人類は世界の中心にいるわけではなく、宇宙においては人類といえどもワンオブゼムの存在であるという考え方です


カーターは、このコペルニクスの原理に対する逆の考え方として、人間原理という言葉を使ったようです。宇宙は人間を生むようにつくられていると見ることができるとして、人間を特別な存在として考えるべきであるというのです。


強い人間原理、弱い人間原理
やがて人間原理は、「弱い人間原理」と、「強い人間原理」に分かれます。


弱い人間原理とは、いまあるこの宇宙のあり方を決める数値(宇宙の初期条件など)は、なぜ人間が存在するのに都合よく定められているのかを問うものです。そのよい例はディッケの平坦性問題で、人間が宇宙に存在することから、宇宙は平坦になるよう微調整されたとする考え方です。ただし、やはり平坦性問題のように、インフレーション理論を使えば物理法則だけで説明できるものもあります。


これに対し、強い人間原理は、物理学の基本法則・物理定数や、宇宙や空間の次元などは、人間が存在できるようにつくられているというものです。2次元でも4次元でもだめで、3次元でなければならないとテグマークが言うのも、この強い人間原理です。


こうした人間原理が出てくるのは、ある意味で当然のことだと私は思います。なぜなら、いま私たちは物理法則を持っていて、その法則には多様なパラメーター、つまり数値がのぼっていますが、それらがどうしてそんな数値になっているのか、私たちは知らないからです。たとえば電気の力を表す微細構造定数という値は、137.035…分の1という数値になっていますが、なぜ、これが電気の強さになるのかもわかっていないのです。そうである以上、その値が人間が存在できるように決められたという考え方が出てきてもしかたないのです。


photo by iStock
将来もしも、超ひも理論がめざす究極の物理法則、この方程式ひとつを解きさえすれば四つの力すべてがわかるという超大統一理論ができたとき、その方程式の中に何ひとつ数字(定数)がなく、すべては幾何学の問題だけに帰して、それだけで自動的に現在ある多様なパラメーターの数値がすべて導き出せるといったことになれば、人間原理など必要ありません。その理論さえあれば、この世界がつくれることになるからです。


しかし、かりに何らかの数字がまだ残っていたとしたら、そのときは問題です。その数値はなぜそうなるのか、説明がつかないからです。そのときは、人間原理のようなものを考えなくてはならないかもしれません。


今後の研究によって、そこがどうなるのかはわかりません。ただ、私は物理学者として、究極の物理法則となる超大統一理論には、そういうパラメーターがいっさい残っていないことが理想だと思っています。


マルチバースと人間原理
読者のみなさんは、これまでの話をどう思われたでしょうか。「宇宙は人間が生まれるようにつくられている」と主張するかのような考え方など、科学にはほど遠いと思われたのではないでしょうか。たしかに人間原理を疑似科学や宗教的なものと見なしている人もいるようです。しかし、実はホーキングも弱い人間原理を支持しているなど、科学者の間でも人間原理への評価はさまざまに分かれているのです。




私自身はといえば、さきほども述べたように、物理学の法則だけでこの世界のことをすべて説明できれば理想的だと考えています。人間原理という概念を物理学は安易にうけいれるべきではないというのが基本的な立場です。ただ、最近の人間原理の考え方には、科学的に認められるものが生まれてきているとも考えています。


それは、マルチバースの考え方に立った人間原理です。インフレーション理論が予言するように、宇宙が子宇宙、孫宇宙…と無数に生まれているならば、それぞれの宇宙が持つ物理法則もまた無数に存在するはずです。それらの中には、人間が生存するのにちょうどよい物理法則があっても不思議ではありません。そして、私たちの宇宙がたまたま、そういう物理法則を持つ宇宙だったのだ、とする考え方です。


photo by iStock




これにはみなさんも納得できるのではないでしょうか。この宇宙を認識する主体である私たち人間は、ほかの宇宙を認識することはできません。だから、たった一つの宇宙がたまたま人間に都合のいいよう絶妙にデザインされていることを不思議に感じますが、実はそれは、無数にある宇宙の中で私たちの宇宙がたまたま、人間が生まれるのに都合のいい宇宙だったにすぎないというわけです。そのような宇宙だからこそ生まれた人間が、この宇宙の物理法則について認識していくと、それは人間が生まれるように都合よくできていた、これは言ってみれば当たり前のことです。そして、そのような私たちの宇宙が、たとえペンローズが言ったように10の10の123乗分の1というわずかな確率でしかつくられないとしても、宇宙が無数にあるのなら、そのうちの一つが私たちの宇宙であっても何も不思議ではありません。


