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ヒルネボウ

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『冬のソナタ』を読む 「記憶の欠片(ピース)」(上p7~p31) 1 ジグソーパズル

2022-01-13 17:18:11 | 評論

 『冬のソナタ』を読む

 

テキスト

 キム・ウニ/ユン・ウンギョン『冬のソナタ 上』宮本尚寛訳(NHK出版)

 キム・ウニ/ユン・ウンギョン『冬のソナタ 下』宮本尚寛訳(NHK出版)

 

参考

キム・ウニ/ユン・ウンギョン『冬のソナタ 完全版1』根本理恵訳(ソニー・マガジンズ)

キム・ウニ/ユン・ウンギョン『冬のソナタ 完全版2』根本理恵訳(ソニー・マガジンズ)

キム・ウニ/ユン・ウンギョン『冬のソナタ 完全版3』根本理恵訳(ソニー・マガジンズ)

キム・ウニ/ユン・ウンギョン『冬のソナタ 完全版4』根本理恵訳(ソニー・マガジンズ)

『冬のソナタ 完全版』(韓国KBS)

 

登場人物

  チョン・ユジン 高校生。十年後、インテリア設計事務所ポラリスのデザイナー。

  カン・ジュンサン 転校生。ユジンの初恋の人。

  キム・サンヒョク ユジンの同級生。十年後、ラジオ局のプロデューサー。

  オ・チェリン ユジンの同級生。十年後、デザイナー。

  ユン・ジンスク ユジンの同級生。十年後、チェリンのブティックに勤務。

  グォン・ヨングク ユジンの同級生。十年後、獣医。

 

イ・ギョンヒ ユジンの母。

チョン・ヒジン ユジンの妹。

チョン・ヒョンス ユジンの父。故人。

 カン・ミヒ チュンサンの母。ピアニスト。

 キム・ジヌ サンヒョクの父。数学教授。

 パク・チヨン サンヒョクの母。

 

 ユ・ヨル サンヒョクの先輩。

イ・ジョンア ユジンの同僚。

ハン・スンリョン ユジンの同僚。

 イ・ミニョン 建設設計会社マルシアンの理事。

キム次長 ミニョンの先輩で部下。

「記憶の欠片(ピース)」(上p7~p31)

1 ジグソーパズル

全体は部分の集合ではない。部分を集めるうちに全体が完成するのではない。部分のすべてが集まる前に全体像は漠然とだが完成している。やがて因果関係は逆転し、全体像を実現するために部分が利用されることになる。

未体験である全体が全体像として脳裏に浮かぶと、その瞬間、それは記憶に変わる。つまり、過去のものになる。

全体像は期待や願望や理想などと呼ばれる。それは未来の記憶のようなものだ。

 

<マロニエ公園のベンチに腰掛け、掌(てのひら)にある柿色のジグソーパズルの欠片(ピース)を見つめていたチョン・ユジンの眼がわけのわからない懐かしさに吸い込まれていった。

(上p8)>

 

「わけのわからない懐かしさ」は記憶の部分を元にして作り出される未来の記憶に関する感情だ。

ジグソーパズルのピースは、紛れもなく、それが部分であることを示している。一方、一枚の写真は世界の一部なのだが、完結しているように思える。たとえば、二人だけが写っている写真を見ると、その二人には特別の関係があるように思える。しかし、その写真の一辺が破れていたら、どうか。もう一人誰かがいて、その誰かが排除されたように思えることだろう。ただし、偶然に破けたのかもしれない。どちらとも言い切れない。

 

<ジグソーパズルの欠片(ピース)は全部合わせればひとつの絵になる。しかし、彼女に残された記憶の欠片(ピース)はいくら頑張ってもひとつの絵にはならないのだ。どうしても欠片(ピース)がひとつ足りない。たったひとりの人間がいないのだ。その一欠片(ピース)さえ見つけることができれば……。

(上p10)>

 

ユジンは記憶の物語を封印して生きてきた。それは物語として完成していない。〈物語は完成していない〉という事実をも、彼女は封印していた。物語として終わっていない記憶は未来に向かって始まるしかない。

彼女は物語を終らせようともせず、始めようともせず、その中間に腰掛けていた。

 

<ユジンは一度も失恋をしたと思ったことがなかった。

(p11)>

 

偶然の「失恋」の物語が始まる、必然の初恋の終わりのために。

(続)