ポエ活

村田活彦 a.k.a.MC長老のブログ。ポエトリー・スラム・ジャパン代表。ラップスクール2期生。

僕の詩は君の詩。大阪・釜ヶ崎、ココルームの詩集が素敵です。

2015年01月29日 23時19分04秒 | ポエトリーリーディング/詩/朗読
先週末、大阪市西成区・釜ヶ崎の「ココルーム」に行ってきました。
地下鉄「動物園前」下車、商店街「動物園前一番街」を進むと左手にみえてくる謎のカフェ…ここがココルーム。正式名称は「NPO法人こえとことばとこころの部屋」。地元に根ざしながら、様々なアートイベントやワークショップを行っています。最近ではココルームが主催するプロジェクト「釜ヶ崎芸術大学」が2014年の横浜トリエンナーレに参加して、話題になっていました。




ココルームの代表をつとめるのは詩人の上田假奈代さん。もともと大阪で詩の朗読活動をされていて、つまり私の大先輩なわけです。そんなこともあって私がポエトリーリーディング始めたころから知り合いではあったのですが、ずいぶんご無沙汰してました。12年前、ココルームを始められたのも知ってはいたんですが、実際に足を運んだのは今回がはじめて。

もうね、悔やみました。もっと早く来んかい!と自分にツッコミいれました。

ほんの2時間くらいの滞在だったんですけどね。まるで親戚の家に来たみたいにお昼ご飯一緒に食べて、おっちゃんたちの話を聞いて、それだけなんですけどね。詳しく説明すると長くなるので、それはまた今度にしますが。

詩集を買ったんですよ、2冊。『こころのたねとして2011 釜ヶ崎・飛田・山王』そして『釜ヶ崎詩集 こころのたねとして』。どちらもココルームが開催した詩のワークショップのなかから生まれたもの。




このワークショップが非常に面白い。詩を作るのに、けしてひとりでは作らない。誰かと作る。それが「こころのたねとして」という手法。まずふたり一組になって、おしゃべりしたり取材したりして、相手の話から詩を作る。みんなで連詩を作ることもある。10分間相手をみつめながら、似顔絵を描くように詩をつくる「似顔詩」というのもある。そして最後にはその相手に向けて朗読する。


たとえば、ラッパーのSHINGO★西成が「不動産屋の岩井さん」の言葉を聞いて作った詩は、ラッパーだけあってちゃんと韻が踏んである。語られているのは岩井さんのライフストーリー。これはアーティストのオリジナル作品なのか、岩井さんのドキュメンタリーなのか。どちらでもあってどちらでもない気もする。「私の詩」と「あなたの詩」とが絶妙に渾然一体となってる。

ふつう「詩を作る」というと、ひとりきり自分の世界にひたって書くというようなイメージありません? あるいは学校の授業で「自分の言葉で書きましょう」と言われた経験は? でも本当は自分だけの言葉なんてないんじゃないでしょうか。私が使ってるのも、あなたが使っているのも同じ言葉なわけで。自分だけの言葉が体の奥(あるいは心の底)から沸き上がってくるというより、外から言葉がやってきて、自分の中を通り抜けてまた出て行く、といったほうが正確じゃないかと思うのです。

「自分の言葉」を語ろうとするほど抜け落ちてしまうすごく大事なことを、この2冊の詩集は思い出させてくれます。「こころのたねとして」の手法、私もやってみたい。




2月4日(水)「埼玉サイファー7」でポエトリーリーディングします。

2015年01月28日 21時46分16秒 | ポエトリーリーディング/詩/朗読
はい。ということで前にも告知しましたが、タイムテーブルというか告知動画がでております。
がっつりヒップホップのイベント。錚々たるメンツです。ここでポエトリーリーディングします。わしもがんばる。
アウェイと言わないで。

「埼玉サイファー7」 2月4日(水) @西川口ハーツ タイムテーブル



直前ですみませんっ。週末は大阪でオープンマイクに参加します!

2015年01月22日 19時43分18秒 | ポエトリーリーディング/詩/朗読
直前のお知らせになってしまいました!

