ポエ活

村田活彦 a.k.a.MC長老のブログ。ポエトリー・スラム・ジャパン代表。ラップスクール2期生。

私にとってポエトリースラムは多様性の象徴。

2017年02月18日 22時26分18秒 | ポエトリーリーディング/詩/朗読

ポエトリースラムっていうのは、ポエトリーリーディング(詩の朗読)を競うゲームのこと。私が初めてポエトリースラムに参加したのは2000年、場所はニューヨーク…って言うとちょっとカッコつけすぎですね。その前に一度、仲間内の「詩の朗読バトル」イベントに参加したことがあった。その頃は「ポエトリースラム」という言葉も知らなかったけど。

ともかく。そのころ私はリーディングを初めて1年半くらいで、NYにニューヨリカン・ポエッツ・カフェ(Nuyorican Poets Café)というポエトリースラムの殿堂みたいなクラブがある、ということは知っていた。カオリンタウミという日本の詩人がそこで優勝した、という話も。そんな折、リーディング仲間の何人かで「本場」に行ってみようという話になった。

ニューヨリカン・ポエッツ・カフェがあるのはNYのロウアー・イーストサイド。初めてのNYで、クラブに出かけるというだけでガチガチに緊張していたのをおぼえている。そして、ステージに現れた司会のナイスガイのスーツと身のこなしがえらくカッコよかったことも。

その日のスラムは1回戦につき3回朗読できる、つまり初戦だけでも3回朗読するチャンスがあったんだけど、私たちは3人でひとり分というエントリーを許してもらった。3回の出番を、各自が1回ずつ朗読したというわけ。今思うとヘタレ極まりない。

ポエトリースラムではたいていの場合、客席から審査員が選ばれる。そもそも英語のテキストも用意しておらず、日本語で朗読した私たちは、あっさり初戦敗退した。ほぼ意味もわからないだろう日本語のリーディングに対して、5人の審査員はそれでも「努力賞」くらいの点数はくれたように思う。

そんな情けないデビュー戦だったけど、自分たちに火をつけるには十分だった。なにより、これが本場か!という興奮に包まれていた。スラムが終わったあと、同じようにポエトリーリーディングをやっているという青年たちが「詩集を交換しないか」だの「CD聴いてくれ」だのと声をかけてきた。詩集も作ってないし、自分のCDという発想すらなかった私は「わー、やっぱNYすげえ」と思いつつ、中学生レベルの英語とスマイルとでなんとかコミュニケーションを図っていた。

次に海外のポエトリースラムを経験したのは2004年。その時は同じNYのバワリー・ポエトリー・クラブのスラムにエントリーした。ニューヨリカン・ポエッツ・カフェと比べると少しカジュアルな印象の店だ。旅の道中で感じたことをもとに英語の作品を作って、一回戦に臨んだ。ウケた。勝ち抜いた。残念ながらそれ以上は英語のテキストがなく、二回戦で日本語作品を朗読したら、敗退。ただ、この時も終わったあとに何人も声をかけてもらって、やっぱり片言で詩の話をした。その楽しさだけが残っている。

それからさらに10年(!)後。留学中のパリで、ポエトリースラムW杯に出会った。大会が開催されているのはパリ20区のベルヴィル。そこはアジア系をはじめとして移民が多く、多文化を感じるエリア。その町のホールにヨーロッパはもちろん、アフリカ、ロシア、南北アメリカ…20か国の代表が集まって、それぞれの言語でリーディングを披露していた。

衝撃だった。10年以上ポエトリーリーディングを続けていたけど、まさか世界大会があるなんて知らなかった。そして、全く知らない外国の言葉の、意味がわからないはずのリーディングに心が震えることがあるなんて! スウェーデン代表の女性がセンテンスごとに噛みしめるようにリーディングしたとき、気がつけば涙が流れていた。

5日間にわたって行われるポエトリースラムW杯に毎日通い、各国代表と仲良くなった。なぜかカリブラージュ(審査員への予行演習として、試合前に行うパフォーマンス)としてステージにも立った。出会う景色すべてがまぶしかった。

決勝戦が終わった夜、各国代表たちと一緒に会場近くのオープンカフェで飲んだ。誰かがギターを弾きだして、各国スラマーのサイファーが始まった。英語、フランス語、ノルウェー語、ポルトガル語、ロシア語、スウェーデン語、デンマーク語…それぞれの言語で続いていく即興リーディング。私も日本語で加わった。それぞれの言葉が、それぞれの声で音になり、夜の空気のなかで混じり合っていた。「言葉の壁」なんていうけど、リーディングがその壁を越える瞬間だった。

私にとって、ポエトリースラムは多様性の象徴。NYでもパリでも、ポエトリースラムは熱くて暖かい場所だった。その空気につながっていたいと思わせてくれた。だから、それを、日本でも始めようと思ったんだ。

ポエトリースラムジャパン2017春 全国大会、2月19日(日)14:30スタートです。

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