ヒルネボウ

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回文 ~赤蜻蛉

2021-09-02 10:51:58 | ジョーク
 

   回文

     ~赤蜻蛉

笛の音 姉の絵符

包みを見つつ

盆とか秋 赤蜻蛉

ミズスマシ 島涼み

(終)

 
 
 
 
 

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夏目漱石を読むという虚栄 4510

2021-09-02 00:03:25 | 評論

   夏目漱石を読むという虚栄

4000 『吾輩は猫である』から『三四郎』の前まで

4500 ボッチは恥

4510 「還元的一致」

4511 「意識の連続」は意味不明

 

Nは変な読み方をしていた。夏目宗徒は、その読み方に倣うらしい。

 

<だからこれに対して享楽(きょうらく)の境(さかい)に達するという意味は、文芸家のあらわした意識の連続に随伴すると云う事になります。だから我々の意識の連続が、文芸家の意識の連続とある程度まで一致しなければ、享楽と云う事は行われるはずがありません。いわゆる還元的感化とはこの一致の極度において始めて起る現象であります。

(夏目漱石『文芸の哲学的基礎』)>

 

「これ」は不明。「意識の連続」は意味不明。「ある程度」がどの程度か、不明。

どんな理由で「一致」が起きるかはともかく、誰に「一致」という現象が観察できよう。

「いわゆる」は意味不明。この「一致」は、ある特殊な読者の独り芝居だ。あるいは自己暗示。「読書行為が意味の再生産の場となるということ」(佐藤裕子『漱石のセオリー『文学論』解読』「結論」)などとは無関係。「再生産」が異本制作を含むのなら、見当違いだ。

「感化」は「自己の繙読しつゝある一書物より一個の暗示(サゼツシヨン)を得べく努むること」(N『余が一家の読書法』)の「暗示(サゼツシヨン)」と同じ意味だろうが、これも意味不明。

 

<かような男が、何かの因縁(いんねん)で、急にこの還元的一致を得ると、非常な醜(ぶ)男子(おとこ)が絶世の美人に惚(ほ)れられたように喜びます。

(夏目漱石『文芸の哲学的基礎』)>

 

「かよう」は、どの「よう」か? 「何か」って、何か? 「因縁(いんねん)」は意味不明。「急に」が〈徐々に〉では駄目か。「還元的一致」は無意味。『美女と野獣』(ボーモン夫人)みたいに、「醜(ぶ)男子(おとこ)」が美男子に変身するのか。どういう魔法か。「美女」が醜女(しこめ)になることはないのか。『みにくいシュレック』(スタイグ)参照。アニメではなく、絵本の方。

「文芸家」に愛されたような気分を味わいたくて読書をする人は、作家が特定できない場合、あるいは共同制作の場合、どうするのだろう。

Nの考える「文芸家」は、実在の、しかし不特定の読者の被愛願望を満たしてやるために作品をこしらえることになる。そういう「文芸家」が実在したとしても、その事実を観察することは、「文芸家」本人を含め、誰にもできない。超能力者なら、できるかも。

『こころ』のような虚構の中で、〈「遺書」を媒介にして、SとPの間で「一致」が起きた〉と誤読することは可能だ。ただし、〈「一致」が起きた〉という事実は語られていない。〈Sは「一致」を期待し、Pは「一致」を夢見た〉などと想像するのがやっとだ。

Nは、実作を続けるうち、「還元的一致」が妄想であることに気づく。だから、〈ある作者とある読者〉の関係を、〈語り手Sと聞き手P〉の関係に置き換えて処理した。ところが、作品の外部の世界で、この妄想が真実のように伝播する。つまり、作中のSとPの間で起きなかったことが、Nと自分の間で起きたように思う人が出てくるわけだ。そんな「非常な醜(ぶ)男子(おとこ)」を、普通の信者と区別して、宗徒と呼ぶ。

 

 

 

 

4000 『吾輩は猫である』から『三四郎』の前まで

4500 ボッチは恥

4510 「還元的一致」

4512 仲良しごっこ

 

Nの『文学論』を解読できた人は、いないようだ。できそうな気になる人はいる。

 

<『文学論』は、以後のかれの小説作品を解く鍵であるばかりでなく、日本の近代の精神構造を解く大きな鍵である。

(高橋和巳『夏目漱石『文学論』』*)>

 

この文は結語だが、唐突。「鍵」を挿入するための鍵穴の形状や性質などは不明。

この文は、高橋の「精神構造を解く大きな鍵」にもなりそうだ。

 

