ポエ活

村田活彦 a.k.a.MC長老のブログ。ポエトリー・スラム・ジャパン代表。ラップスクール2期生。

『アンパンマン』のやなせたかしさんは『チリンのすず』も描いたんだ。

2013年02月26日 08時08分23秒 | 絵本
やなせたかしさんの『チリンのすず』が忘れられない。


こどものころ劇場アニメを観に行った。
主題歌も歌える。
大人になってから原作絵本も買った。

母親を殺された子羊チリン。
殺したのはオオカミのウォー。
ふたりの深く悲しい物語。


人間を動物になぞらえて描くというのは
こういうことだ、と思う。

 (すこしまえ『あらしのよるに』が評判になったとき
  どうしても腑に落ちなかったのは
  どこかで『チリンのすず』と比べていたからだ)


「愛と勇気」だけではなく
憎しみや苦しみが世にありつづけている、
そのことを真正面から見つめた作品。
大人になってからも、大人になってからこそ
何度も読み返せる絵本。



やなせさんは
『アンパンマン』と『チリンのすず』の両方描いたんだ、と
自分のなかで反芻してみる。






木島始、もしくはぶたと75セント

2010年05月16日 22時47分39秒 | 絵本
ひさしぶりに
実家に家族であつまって



その中心はというと
1歳の姪っ子。

みんながなんやかんや
だっこしたり
絵本読んだり
指人形うごかしてみせたり
姫様のお相手。



私なんぞは
遊んでるのか遊んでもらってるのか
わからない有様ですが


ともあれ

そんなこんなしてるときに
ふと
実家にあった絵本をみて驚く。




この絵本、
作者の「きじまはじめ」って

木島始、だよね?

詩人の。
ラングストン・ヒューズの翻訳を手がけた、

あの木島始だよね??




なんでまた
そんなに驚いたかというと


この「やせたぶた」って
小さい頃に自分も、弟もえらく好きだった本のひとつ
なんですよ



日本の絵本だけど
ちょっと無国籍な感じがある

「あんた、ちょっと、みかけによらない、にっぽんいちのかるいぶたね!」

というセリフがあって
兄弟そろってそこがお気に入りだった。



で、そのあと
それとはまったく関係なく
木島始訳の
ラングストン・ヒューズ作品と出会ってるんだけど

「助言」っていう作品。

岩波ジュニア新書の
「詩のこころを読む」って本に入ってた。



詩のこころを読む (岩波ジュニア新書)
茨木 のり子
岩波書店

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たった4~5行の詩だけど
老人の低い声みたいな
ずしりとした手応えがある。

読んだのは中学生くらいかな。



ブルーハーツの「チェインギャング」にも
引用されてて
あ、と思ったのが浪人生のころ。




ラングストン・ヒューズを
もう少しちゃんと読むのは
社会人も7~8年たって
ポエトリーリーディングをやるようになってから。

いずれにしても
ヒューズの作品は木島訳で読んでるから


自分にとって
ラングストン・ヒューズのかっこよさ
=木島始のかっこよさなんです。

「75セントぶんの 切符をくだせい」ってね。



幼いころ好きだったものと
そのあと好きになったものとが

一本の糸でつながった気がした。





それにしても
谷川俊太郎さんもそうだけど

詩人が絵本を手がけることって
多いね。



詩と絵本って近いんだな。

文字の量が少ない、
ってことだけじゃなくてさ。






たからものたち

2010年05月14日 23時54分47秒 | 絵本
昼休み、
姪っ子のプレゼントに
絵本買おうと

神保町・ブックハウスに行った



入り口の左手の棚にディック・ブルーナ。
その先の平台にレオ・レオーニ。
奥のほうには「こねこのぴっち」のグッズ。


店に入って1分もたたないうちに
気づいた。



ここは、やばい。



ここにいたら、昼休みまるまるつぶれてしまう。
昼休みどころか
ここで一日過ごしてしまう。
下手すりゃ「もうこっから一歩も動かない!」とか
言い出しかねない。


誰が? わたしが。



なんとか
自分のなかの大人を奮い立たせて
プレゼント用の絵本だけ急いで選んで
(写真の2冊ね)


でも自分用に1冊買ってしまったのが
穂村弘さんのエッセイ。


ぼくの宝物絵本 (MOE BOOKS)
穂村 弘
白泉社

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タイトルどおり
ほむほむ、失礼、穂村さんが
好きな絵本について書いたもの。


「てぶくろくろすけ」
「ありこのおつかい」
「かばくん」
「ねないこだれだ」


そうそう、読んだ読んだ!