今週土曜、大阪でオープンマイクイベントに参加します。
東京・渋谷で2ヶ月毎に開催されている言葉と音楽のセッションイベントなんですが、
今回は大阪出張編です。ご興味あるかたはぜひ! 地元参加者も募集中です!

『開口一番 - Open Mic Session 』
2015年1月24日(土)
18:30開場 19:00開演
料金:1500+1DRINK
会場:心斎橋 LIVE Bar 酔夏男
ホスト:ヒエ MC慎太郎 守山ダダマ
ミュージシャン:鈴木淳(ドラム)、中島知也(マーチングドラム)、kubobon(ギター)…and more!

私は土曜日に着いて、翌朝には車で帰るという強行軍になりそうです…。

2月もポエトリーリーディングだ、パーリーピーポー。

2015年01月21日 21時22分14秒 | ポエトリーリーディング/詩/朗読
2月、立て続けにヒップホップ系のイベントに出演することになりました。

2月4日(水) 16:00 埼玉サイファー7 @西川口Hearts
¥500(D別)特典あり
◆ライブ:マサキオンザマイク、空也MC、1horse、ANCELL、
     梅酢、吉田達也(RUINS)、村田活彦
◆DJ:YEW、KTR

2月8日(日)17:00 進撃の詩人 @渋谷Last Waltz
普通¥3000/1D付
◆マンスリーピックアップ:東京未開封、狩谷赤人
◆レジデント:ANCELL
◆開会の咆哮:The I
◆ポエトリーリーディングもラップも弾き語りもDJもいっぱい。

遊びにきて。飲みにきて。踊りにきてきて。


路上で表現するということについて考えてみた ―小関峻インタビュー

2015年01月16日 23時47分33秒 | 音楽
昨年11月、ひとりのミュージシャンのブログ記事がネットで話題になりました。書いたのは小関峻というソロシンガー。池袋駅前の路上で弾き語りをしていたら、ある日警察に連行されて、池袋での路上ライブができなくなった、という内容です。路上ライブを週に4回、2年間続けてきたなかで初めての経験だったとのこと。この記事には賛否両論のコメントが寄せられ、またFacebookなどを通じて拡散されました。拡散したひとの中には有名ミュージシャンも含まれています。

私自身そのころ路上でオープンマイクイベントを試みていて、池袋ではパフォーマンス中に警察の注意を受けるという経験をしたところでした。そんなタイミングでこの記事を知り、彼に会いにいくことにしました。路上で表現をするってどういうことだろう。彼の経験を、自分なりに考えてみたくなったんです。

小関くんは現在、池袋を離れて別の駅などで路上ライブを続けています。この日は大塚駅のロータリー前。小さなアンプとスタンドマイクそしてアコースティックギター。それほど大きな音量ではないけれど、ハイトーンな声が駅前に響きます。19時半ごろからスタートして、休憩をはさみつつ21時ごろまで。年末の冷え込みの中、常連のファンが6~7名集まっていました。通行人のなかにも足を止めてしばし耳を傾けていくひとが。

ライブを終えた彼に、ファミリーレストランで話を聞かせてもらうことにしました。

―ブログ記事がシェアされたことで騒ぎが大きくなり、驚いたでしょう?
 批判するコメントが多くなってきたとき、あ、これはやばいなと思ったんで、早めに(コメント投稿を)閉鎖しました。応援コメントもあれば、それに被せるように「ダメだろ、路上ライブなんて。当たり前じゃねえか」みたいなのも来るようになった。それに便乗して批判が増えると、賛成派もまた来る。で、これはどんどん荒れてくなと思ったんで、5、6件来た段階でコメントは閉じちゃいました。でもフェイスブックとかツイッターのリプとかはどうしてもやっぱり見えてしまうんで、いいコメントも悪いコメントも両方見ちゃいましたね。気持ちは良くないですよね。別に路上が違法だってことはもちろんわかってやってますし。

―腹が立つという感じ?
 うーん、けどちょっと考えさせられましたね。こんなに嫌がってる人もいるんだなというのはやっぱり受け止めなきゃいけない事実かなと思ったんで。やっぱり僕らのマナーとかも見直さなきゃいけないんだろうなとは思って。ほかの路上アーティストもみんなやっぱりそうでしたよ。僕のブログとかコメントとかを読んで、みんな「自分がやったことは本当に正しかったのかな」みたいにちょっと考えさせられていると思います。