<フランスのある寓話に、ある貧しい少年が、魔法使いから一つの青い玉を授かった話がある。その玉は、耐え難い不幸に襲われた時に覗くと、世界の何処かで、いま自分が経験するのと同じ不幸を(ママ)耐えている見知らぬ人の姿が浮んでくる。その少年は、その玉を唯一の富とし、その映像にのみ励まされて逆境に耐えてゆく。李商隠が夥しい故事を羅列するとき、それは概ね、彼の意識に浮んだ青い玉の像だと解してよい。それ故にまた、そこに表現される意味が享受者の精神の玉に何らかの像を結べばそれで充分であり、それ以上の穿鑿は必ずしも必要とはしない。それが文学なる人間のいとなみが持つ最大の効用であるだろうから。

(高橋和巳「『李商隱』解説」)>

 

「覗く」のは、垣間見といって、「文学なる人間のいとなみ」だから、盗撮も文学的だ。現在では、機械仕掛けの「青い玉」を使えば、「見知らぬ人」の私生活が覗ける。やがて、脳と脳を繋ぐことも可能になる。高橋式「文学」は、無用の長物になりつつある。

〈共感できないと理解できない〉という文は、〈理解できれば共感できる〉という文と同値だ。言うまでもなく、理解できても共感できるとは限らない。

「還元的一致」において、発信者の期待するような反応を受信者が示せないと、発信者は「縁なき衆生(しゅじょう)は度しがたし」(『文芸の哲学的基礎』)とばかりに受信者を切り捨てる。だから、気弱な受信者は理解しようと努力する。ずるい人は、理解できたふりをする。やがて、他人はさておき自分だけは理解できたと思いこむ。こうした態度は、当人たちが幼少期に味わわされた「不幸」によって学んだものだろう。高橋やNの「精神構造」は、ネグレクトされた幼児の不安や羞恥などによって形成されている。

 

<あいまいなものから出発して、それが何であろうととにかくおのれの思考のなかに生ずるものを明確にしようと試みるような連中は、まさしく豚野郎である。

(アントナン・アルトー『神経の秤』)>

 

〈ボッチは恥〉という気分は、「日本の近代の精神構造」と無関係ではないのかもしれない。〈五族共和〉という仲良しごっこの標語があった。だだし、辛亥革命のパクリ。

 

*『日本の名著 近代の思想』(桑原武夫編)参照。

 

 

 

 

4000 『吾輩は猫である』から『三四郎』の前まで

4500 ボッチは恥

4510 「還元的一致」

4513 「一を聞いて十を感ずる人」

 

Nは意図的におかしな言葉遣いをしていた。

 

<とにかく、そんな形容を使わなければならない気分が起りまして、煩悶(はんもん)致します。煩悶してどうか発表したいとするが発表できない。できないでしまえばそれまででありますが、せめて不完全ながら十の一でもあらわそうとすると、是非とも象徴に訴えなければなりません。十のものを十だけあらわさないで――あらわさないと云っては間違(ママ)になります。あらわせないのです。でやむをえず一だけにしてやめておく叙述であります。無論気分を気分としてあらわすなら、大(ママ)に悲しいとか、少々嬉(うれ)しいとか云うだけで、始(ママ)めから表わせる表わせないの議論をする必要がないのですが、この深いような、広いような、複雑なような気分の対象を、客観的なる非我の世界に見出そうとすると十の気分を一の形相で代表させて、残る九はこの象徴を通じて思い起すようにしなければなりません。しかしながら元来これは本人すら無理な事をしているのですから、他人にはよほど通用しにくくなる訳であります。一を聞いて十を知ると云う事がありますが、一を見て十を感ずる人でなければできない事です。

(夏目漱石『創作家の態度』)>

 

〈「そんな」~「気分」〉とは「無限の憧憬(しょうけい)」(『創作家の態度』)だが、N自身「実は分りません」(『創作家の態度』)と述べている。

「十の一」は無意味。「象徴」は意味不明。

「あらわさないと云っては間違」で馬脚をあらわしたか。

「やむをえず」は意味不明。

「無論」以下、意味不明。珍糞漢糞。難解な漢文のような珍文。

「一を聞いて十を感ずる」ことが「還元的感化」だろうか。そうだとしても、誰が〈君は「十」を感じ得た〉と保証してくれるのか。

 

<むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな   紀貫之

(『古今和歌集』巻第八 離別歌404)>

 

〈「山の井」の物語〉を知らずに、歌人の「気分」を想像することはできない。

 

<朝香山影さへ見ゆる山の井の淺き心を我が思はなくに   

(『万葉集』巻第十六 3807)>

 

この歌を知れば、「むすぶ手」の歌人の「気分」を微かに「感ずる人」になれるかもしれない。ただし、〈「朝香山」の物語〉が不明だ。この物語を知らずに、〈私は「十」を感じ得た〉と主張するのは、おっちょこちょい。

Nは、本歌などの原典を隠蔽したまま、その「気分」だけを伝達しようとした。

(4510終)

 

 

 


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