という共感もあるんだけど
それ以上に


ほむ…いや、穂村さんの
絵本への鋭い目と偏愛っぷりに
うなったり、
うなづいたりする。


 

 「会社が辛くても、外がさみしい雨の夕方でも、
  傘が小さくてスーツの肩がびしょ濡れでも、
  この本の中だけはこんなに美しい」



なんというしょぼい告白。
しかしその告白にシンクロしすぎて
めまいがする。



だいたい

 「忘れていた懐かしい絵本や
  未知の輝きをもった絵本に出会うと、
  脳から液が出る」




などという成人男子は
確かにレアなアレでして



そんなマニアックな夢の遍歴が
一冊の本になるなんて
正直、うらやましい。



ずるいよ、ほむほむ。








ニューヨークで絵本といえば

2007年06月26日 08時58分25秒 | 絵本
こないだの世界ウルルン滞在記
ニューヨークでロバート・サブダに
飛び出す絵本作りを学ぶという企画が
うらやましいほど私好みだったわけですが

途中でチラッと出てきた児童書専門店
ブック・オブ・ワンダー

この店がまたいいんですよ。
映画「ユー・ガッタ・メール」でメグ・ライアンが経営する
絵本屋さんのモデル
って聞いたこともあります。

ニューヨークまで行って
この店しか観られなかったとしても
わたし的にはオールオッケーです。
むしろ閉じこめて欲しい、2、3日くらい。

ここのオリジナルグッズに
ブックトートがあります。
アリスとかオズの魔法使いのキャラがあしらわれていて
ニューヨーク土産におすすめ。






「車掌」「課長」

2006年06月21日 22時08分57秒 | 絵本
いや、お笑いではなく、
コラボレーション絵本です。

歌人・穂村弘×絵師・寺田克也
鬼才の自乗。


前作「車掌」は、
穂村氏のストーリーに寺田氏が絵をつけたもの。
で、寺田氏のイラストに
穂村氏が言葉をつけたのが「課長」

この絵でこうくるかー!という
絶妙なずらし加減がたまらん。

「にょっ記」もそうなんだけど
ほむほむは一般的な世の中とは
ちょっとずれた時空に住んでいるみたいだ。
日常と地続きの異界。

そのちょっとだけずれた3.2次元みたいなとこで
少しずつ年を重ねてる。










大丸ミュージアム・東京「絵本作家ワンダーランド」

2006年04月05日 01時43分56秒 | 絵本
大丸ミュージアム・東京で開催中の
「世界の絵本作家展II 絵本作家ワンダーランド」に行ってきた。

「絶対に!見に!行くべき!」と
びっくりマークが3つもつくような勢いでオススメされて
そんなもんかなあと出かけたのだが
「確かに!見に来て!正解!」

入場してすぐのところに
バージニア・リー・バートン「ちいさいおうち」の原画があって
それでもう意味もなく震えた。

怪しいって。

今年38歳になるおっさんが
「ちいさいおうち」に釘付けになって
プルプルしてたらめっさ怪しいって。


あと、展覧会の趣旨とはズレるけど
絵本翻訳家としての谷川俊太郎の仕事っぷりに
今さらながら恐れおののく。

簡潔さ、語呂の良さ、リズム感、すべてが別格。
ジョン・バーニンガム作品なんて、
最初から日本語で書かれてたとしか思えないもん。

東京・大丸の12階で4/11(火)まで。






最近思った「ここが変!」をおしえてください

2006年01月26日 12時11分37秒 | 絵本
略して「ここへん」。

変といえば『あらしのよるに』が変。
特に「ともだちなのにおいしそう」っていうセリフ、
あれがどーしても納得できない。
ていうかあれのどこに共感、感動すればいいのかわからん。
だって「友だちを食べたい」って思ったことないもん。

あれって結局
人間の話を動物にたとえてるわけでしょ?
対立するふたつのグループに属する者同士、
偶然にも友情を育んでしまって…という
手塚治虫もよく取り上げていたテーマ。
それはいいんだけど。

オオカミのガブが、ヤギのメイを
「食べたい」って思う描写が出てきたとたん、
ものすごく違和感感じてしまう。
「食べたい」っていうのは本能からくる欲求で
実際の人間関係の中では
「本能を我慢しても友情を守る」なんてことは
ふつう起こり得ないですもんね。
オオカミやヤギに託して人間を描くという手法が
ここで破綻しちゃう。
そりゃいったい何のたとえなの?と言いたくなる。


…という話を知人にしたところ、
「ロリコン男が幼い女の子と偶然仲良くなって
押し倒したいんだけど
でも関係を続けていくためには
“食べちゃう”のを我慢しなければいけない、というたとえ話
って考えればいいんじゃない?」
という意見が返ってきた。

なーるほど。
っておい。
そんな話だったらこんな大ヒットしないよ。


とまあ、
どうにも釈然としない気持ちでいたところ
小説家にして書店主の藤谷治さんの日記に
同じような主旨のことが書いてあるそうで
ちょっとホッとする。

よかった。オレだけじゃなかったのね。
(藤谷さん、ご無沙汰しております)


さて、最後にもうひとつ。
『あらしのよるに』を読む(観る)くらいなら
やなせたかし作『チリンのすず』を読むべし。
アニメにもなってます。

こちらはおおかみとひつじの話。
けして明るくはないけど
最後まで目をそらすことができないストーリー。
ひつじのチリンとおおかみのウォーに託して描かれているのは
紛れもなく「人間」の姿です。