―路上演奏を批判する人には音量とか通行の邪魔とかゴミが出るとか、いろんな理由があるだろうけれど、どういうものが多かったですか?
 たぶん「うるさい」。あとやっぱり「通行の邪魔」だと思います。

―なるほど…。ではまず、2年前に路上ライブを始めたきっかけから教えて下さい。
 大学生の時はデモテープを送りまくってたんですよ。路上ライブは全然やってなくて。そしたらある、メジャーのレコード会社から声がかかって、一回お話をさせていただいたんです。そこで言われたのが「デビューさせたいけど動員数が足りないから無理だ」っていうことだったんです。「お客さんをなんとかして集められるようになったら、まあ考えられるよ」っていう感じだったんですね。それで、レコード会社のプレゼンのライブをやってあげるから、お客さんを集めなさいって言われたんです。その時に思いついたのが路上ライブだった、それがきっかけですね。

―そのライブまでの期日が決まってた?
 そうです。この日にプレゼンライブやってあげるから、それまでになんとかして人いっぱい集めろっていう感じで決まっちゃったんで。それが大学卒業間近ぐらいで。だからもう卒業と同時に路上漬けにしようと決めて卒業したんです。そのライブまで一年もなかったですね。10ヶ月とかくらい。その時からずっと変わらず週4回です。池袋で週4回やり続けようって決めて。

―そのころ池袋には路上ライブするひといっぱいいました?
 いましたね。そもそも駅前では新宿と池袋がツートップです。渋谷は若干やれる場所が少ないんで、池袋や新宿のほうが多いとおもいます。
 やる前は、どういうところでやってるのかなって研究して回って。あ、こことここでやってるんだ、じゃあ俺はここでやろうみたいな感じで。池袋西口は多いときで2、3組いました。3組いたらもうカオスですからね。音がかぶって。東口も4組くらいいます。あとサンシャイン側の五叉路にも何組かいますよね。西口でもルミネの方にいくとまたひとりいたりして。トータルでいったら毎日10組くらいいます。特に夏場は場所がなくて、取り合いです。 

―場所は決まっている?
 そうですね。だいたいここにいくとあいつがいるみたいのはありますね。僕も週4でやってたんでわりと自分の縄張り的なのはあったんですけど。

―ライブ動員を増やすために路上をやって、効果はありました?
 ありましたね、やっぱ。それまでライブハウス出ても誰もお客さん呼べなかったんですよ。特にこういうアコースティック弾き語りの人って、友達を呼べて2、3人じゃないですか。で、同じように友達2、3人呼ぶアーティストが集まってライブやると、入っても10人とか。お客さんは観たいの観たら帰っちゃうんで、本当にガラガラのところでやるっていうのが大学生の時の現状だったんですよ。いちばん最初に出たのは渋谷のアンコール渋谷っていう、アコースティック系の小さいハコでした。出やすいんですけど、出やすいぶんお客さんは全然入んない。かといってお客さんがめっちゃ入るようなところはノルマが高くてとても一人じゃ払えない。で、バーみたいなところにも出るんですけどやっぱりお客さんがいない。大学生の頃は本当にファンはひとりもいなかったです。だからこのままじゃいかんなって思って。プレゼンライブの話もいただいたんで、路上ライブに切り替えたんですよ。路上ライブやったらやったぶんだけお客さんつくんで、全然違いましたね。

―そのプレゼンライブは結局どれくらい集客できました?
 それはね、身内もたくさん呼んだんですけど50人くらい。でもそれまではノルマ10人も達成できなような自分だったんで、50人でもえらい進歩です。純粋なお客さんもちゃんと来てくれて。路上を半年以上続けたおかげで、10人以上のお客さんがちゃんとお金を払って来てくれたわけです。だから路上やったほうが、成果はでると思います。