このように、インフレーション理論が予言するマルチバースという宇宙像を前提にすると、人間原理についても論理的な説明が可能になってくるのです。


*      *      *   




関連記事
「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起…


















コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

議論を呼ぶ「サイエンスの停滞」を示すレポートがNatureに掲載

2024年03月12日 00時03分16秒 | 科学のはなし
議論を呼ぶ「サイエンスの停滞」を示すレポートがNatureに掲載



2023/01/16(月) 20:41:19.


議論を呼ぶ「サイエンスの停滞」を示すレポートがNatureに掲載

 学術誌ネイチャーが1月4日に掲載したレポートによると、AIや医療、原子力などの研究が急速に進んでいるにもかかわらず、科学技術の進歩は鈍化しており、10年前に比べて目覚ましい進歩は極めて稀になっているという。
 研究者らは、気候変動など人類が直面する緊急事態に対処するためには、「サイエンスの停滞」を脱する必要があると指摘している。

イノベーションや科学研究は、この数十年で爆発的に進歩してきたものの、発展はより漸進的になり、革新性は薄れ、いくつかの主要分野では進歩が停滞していることが「Papers and patents are becoming less disruptive over time」と題されたレポートで示されている。


研究者らは、1945年から2010年の間に発表された約4500万件の科学論文と390万件の特許やその引用ネットワークを調査し、科学技術の進歩が現状を補強したに過ぎないのか、或いは既存の知識を破壊して科学技術を新たな方向へ劇的に進化させたのかを分析した。

調査によると、DNAの二重らせん構造の発見のような過去の研究を陳腐化させる革新的な進歩は、主要な科学技術分野全般において、1945年以降減少しているという。論文の引用パターンを分析すると、既存の知識を組み合わせたり、発展させる傾向が強まっていることが分かったという。

レポートの著者の1人であるミネソタ大学のラッセル・ファンク教授は、「進歩が漸進的になっているため、科学を劇的に発展させるようなブレークスルーが誕生するのにより長い時間を要するかもしれない」と述べている。

研究者らは、気候変動や宇宙探査といった人類にとって最も差し迫った問題に取り組むためには革新的な成果を促進する必要があり、今回の調査結果は、科学研究の方法を見直す必要性を強調するものだとしている。

1945年以降に科学技術におけるイノベーションのスピードが鈍化した詳細な理由は不明だ。研究者らは、調査対象期間の特許や科学論文で使用されている文言を分析したが、その原因は研究の質の低下ではない可能性が高いという。なぜならば、トップレベルの学術誌やノーベル賞を受賞した研究に限定した調査でも、イノベーションの停滞が判明したからだ。

統計分析の結果も、学術誌や論文の書き方、引用などの慣行の変化が原因ではないことを示している。比較的容易に達成できる成果は全て達成されてしまった、または習得する知識が増えたために訓練に長期間を要するようになったといった説明をよく耳にするが、様々な領域で同様の停滞が生じていることを説明することは困難だ。

調査結果に対する反論

AIや核融合、遺伝子編集などの分野は大きく発展しており、科学の進歩が停滞しているとは考えにくい。しかし、研究者らは、このような進歩は調査結果と矛盾するものではないとしている。革新的な研究が減少しているからといってブレークスルーが起きないということではなく、その発生頻度が減少するのだという。彼らは、大半の研究が漸進的である中でも非常に革新的研究が行われた好例として、重力波の検出と新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発を挙げている。

今後の注目点

科学研究は本質的に不完全なものだ。学界に対しては、資金調達の方法や研究の方向性の選択、研究者や被験者の多様性に加え、学術誌に論文が掲載されなければ研究成果として認められないことなどに対する批判があふれている。レポートを執筆した研究者らは、今回の調査結果が研究のあり方の見直しを支持するものであり、研究者には研究の質を重視し、視野を広げる自由が与えられるべきだと主張している。

(forbes.com 原文)    
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする