ポエ活

村田活彦 a.k.a.MC長老のブログ。ポエトリー・スラム・ジャパン代表。ラップスクール2期生。

ドカドカうるさいお別れ

2009年05月10日 23時05分29秒 | 音楽
青山斎場の門を入ると、駐車場に清志郎の歌が流れてた。
「いい事ばかりはありゃしない」「君を呼んだのに」
日比谷野音のライブ盤だ。

正面の建物に向かって、長い列が蛇行してる。
大きなウサギのバルーンが立ってて、みんなそれを写メに撮ってる。

アナウンスが流れる。
「本日は忌野清志郎 青山ロックンロールショーにご来場いただき、誠にありがとうございます」
だよね。やっぱそうでなきゃね。

ゆるゆると歩きながら、曲に合わせて小声で歌ってるひとも多い。
「上を向いて歩こう」「トランジスタラジオ」
黒スーツにサングラスで坊主頭の、いかにもいかつそうな兄ちゃんが
口をへの字にして空を仰いでる。涙がこぼれないように。

俺はといえば、不謹慎なんだけど
曲を聴いてるうちにどうかするとニコニコしてしまいそうな気がして
たぶん変な顔になりながら、口ずさんでた。

斎場の建物にはいると、黒白幕のかわりに紅白の幕がかかってる。
正面に大きな遺影。遺影の前にたくさんの花とキャンドル。
中央にはドラム、ギター、マイクスタンド、アンプ…といったバンドのセットがあって
さらにその真ん中に愛用の自転車が置いてある。

あろうことか「スローバラード」が流れ出した。
動けなくなった。

さっきまで大丈夫だったのに。
歌までうたって下手すりゃ愉快な気分になりかねない感じだったのに、
一歩も進めない。勝手に涙が出てきた。ボタボタでた。
歯を食いしばろうとするのに、歯の根があわない。奥歯がガチガチ鳴ってる。
こんなの人間の、少なくとも大人の泣き方じゃないって
頭のすみでは思ってるんだけど、体が言うことをきかない。

それでも何とかすすりあげて
花を受け取って、献花台へ進んだ。
けど遺影の笑顔みたら、やっぱダメだ。

心拍数がどんどん上がってくる。息ができない。視界が急に暗くなっていく。
手を合わせればなんとか落ち着けるような気がして、
でも腕にガチガチに力が入ってるのがわかる。

曲は「ドカドカうるさいロックンロールバンド」になってた。
どうにかこうにか目をつぶって合掌して
ゆっくり顔をあげる。もういちど遺影の清志郎と目が合う。

そしたらそのとき、霧が晴れるみたいに
さっきまでの動悸がウソみたいに静まった。
会場に響いていたギターやドラムの音もすっと遠のいて
穏やかな、清々しいような気持ちになった。

すげえや。これが音楽のチカラか。
建物の出口へと歩きながら、たぶんにこやかな、満足そうな顔をしてたと思う。


ウサギのバルーンまで戻ってくると
「雨上がりの夜空に」が流れ出した。それから「気持ちE」。
その場にいたあんちゃんたちと一緒に歌った。

新曲の「Oh! RADIO」がかかり出した頃、会場を後にする。
病気だったとは思えないような、しっかり太い声を背中に聴いた。


青山一丁目駅の手前まで来たところで、学生時代のバンド仲間にばったり逢った。
「生きてりゃ逢えるもんだねえ」
5時間以上立ちっぱなしだったから「腰が痛くて…」とか言ってる。同感。
しばし立ち話する。清志郎のこととか、旧友のこととか。
別れ際に「死ぬなよ」と言われた。

死ぬもんかよ。


雨上がりの青空に

2009年05月10日 08時41分09秒 | 音楽
おはようございます。今日もよく晴れてます。ポエム係長でごんす。

朝っぱらから隅田川にエンジン音を響かせて
チョイ悪オヤジどもがボートでかっ飛ばして行きます。
川沿いの緑のなか、つつじのピンクがまっ先に目に飛び込んできました。


きのうはキヨシローのお葬式、
いやさ「忌野清志郎 青山ロックンロールショー」に行ってきました。

お別れと「ありがとう」を言うために、
そして何より決意するというか、誓うために。
清志郎がいない世界でこれからも生きて行くことを。

(枡野浩一が「葬式は生きる我々のためにやるのだ」というような
短歌をつくってたっけ)

そんなこと考えながら青山霊園まで向かったのですが

いやあ。やられた。
キヨシローは最期までキヨシローだった。ロックだった。
最高のラストショーだった。


乃木坂の駅についたのが12時半。すでにひとがあふれてた。
長い長い参列は、霊園を横切って青山陸橋をわたり、その先の信号までいって折り返してる。
青山一丁目から来た人たちはお墓とお墓の間に列をつくってる。
全部あわせたら2キロくらいになるんじゃないかな。

空は快晴。キヨシローのお別れにふさわしい素敵な青空。
報道ヘリのプロペラ音がずっと聞こえてる。
つがいの鳩がフェンスの上でじゃれてる。

行列には老若男女。
日傘のご婦人、ピースマークのキャップをかぶった男性、サイクリング姿のおっさん、
青い花を一輪持った女の子、ベビーカーを押したお母さん方。

列がすこーしずつしか動かないもんだから
並んでるうちに見知らぬ同士で
RCサクセションの思い出話をはじめる人もいた。

会葬者用に住所氏名を書く用紙が配られた。
裏にはメッセージを書く。

「キヨシローがいなくなったことが未だにうまく呑み込めないでいます。どこかで今も歌ってるような気がしてなりません。完全復活祭でみたあなたの姿。キヨシロー、あなたほど夢や希望、愛、勇気、自由といった言葉が真正面から似合うひとはいません。あなたはロックそのもの、歌そのもの、光そのものでした。こんなに憧れたことはありません。最後にきちんと挨拶して区切りつけるために来ました。キヨシローのいない世界でキヨシローの歌と共に生きていくことを誓うために。たくさんの友人がRCやキヨシローの曲を教えてくれました。一緒に聴いて一緒に歌いました。これからも歌います。心から愛と感謝を。今日は本当によく晴れてます。雨上がりの青空です。青山墓地が長蛇の列です。大丈夫。世界が破滅するなんて嘘だよ。空をまた暗くさせたりしない。俺たちがさせない。ありがとう。初めて本当に心から言います。Love&Peace.愛しあおう」



ようやく会場の門あたりまで来たのが17時くらいだったかな。
塀の向こうからライブの音が聞こえてきて、ふくらはぎのだるさも忘れた。


(つづく)