「勘竹庵」evnc_chckの音楽やそれ以外

音楽の話題が中心になるかもしれませんが日々の雑感など書いていけたらと思っています。

ストリートオルガンと笛吹き(2)

2009-04-29 00:03:41 | 音楽(DTM)
今回、E-Windで公開させていただいた新曲はちょっとしたストーリーを考えました。その物語は「ハーメルンの笛吹き男」を元にしています。

「祭りがはじまるよ」

この話が実話をベースにしていることを知ったのは浦沢直樹の人気コミック「MASTERキートン」(絶版がとっても残念!)でした。詳細は書きませんがあのコミックの中で数回取り上げられていたと記憶しています。

「ハーメルンの笛吹き男」のストーリーは有名ですが一応あらすじを書かせていただきます。
ネズミの大量発生で困っていたハーメルン市に色とりどりの衣装を着た道化師のような姿の男が現れ、報酬と引き換えにネズミを退治する約束をします。
男が笛を吹くと町中からネズミが集まり男に従ってぞろぞろ歩き出しました。そして町を出てヴァーザー川まで来るとネズミたちは次々と入水して全滅してしまいました。
しかし町の人々は「川に入ってしまっては本当に退治されたかわからない」とかなんくせをつけて結局報酬を払いませんでした。版によるのか「1匹あたり従量制」で報酬を決めていたため、男の申告に対して「川に入ってしまってはその申告数字が信用できない」といちゃもんをつけるものもありました。
なんにしても男は裏切られたわけですから当然のように町の人々に対して復讐をします。

数日後に現れた笛吹き男は今度は笛で4歳以上の子供たちを集め、子供たちは踊りながら男につき従い町を出てポッペンブルク山の崖で突然姿を消します。目の見えない子と声の出ない子の二人はついて行けなかったため笛吹き男が子供たちを連れて行ってしまったことを証言しました。

これも版によっては目が見えない子と声が出ない子の証言であることから、子供たちの失踪が実は不正確な情報であるかのような書き方のものもあります。

1284年6月26日にハーメルンの子供130人が大量失踪したことは、市の公式記録にも残っているそうで信憑性のある事実と考えられますが、その要因は謎に包まれています。またネズミ退治の話は16世紀になってから追加されたエピソードでそれ以前は無かったそうです。

現在、学者たちから出ている大量失踪の原因として考えられる説は

1.ポッペンブルク山で行われる祭りで事故にあって死んだ。
山の切りたった崖の真下が大きな底なし沼になっていたという事実があり、そのことから祭りで興奮した子供たちが崖の上で危険な行動をして一斉にこの沼に落ちたのでは?という推測です。

2.伝染病にかかり隔離された。
ペストの大流行の時代であり、また「子供たちは踊りながら」という記述がペストによるストレスでの集団性の舞踏性躁病の発生を起こしたのでは?という推測です。
また笛吹き男は隔離を実施した医師か単なる死神の象徴では?という考えです。

3.巡礼または少年十字軍に集団で参加し二度と両親の元へ戻らなかった。
笛吹き男は巡礼のリーダーか新兵の徴募官ではないかと推測されています。

4.東方植民地開拓運動に参加し二度と両親の元へ戻らなかった。
この時代は東方開拓が盛んであったことからの推測です。笛吹き男は植民活動のリーダーと推測されます。

このうち伝染病説は記録が日付まで明確であることから考えにくいと言われています。病気であれば同日に一度に隔離されるとは考えられないからです。
ですから現時点で可能性が高い説は「事故死説」、「巡礼または十字軍従軍説」「植民村開拓説」と考えられているようです。

個人的にはこの物語がかなり悲劇的なものとして伝わっている現実から考えると、「十字軍に従軍した」とか「植民地開拓に向かった」とかいう前向きなものでなく、「事故で大勢が犠牲になった」ことのほうが事実かもしれません。祭りの興奮状態の中、大人の目の届かないところで起きた事故であったため、その責任の所在が明確にできない大人たちがそれを忘れるために少しづつ実在しない「笛吹き男」を作り上げていったのでは無いでしょうか?

現代でも夏の祭りは開放的な気分から若者がはめをはずし、時には事件にまで発展することもあります。そのあたり今も昔も大差無いということですかねぇ・・・。と少し大人の啓蒙的意見を。

ストリートオルガンと笛吹き(1)

2009-04-27 00:01:42 | 音楽(DTM)

ストリート・オルガンは外観の派手な装飾や、ピポピポした可愛らしい音色とは裏腹に「哀愁」や「不気味さ」があるように感じます。
ストリート・オルガンをご存知無い方のために私のつたない知識の範囲でご説明を・・・。

笛(リコーダーやオーボエ)と同じ発音構造のパイプに、ふいごで発生させた空気の流れを通して鳴らす仕組みは「小さなパイプ・オルガン」といったところです。ただ教会や昔の劇場に据えられた巨大なパイプ・オルガンは音の高低や長さのインプットを鍵盤で行います。つまり演奏家がいてその場で発音の命令をするわけです。
対してストリート・オルガンはあらかじめ作っておいたソフト・ウェアを使って発音の命令をします。具体的にはお経のような形に綴じられた「パンチ・カード」や、オルゴールと同じようなドラムを使いメカニカルで行います。
パンチ・カード式のものは長時間の演奏でも可能なためよく目にするようです。
あまり細かいメカニズムはわかりませんが以前中身を観察した感じでは、ふいごから各パイプにエア・チューブが伸びており、そこに空気を送るか遮断するかをパンチ・カードに開いた穴で制御しているようです。穴の位置やカードの送り方向への穴の長さで音の高低と長さが決まる仕組みです。
このパンチ・カードを本体に取り付けられた巻取りギアーにかませることで送り込み、そのギアーは本体の外に取り付けられたレバーを人が回してミシンのように連動させます。
大きな物になると高さが3メートルくらいあってピストンで打楽器を鳴らしたり、外装に取り付けられた操り人形を躍らせたりすことができるのですが、その分ハンドルを一定の速さで回すのもかなりの技術と力が必要です。
すでに1600年代には存在していたそうで1800年代になると大きなものは劇場に据えられ劇伴をしていたそうです。

添付の画像は某テーマパークに展示されているストリート・オルガンのものです。ふいごからパイプに伸びるチューブやパンチ・カードを巻き込むクルマなどが確認できます。
そのテーマパークには工房がありパイプや外装などハードウェア部分の作成やメンテナンスを行っているそうです。しかしパンチ・カード、つまりソフトウェアは国内で製造できる人が存在しないということでした。現在のヴァイオリンやピアノのように国際的な標準仕様が決まっているわけでも無いでしょうから、本体の大きさにあわせて一対一でカードの仕様が決まるんでしょうね。めんどくさそうです。

で、本題ですが例によってE-Windで公開させていただいた新曲はこの「ストリート・オルガン」をイメージして創りました。
とは言ってもあのピコピコ、ブカブカをそのまま再現したのでは無く、木管アンサンブルの編成で一聴するとストリート・オルガンに聴こえるアレンジをしてみました。

「祭りがはじまるよ」

今回は少しストーリーを考えてみました。

中世ヨーロッパのある街でのお話。
正午を告げる中央教会の鐘が鳴るとどこからともなくストリート・オルガンを奏でる老人が現れます。
老人はストリート・オルガンを鳴らしながら叫びます。「祭りがはじまるよ!」。
毎日、石蹴りや落書きぐらいしか遊びの無い子供たちはわらわらと集まってきます。老人は「祭りがはじまるよ!」を繰り返しながらオルガンを引っ張り歩き出します。わくわくしながら後に続く子供たち。やがて老人と子供たちの一行は街はずれの丘に着きますがその後の子供たちの行方は・・・。

そう。元ネタは子供心に「これって何かやばい話なんじゃ・・・」と思って読んだであろう「ハーメルンの笛吹き男」です。一応グリム童話として読んでますが、グリム兄弟がドイツのハーメルンに伝わる民話と言うか伝承をアレンジしたものでそれが1816年のこと。それよりずっと前の1284年にドイツのハーメルンで実際に起こった子供の大量失踪がこの物語のベースです。

長くなったので「ハーメルンの笛吹き男」については次回に書かせていただきます。


(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(最終回)

2009-04-22 00:03:40 | 無駄に深く
童謡の「おつかいありさん」に登場するありさんは急ぎすぎて「こっつんこ」してしまいます。一体何をそんなに急いでいたのでしょうか?
この急いでいた蟻さんが「はたらき蟻」であったと前提を置いた上で、前回までは「はたらき蟻」の分担業務から順次「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証して参りました。しかしながらシステマティックに構成された蟻の社会において、そんなに急ぐ理由も見当たらずこの童謡に込められた謎はわからずじまいの様相を呈しています。

前回は二番の歌詞にある「わすれた わすれた おつかいを」のくだりに着目しつつ、システマティックに役割遂行しているように見える蟻が、実は全体の20%のエリートだけの働きで成り立っている。と言う説を元に蟻さんが忘れたおつかいを解き明かして行きたいと思います。

で、「おつかいありあさん」では蟻同士で頭をぶつけておつかいを忘れたことになっています。これは蟻がときどき触覚でお互いの頭や体を「さわさわ」と触れているのを、「頭をぶつけた」と解釈しているのでしょうか?確かに蟻は視力が弱いので急いでいて頭をぶつける。という「いちご100%」の東条のようなことが起こりそうに思えますが、実際は蟻の体の表面は蝋のような蜜がにじみ出ていて、これを触覚で嗅いで仲間かそうでは無いかを判断しているのです。決して「いそいでこっつんこ」ではありません。

頭をぶつけることの無い蟻が、何故におつかいを忘れたのか?これを解く鍵は外にいる蟻の多くが老齢の蟻である。ということです。
若くてよく働く蟻は巣の中で重要業務に就いています。必然的に老齢で動きの悪い蟻は「おばあさん。中はもういいから外でも回ってて」となるわけです。
そこで結論が出ました。この蟻さんは老齢であったがためにそもそも少し物忘れされるお年頃であったのでは無いでしょうか?ありもしないおつかいを「はて?わしは何をやろうとしておったのかのぅ・・・」と忘れてしまったかのように振舞う。少し悲しくおちゃめなおばあちゃん蟻のある日の姿をかわいらしく表現した名作であったのです。

(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(6)

2009-04-19 00:12:59 | 無駄に深く
童謡の「おつかいありさん」に登場するありさんは急ぎすぎて「こっつんこ」してしまいます。一体何をそんなに急いでいたのでしょうか?
この急いでいた蟻さんが「はたらき蟻」であったと前提を置いた上で、前回までは「はたらき蟻」の分担業務から順次「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証して参りました。しかしながらシステマティックに構成された蟻の社会において、そんなに急ぐ理由も見当たらずこの童謡に込められた謎はわからずじまいの様相を呈しています。

ここでふと二番の歌詞に目が行きました。「わすれた わすれた おつかいを」のくだりです。おつかいを忘れる?そんなことが起こるのでしょうか?

蟻は1つの巣に1匹の女王蟻と残り数百匹の雌のはたらき蟻がいます。雄は精子を作って女王に一度に全部抜かれる以外に大した役割も無いのでそれほど生まれてきません。先に書かせていただいたとおり女王は自分で精子を溜めておいて卵子に受精させたりさせなかったりして雌雄を産み分けることができるため、このようないびつな男女比になっています。
そしてこの「数百匹」もいるはたらき蟻はいろいろな役割を担って、日々もくもくと働いているのですが、実は六本脚をわしゃわしゃさせて動き回る蟻の、全体の80%は大して働いていないという説があります。パレート説と言われる有名な説です。そしてこの20%だけしかいない働き者のエリートはたらき蟻は主に巣の中で「女王の世話」「卵と幼虫の世話」「巣の拡張」の重要業務を担っています。
逆に言えば外に出てうろちょろしているその他大勢はたらき蟻は、餌を運ぶとかゴミを捨てるとかの単純肉体労働を担当し、しかも中にはただうろつくだけでその日の収穫も無いまま巣に帰ってくるのです。
朝9時ぎりぎりに出社して来て、ちょこっとメールを読んでタバコを一服してコーヒーを飲んで、「お客さんとこ行ってきまぁす」と出て行って、日がな一日公園で寝ているダメ社員のようですねぇ・・・(涙。
えぇっと何の話でしたっけ?私の仕事ぶりでは無くて、外でうろつく蟻の話でした。

やや脱線しつつもこの二番の歌詞を、藁をも掴む気持で検証して「おつかいありさん」に込められた謎を結論付けたいと思います。

(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(5)

2009-04-16 00:03:02 | 無駄に深く
童謡の「おつかいありさん」に登場するありさんは急ぎすぎて「こっつんこ」してしまいます。一体何をそんなに急いでいたのでしょうか?
この急いでいた蟻さんが「はたらき蟻」であったと前提を置いた上で、前回に引き続き「はたらき蟻」の分担業務から順次「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証していきます。

はたらき蟻の分担する仕事は
・女王の世話(後宮の女官)
・卵と幼虫の世話(育児)
・餌の運搬(調達、保管)
・巣の拡張(土木作業)
・餌の食べかすを巣から運ぶ(廃棄作業)
・その他情報収集と伝達(諜報・防衛)
がメイン業務ですがこのうち巣の外で行う仕事は「餌の調達」「餌の食べかすの廃棄」「その他情報収集と伝達」です。

前回および前々回では「餌の調達」「餌の食べかすの廃棄」で急いでいたと仮定して検証しましたが、どうもそうでは無いという結論となりました。

それではこの蟻さんは国家(巣)の存亡に関わるような超重要情報をキャッチし、仲間に伝える「その他情報収集と伝達」を遂行していたのでしょうか?

蟻が社会的でしかも巣を単位に餌を調達するためのテリトリーを持つ昆虫であることは先ほどから述べさせていただいているのですが、それ故に巣に危険が及ぶような事態を把握すると、迅速にその情報は仲間たちに伝える能力を持っています。先ほど「餌の調達」の際にも書かせていただいていますが、蟻は会話をすることができます。とは言っても人間のように音声で情報伝達をするのではありません。また地下生活をしている関係で視力も発達しておらずむしろ強度の近視だと考えられています。

では何で会話をするのかといいますとここでもやはり「臭い」を使います。

生き物は多かれ少なかれ何らかの「香り」を使うコミュニケーション手段があります。人間もそれほど重要なファクターではありませんが、例えばタバコの香りはお父さんを思い出す。とか、味噌汁の香りで故郷の母をまぶたに浮かべる。とか、電車で隣に立つ女子高生の香りで激しく欲・・・ゲフンゲフン。し、失礼しました。私はそんなんじゃありませんから。別に若い娘だったらいいとかじゃないんだからね!

私の性癖はともかく蟻は体からいろいろな種類の臭いを持つ「フェロモン」を出します。そしてそのフェロモンの臭いを他の蟻が触覚で感知することで、情報の伝達をしているのです。「自分が仲間であること」「餌があること」「敵などの危険が近づいていること」などを伝達することできると考えられています。こう考えると「重要情報」を持って巣に急ぐ蟻の切迫した様子は実に説得力のある「あんまりいそいで」の根拠となりそうです。

ところがこれも実体としてはそうでもありません。

蟻は嗅覚を使って外部環境を認識する以上は、当然にその嗅覚は発達しており、「危険」を報せる臭いは10メートル離れていても感じ取ることができます。つまり急いで巣に戻って情報伝達する必要は無いため、これも無い!という結論になってしまいます。

あぁ・・・一体この蟻さんは何をそれほど急いでいたのでしょう?結局、関根栄一氏が想定していた「ありさんのおつかい」はわからずじまいなのか!