-路上ライブをやることで仲間も増えたでしょう?
 増えましたね。ミュージシャンの仲間もできましたし。池袋の路上ライブのシーンが本当にすごく楽しかったんですよ。僕と他のアーティスト、共通のファンがいたりして。僕のライブ観たあとにあっちを一緒に観に行こう、みたいになってて。ちょっとフェスみたいな感じだったんですよ。お客さんにとってもすごく楽しい路上のシーンで。アーティストとしても集客のために効率いいし、お客さんもただで新しい音楽に出会えるチャンスがあるわけですから、うるさいだけではないと思うんですよね。今日来てくれた男の人とかは、池袋の路上ライブをハシゴされてたんです。だから池袋の路上が一気になくなっていちばん悲しんでましたよ。

―警官に止められるときというのは、どんな感じですか?
 「ダメだよ、片付けてね、また来るからね」みたいな感じで、去っていく。だからまあ僕らはそれを見てどうしようか、移動しようか、ちょっと時間あけてやろうか、とかいろいろ話し合ったりするんですけど。ま、基本移動しますよね。やっぱり危ないというか、さすがにちょっと申し訳ないので。あとはまあ「苦情が入ったから」って誓約書を書かされることもあります。

―誓約書?
 苦情が入った場合は「こういうことはもうしません」っていう誓約書にハンコ押すんです。ま、あれもいちおう形式的なものなんで、どうにもなんないんですけど。それも僕とかもう100枚近く書いてるんですけど。

―え! 100枚⁉︎
 ぜんぜん書いてます。たぶん路上やってるひとはもう何十枚と書いてます。路上を始めたばっかりで書かされた時は「やべえんじゃないか」と思ったんですけど。罰金とか取られるのかな、とかドキドキして。けど別にどうにもならないってことがわかってきて。それでみんな、誓約書を書いてもまたやるわけですよね。あと、別に苦情が入ってないのに嘘ついて誓約書を書かせる人もいるんですよ。

―警官によって? その嘘って分かるものなの?
 えっと僕、さすがにそれはないと思ってたんですけど、こないだ僕の知り合いのシンガーソングライターさんが警察に連れて行かれた…正確に言うと、警察官が「苦情が入ったからダメです」「誓約書書きなさい」って言ったところにお客さんが食ってかかってトラブルになったらしいんです。お客さんが公務執行妨害ということでちょっと連行されることになって、アーティストも「事情を聞く」っていうことで一緒に連れて行かれたんですよ。けど、いざ署で詳しい話を警官から聞いたら、別に苦情は入っていなかったと。違う件で近くに来て、たまたまやってたから声かけたんだと。で、それを知ったアーティストは「なんだあいつ、嘘ついてたのか」って怒ってました。嘘はダメでしょって。だから意外とそういう人もいるんだなという。ただまあ毎回嘘とは限らないですし、嘘は少数だとは思いますけど。やっぱ池袋とか新宿だと、路上やめさせる口実として、苦情なくても「苦情入ったから」ってやめさせる場合もたぶんあると思います。

―結局その場にいた警官の気持ちひとつでいくらでも変わってしまいますね。
 そうです。見逃す方もいますよね。今日の大塚駅前でも(警官が)ぜんぜん素通りしてたし。街にもよるし、人にもよる。あと忙しさにもよると思うんですけど。池袋でも、忙しそうな時はぜんぜん無視のときもあります。
 苦情が入ることは結構あります。やっぱ通報魔もいるんですよ。もうとにかく、路上をみかけたら通報するみたいな変な奴もたくさんいるんですよ。僕の友達で警官やってる人がいるんですけど、その人に路上の件を話したら、警察の方々も路上ライブは正直悪いと思ってないと。どっちかっていうとすぐに通報ばっかしてくる馬鹿な奴が多くて困ってるって言ってました。ちょっと車がうるさいからって苦情言ってくるやつとか、めっちゃ多いらしんですよ。「だからまあ、やむを得ないんだよね」っていう話でした。

―誓約書を書かされる頻度はどれくらい?
 池袋だったらまあ、3日に1回くらい。週4で路上ライブやってるから、週に1回は書く感じです。たとえば東口でやってダメだよって注意されて西口に移動して、そしたら西口で苦情が入っちゃったってこともあります。1日に何ヶ所か移動してやってたんで。本当にしょっちゅう書いてました。でもそれは僕に限らず、池袋で路上やってるひとたちはもう死ぬほど書いてますよ。池袋署に連れて行かれた時に、年間の通報の束を見せられました。すげえ数でした。だから苦情がたくさん入っているというのは事実です。その中にはまあ、悪質な通報魔もいると思いますけど、純粋に嫌だっていう人もたぶんいるのは間違いないです。人が多いとそれは避けられないと思います。もちろん、人が多いところだからこそ路上ライブする意味がある、とも言えるんですけど。

―なるほど。では、連行された当日はどんな経緯だったんでしょう?
 いつもどおり7時半から同じ場所でライブして、同じような常連のお客さんが集まってました。その日は6~7人くらいいたのかな。なんだかんだ1時間ちょっとはできたんですよね。じゃ一旦休憩いれますって終わったところで、普通のあの青い制服の警官が来たんですよ。
 で、その警官に「苦情入ったから今日はやめてね」って言われました。いつもように誓約書も書いて、片付けて「撤収!」ってみんなで移動しようと思ったら、そのあとに別なところから私服警官が来て「実はいま見てたんだ。苦情が入って捕まるの待ってたんだ」って。苦情が入んないとやっぱ現行犯で連れていけないみたいで。んで、たまたま池袋東口で俺がライブ始めるところを目撃したから「じゃあちょっと見ておこう」ってずっと見ていたみたいです、1時間近く。そうしたら案の定、苦情が入ったからってことで。「ちょっと署まで来てくれない?」って池袋警察署まで連れていかれました。乗せられたのはパトカーじゃなく、ちょっと違った車でしたね。
 もともと、それより数週間前に普通のお巡りさんに「今後ちょっと池袋のライブ取り締まりを強化するっていう噂を耳にはさんだから、君たち本当に気をつけたほうがいいよ」って言われたんです。で、それはちょっとやだなと思ってたんですけど。

―お巡りさんが?
 お巡りさんが教えてくれたんですよ。「上の者がそういう話をしているのを小耳に挟んだから、ちょっと今後危ないかもよ」って。まあ特に信憑性はなかったんで、変わらずみんな路上やってたんです。そんなときに私服警官が来たんで「あ、本当にそうなったんだ」って。なんか上の人が変わったらしいんですよ。池袋署の道路交通課の偉い方が今年になって変わって「もっと厳しくしていきたい」みたいな。通報の数にもううんざりしている、と。なんか毎日、書類にハンコ押すんですって。一枚一枚に。その通報の束見せられて「こんだけ来てんだよ」と。だから池袋でやるのはやめろ、と言われました。だから警官も別にそんなに取り締まりたくはないんですよ。それはすごく伝わりましたね。それで「今まで路上ライブやった街で、警官に止められなかった場所はどこだ」って言われて。津田沼とか止められなかったんですよね。「じゃあ、そこでやれ。そういう町だったら大丈夫だ」って。新宿、池袋、渋谷には特殊部隊がいるからって。

―特殊部隊って?
 道路交通法の特殊部隊がいるんだそうです。俺もそれはそのとき知ったんですけど。だからその特殊部隊がいる街は、いきなり連行して、現行犯で罰金とか、懲役とかにできるんだそうです。だけどほかの街では、注意はされるけどそういうリスクは絶対ないって言ってました。僕こういうことも細かくブログに書いちゃったんですよ。だからそれも今回の拡散の原因かなあと。けど、たぶん本当だと思いますね。新宿では、僕がつかまる一ヶ月前にアイドルバンドが連行されて書類送検されてます。そっちのほうが先駆け的な感じではあります。そのアイドルはニュースになったんですよ。で、それの影響もあって、池袋の路上が厳しくなってきたっていう噂が広まってきたんです。新宿で路上ができなくなったからアーティストがこっちに流れてきてるし、池袋もその流れで厳しくなってきてるっていう話を耳にはさんだのが10月とか11月だったんですよね。そんな矢先に、僕がああなった。

―今回、罰金はありました?
 ないです。厳重注意ですんだんで。けど「本当に次やったら(罰金を)やらざるを得ないから、君ほんとうに池袋はやめたまえ」っていう感じでした。ただ、それは僕が路上ライブやりまくってたからではなくて。「今日小関峻つぶしにいくぞ」って来たわけではなかったみたいです。「君のことは知ってたけど、今日たまたま君を見つけたからこういう形になった」と言ってました。そこにいたのが違う人なら、その人が厳重注意を受けて、池袋ではできなくなってたんでしょうね。で、その場で警官に「ほかの路上の仲間とかいるでしょ」って言われて。「そういう仲間のひとたちも捕まって罰金とかになっちゃうかもしれないから、ブログとかに書いて広めてね」って言われたんですよ。だから確かにそれはまずいなと思って。それと自分のお客さんがすごい心配してくれてたから、お客さんと僕の仲間に向けて「こういうことがあったから、池袋はちょっと気をつけたほうがいいよ」ってブログに書いたんですよ。それなのにあんなことになって。ちょっとびっくりしてます。

―なるほど。警察署にいたのは実質どれくらい?
 1時間までいかない…40分とか。写真撮られたりしました。誓約書を書いたり。それもいつの誓約書とは違う、がっつりしたやつ。なんかいつもは決まった文章に穴埋めをしていくレベルなんです。名前とか生年月日とかを穴埋めしていく。「はいここ書いて、ここ書いて。名前書いてね、はいハンコ」で終わり。だからあれはもう警官の方も形だけ、一応ちゃんと止めましたよっていうだけものなんですよ。けど、今回は白紙に「私、小関峻は何月何日どこどこでなになにをしました。もうこういうことはしません」みたいにがっつり一枚分書かされました。ちょっと、レベルが違うなと思いましたね。

―怖かったですか?
 うーん。怖かったというより、ああ俺はついに池袋でできなくなったという感じで。今後どうしようかなと考えてました。さすがに一発罰金とか懲役とかはないだろうなと思ってたんで。大人しく従いましたし。
 写真は前と横と、あと機材とかギターとかも全部撮られました。「これ上のひとに提出するから」って。で、「まあたぶん、罰金とか懲役にはならないと思うけど、まだ今の時点では確定ではないから」「1、2週間以内に連絡がこなければ大丈夫だ」って言われました。「僕らも別にそういうことにはしたくないから、なるべく穏便にするように上の人に言うから、君はもう池袋でやるな」っていう感じだったんです。その後は連絡がないから大丈夫だったみたいです。まあそのかわり、僕はいったいいつになったら池袋でできるのかなっていう。さすがにそこまで言われると、もうちょっとできないって思いますね。

―ミュージシャン仲間の反応はどうでした?
 いや本当にショックを受けてました。すごい励まされましたし、慰められましたし、心強い言葉をもらったんですけど。その人たちも池袋でやりにくくなってしまったんで、やっぱみんなすごい考えてました。今後どうしようか。やっぱ同じようにネットの反発コメントとか見て、本当に路上ライブってどうだったんだろうかっていうこともやっぱみんな考えてました。すごいいろんなストリートミュージシャンに考えさせられる事件になってしまったな、と。

―「路上ライブは正しかったんだろうか」というのがみんなの率直な感想?
 けどなんですかね、本当に悪いと思ってたらみんなやってないわけですから。みんなやめようとは思ってないでしょうし…。

―いま池袋で路上ライブやる人は減ってるの?
 もう誰もいないと思います。僕と一緒にやってた方たちも他の町に流れていったりして。けどたぶん僕以外のひとは別に連行されたわけじゃないんで、やっぱり池袋復活を考えてますよ。年明けくらいから少しずつやっていったらいいんじゃないかって。

