「勘竹庵」evnc_chckの音楽やそれ以外

音楽の話題が中心になるかもしれませんが日々の雑感など書いていけたらと思っています。

ジャズの和声と旋法(4)

2008-08-09 02:00:43 | 音楽(ジャズ)

前回はハードバップ時代の和声の特徴を述べました。
今回はジャズのある意味で最終形とも言えるモードについて説明いたします。

・モード・ジャズ時代(だいたい1950年代後半から現代(も多分、現役の理論・・・?))
時代を代表するピアニスト
チック・コリア、ハービー・ハンコック、マッコイ・タイナー、ビル・エヴァンス


ハード・バップの特徴は「ラフマニノフかい!」と突っ込みたくなるほどに、経過音やらテンションを混ぜた複雑なコード・アレンジの上に、コンディミ、オルタネ総動員の一大インプロ合戦にありました。
そうなるとクラシックもはだしで逃げ出す、徹底したスケール、フレーズの練習が威力を発揮するのですが、逆に誰がやっても同じじゃないか?という考えを、一部の先進的なジャズ・マンは(マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンス、あとエリック・ドルフィーなんかも)は考えました。
そこでエリック・ドルフィーやオーネット・コールマンのような、現代音楽を研究したジャズ・マンは所謂「フリー・ジャズ」の世界を提示して見せたわけです。しかし私はこちらの世界には入れません。そもそも「アヴァンギャルドな現代音楽」が嫌いです。ハッキリ。1970年代から80年代始めころの山下洋輔や坂田明も、友人達は面白がっていましたが、それはパフォーマンスとしての楽しみ方だったように思います。
すいません。長いですね。
対してマイルス・デイヴィスが「コードの上に最適なスケールをいくつか選択し、その組み合わせでアドリブをする」、というバップの図式に限界を感じ(たんだと思いますが。正直、コルトレーンみたいなテクニシャンでは無いですしね。)、「じゃあそもそも曲の全体、あるいは一部(テーマだけ、とかサビだけとか)を支配するモードを把握して、その範囲でアドリブすればスケールを意識しなくてもいいし 、なんかメロディアスで、バップのハノンみたいなソロよりかっこいいじゃん」と、そこまで考えたかはわかりませんが、とにかくコード&スケール、からトーナリティー&モードに考え方を切り替えました。
彼の「Milestone」という曲はモード・ジャズの先駆的作品という位置付けですが、実験色が強くモードもミクソリディアンだけっぽい、 少なくともバックのメンバーはまだわかってないなぁ・・・。という印象です。キャノンボール・アダレイなんかは完全にバップノリですし。モードの究極はハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスがバックに在籍していた時代の、「マイルス・バンド」にとどめをさすと思います。コルトレーン?え?フリーじゃないの?(って、ヲイ)。
モードになるとピアノのバッキングは定義しようがありません。マイルスと組んでいたハービー・ハンコックやチック・コリアは、所謂「 フローティング・コード」と言われる4度や5度を強調した音使い。対してコルトレーンと組んでいたマッコイ・タイナーは、普通に3度で積み上げた7thコードを、クラシック・ファンが青ざめるような平行移動でバキバキと弾いています。

モードのピアノを聴くならお薦めは、チック・コリアの1stリーダー・アルバムにして最高傑作の「Now He Sings,Now He Sobs」です。
中学生のときにこのアルバムを聴いた衝撃は忘れません。ヨレヨレのジャンパーを着て、げっそり痩せた(涙)若きチック・コリアのポートレイトには、「モーツァルトやベートーヴェン(のクラヴィア曲や室内楽曲)より、すごいものを聴かせちゃる!」という気概が感じ取れます。

チック・コリア ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス+8 - goo 音楽

モードに行き着いたジャズが次に進化したものは?和声的なある種の解放を成し遂げたジャズの理論は?そのあたりを次の回でお話したいと思います。



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