―小関くんはブログで「路上ライブは違法」と言い切っていますよね。一方、池袋ではできなくなったけど、他の場所で路上ライブを続けています。そのあたりを詳しく聞かせてもらえますか。
 確かに、反発コメントで「自分で違法と書いといてなんなんだ」って人もよくいました。けど僕は、違法だと思いますけど、別に悪だとは思ってないです。絶対そうは思ってないです。だってこの世の、法からちょっとはみ出てることって全部悪いことですかって言ったら、そんなことないですよね。グレーなものもいっぱいありますし、他の国に行ったらオッケーなものもあるわけですよね。それをたまたま日本のこの町の、価値観だけで、違法だから悪だって決めつけられるのはおかしいですよ。と、僕は思うんです。違法だとは思ってますけど、グレーの範囲でやりたいですって話です。別にそれで反発くらうのはわかってますし、覚悟はしてます。グレーゾーンでありつづければよかったんですよ。けど今回警官がちょっと一歩踏み込んできて黒にしようとしてしまったがために、こうなってしまったという感じ。
 もともと路上はライブハウスで呼ぶための手段でしかなかったんで、お客さんが増えればやめてもいいと思いましたけど、けどやっぱり路上ライブっていうのはひとつの文化ですよね。路上ならではの楽しみって絶対ありますし。路上ライブによって救われた人も絶対たくさんいると思います。

―路上ならではの文化ってどういうもの?
 なんだろな…今ってライブハウスでふらっと立ち寄れるところってすごく少ないじゃないですか。帰り道にちょこっとなんて全然ないんですよ。だから一般の客なんか全然入んなくてガラガラなんです。それに比べて路上ライブって帰り道に音が聞こえてなんだ?って立ち止まって、で、そこで人と人とが出会って繋がって、恋人になったりもするんですよ。友達にもなるんですよ。コミュニティーにもなるんですよ。その人たちの人生変わってくるんですよ、ほんとに。そういうこともあり得るわけですよ。もちろん嫌がる人もいると思いますけど、反面それをすごく望んでる人もいるんですよ。お金がなくてライブハウスに行けないっていう人も、路上ライブだったら毎日来たいっていう人もたくさんいるんですよ。常連のお客さんも、これ聴きたくて今日1日仕事頑張ってきてんですよ。そう考えたらどうですか、完全に排除なんかしちゃっていいのかなってなりますよね。仮にあの広場に嫌がる人がひとりいたとしても、あそこにいた5~6人がやってほしいって望んでいたんならなんで、ってなりません?

―たとえば東京の制度としてヘブンアーティストというのがあります。あるいは千葉の柏では路上ライブを認定制にてして認めていますよね。
 もちろん、そういうのもすっごい調べましたよ。けど、やっぱりああいう制度って、ストリートミュージシャンにとってとっても都合がよくないんですよ、どうしても。

―どういうところが都合よくないですか?
 時間、場所の制限。アンプ不可。物販不可。この時点で、僕らとしてはもう致命的です。あとヘブンアーティストは門が狭すぎて。弾き語り系は全部もうアウト、取りませんっていう感じなんです。100%とは言いませんけど、ヘブンアーティストで邦楽を弾き語りしてるひとはまずみたことないです。審査があって、たぶん取る気ないんだと思います。憶測ですけどね。大道芸と、外国系の音楽はとってますけど。

―ではもう少し路上ライブがやりやすくなるとしたら、どういう形がいいと思いますか?
 こないだ池袋のライブハウスの店長さんとお話してきたんですよ。その店長さん的には、今回のことでストリートミュージシャンがいなくなってしまった。よってお客さんがいなくなってしまって凄い打撃をうけた。ホントに死活問題で困ってるから、ちょっと俺と相談したいってことで僕呼ばれて、今度そこでライブさせてもらうんですけど。その人は本当に困ったから、池袋の署の上の人にアプローチしてるみたいなんです。で、そんときも話あったんですけど、例えば規制をユルくしていくんだったら考えられることとして、西口公園を何時から何時まではオッケーにするとか。そういう形であれば現実的にあり得るかもしれない。けど、たとえば西口公園の一角を物販なしで何時から何時までオッケーにしたとして、そこでやりたいというストリートミュージシャンはほとんどいないはずなんですよ。条件が悪い訳ですし。そしたら結局ほかの駅前でやるようになったり、他の町に流れて行ったり、他の時間でもやるようになっていったり、というようなことがきっと起こると思うんです。そういうふうにガッツリ制度を設定したとしても、完全にシロにはならないと思うんですよ。それはもう性質上どうしようもないところかなと思うんですけど。
 柏はストリートミュージシャン申請式になっていて、許可をとった人だけ、アンプを使わないなら演奏できますよってことになってます。だけど、グレーゾーンでアンプ使ってふつうに物販する方もたくさんいるんです。それでまあ一応共存してるわけですよ。だから、仮に池袋の西口だけオッケーにするっていうだけでも「あ、池袋は音楽オッケーな町なんだ」ってイメージはつくかもしれません。そうするとおのずとグレーのレベルが上がるんじゃないかな、と思うんです。僕は路上ライブを完全にシロにするのは無理だと思ってます。別にしなくていいと思う。だけどちょっと「音楽の町だよ」ってうたってる感じになればいい。川崎とか柏みたいになれば、違法ではあっても警察官も優しく見守る、僕らも最低限のマナーを守ってやる、といううまい共存の仕方があるはずだと。実際、川崎とか柏がそうできているように、池袋でもできないことはないんじゃないかなと思います。

―川崎や柏で路上ライブしたことはあります?
 柏はないですけど、川崎は行ったことあります。川崎はかなりゆるいです。警官もほぼ止めないです。すごい黙認ですね。で、かなりの数の人が路上でやってます。もちろん嫌がって通報する人もいるんで、通報入ったら止めにくるんですけど。

―苦情も少ないのかな?
 いや苦情はあると思います。けどもう川崎は音楽の町ってうたってて。たぶん市のほうで、川崎のイメージアップのために「音楽のまち」っていうことで路上ライブをオッケーにしたんですよ。そういう町のイメージついてるので、たぶん通行人とかも川崎は路上でやっていい町なんだねってみんな思ってるんですよね。

―結局意識の問題なのかもしれませんね。
 ほんとに意識の問題なんだと思います。けど川崎で僕がやったときに。通行人に「ここでやっちゃダメなんだよ」って言われたんで、ま、やっぱいるんですよね、嫌がる人は。文句言ってくるひとは。
 池袋もたぶん、徐々に元に戻って行くと思いますよ。僕がもどれる日はだいぶ先だと思いますけど。多分他の方々は年明けぐらいから徐々に戻ってくるんじゃないかなあと思います。

―小関くんのことは、警察による見せしめみたいなところあるよね。
 そういうことです。なんか、僕の仲間が、こないだ池袋の南口の隅っこのほうでちょろっと路上やってたんですって。ホントに隅っこのほうで。そしたら運悪く私服警官に会ってしまったらしくて。「君はこの噂の池袋で何をやってるんだ」って言ってきたらしいです。普通に注意されただけで終わったんですけど。で、警察としてもこんなにネットで騒ぎになるとは思ってなかったらしくて。「僕らも本当は共存したいんだけどね」というようようなことをぼそっと言ったみたいです。俺のブログがこんな風になるとは予想してなかったみたいですね。

―効果てき面だったわけだ。
 てき面なんですけど、ちょっと警察のイメージも悪くなっちゃうじゃないですか。「池袋の警官ひでえ」ってなるじゃないですか、だから警察も「ちょっとやべえな」ってなったと思うんですよ。憶測ですけどね。

―なるほどね。
 だからもしかしたらちょっと緩めていくんじゃないかな、という気がしないでもないです。グレーゾーンで続けていくのでいいと思うんですよ。そういうものっていっぱいあると思う。

(2014年12月22日 JR大塚駅前ロイヤル・ホストにて)


 食事をはさみながら45分ほどのインタビュー。「路上で表現をするってどういうことだろう」という大きな問題を考えるには、まだ入口にすぎません。
 ただひとつ言えるのは彼の真摯さがひしひしと伝わってきたということ。自分の音楽やお客さん、仲間に対してはもちろん、たまたま出会う人や批判する人、警察に対してもまっすぐに受け止めている感じがします。そのうえで自分の考えを時に冷静に、時に熱く語ってくれました。
 歌声を聴いたときの第一印象は繊細な感じだったんだけど、思っていた以上に骨太。最後にそれを本人に伝えたら
「ま、それなりに信念もってやってますから、路上は」
という答が返ってきました。