やや八方塞りですが、何とか「おつかいありさん」が急いでいた理由を解明していきたいと思います。

(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(4)

2009-04-14 00:06:08 | 無駄に深く
童謡の「おつかいありさん」に登場するありさんは急ぎすぎて「こっつんこ」してしまいます。一体何をそんなに急いでいたのでしょうか?
この急いでいた蟻さんが「はたらき蟻」であったと前提を置いた上で、今回も「はたらき蟻」の分担業務から順次「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証していきます。

はたらき蟻の分担する仕事は
・女王の世話(後宮の女官)
・卵と幼虫の世話(育児)
・餌の運搬(調達、保管)
・巣の拡張(土木作業)
・餌の食べかすを巣から運ぶ(廃棄作業)
・その他情報収集と伝達(諜報・防衛)
がメイン業務ですがこのうち巣の外で行う仕事は「餌の調達」「餌の食べかすの廃棄」「その他情報収集と伝達」です。

前回は「餌の調達」で急いでいたと仮定して検証しましたが、どうもそうでは無いという結論となりました。

では次に考えられるものとしてこの蟻さん、「餌の食べかすの廃棄」を急いで業務遂行中だったのでしょうか?

蟻は非常に綺麗好きな昆虫で巣の中にある餌が古くなって腐り始めると、すぐに巣穴から外へ出して決まった廃棄場へ運び、更にはご丁寧に土や砂を被せてしまいます。最終処分場の廃棄物を埋め立てているようで、うまく活用すればもう一つくらい夢の島ができるんじゃないかと思うほどです。この行動は実際は蟻の重要な外部環境認識の機能が、「嗅覚」によるものであるからだと考えられています。つまりその外部環境認識を行うには常に周りの「臭い」を正常に保つ必要があるため、少しでも腐敗臭を発し始めたものは埋め立ててしまうのでは無いか?というわけです。
この状況の中で急ぐ理由は・・・。あまり考えられるものはございませんが、蟻はきわめて高度な社会性を持って生活しています。そのため常にテリトリーとその中での仲間の存在を意識しています。ただしそれは感情的なものでは無く、あくまで自分の「巣」を守るための本能的なものであります。そのため同じ仲間の死骸があるとそれもゴミと同様に廃棄場に捨てる行動が見られます。まるで埋葬しているように見えますが現実は大切な「臭い」情報をかく乱する1つの要因として、腐敗した仲間の死骸を廃棄しているに過ぎません。
そこでこの蟻さんの属する巣で何か大きなクライシスが発生、例えば大雨で巣に水が流れ込んだのでは?と推測します。
そこで仲間が一瞬で大量死したと考えると一斉に死骸は腐敗臭を放ち始めますので、こりゃ大慌てで死骸を廃棄しなくてはいけません。

しかし実際は蟻の巣は高度な「水害対策」が図られています。
まず巣穴の壁を塗り固めて水が通らないようにしています。また雨が降るとすぐに巣の入り口を土で塞いで巣の中の空気の圧力で水が入って来ないようにします。もちろん万全では無いのですが水に浸かってもせいぜい崩れた壁の土を外に運び出す手間ぐらいで済むようです。これも無い!という結論です。

次回も引き続き「はたらき蟻」の担当業務から、「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証していきます。

みんなのモーツァルト

2009-04-11 01:22:01 | 音楽(クラシック)

こんな記事を興味深く読みました。

ゴーゴリはどちらの国の作家? 露、ウクライナが論争
4月10日10時35分

今月1日に生誕200年を迎えた作家のニコライ・ゴーゴリ(1809~52年)について、ロシアとウクライナの間で「どちらの国の作家か」をめぐり論争が起きている。年始の“天然ガス紛争”に続く悶着(もんちやく)の行方はいかに。

 ゴーゴリは当時、ロシア帝国の一部だったウクライナに生まれ育ったが、首都ペテルブルクに移ってロシア語で執筆したから通常は「ロシアの作家」とみなされる。ただ、ゴーゴリは「検察官」「外套」といった風刺的作品の一方、ウクライナの農村を舞台にした「ディカーニカ近郊夜話」など“ウクライナもの”も著している。ロシアとウクライナの国家・民族的起源は同じだが、19世紀前半にはウクライナの民族意識も高まっていた。

 そこで、ロシア離れを進めたいウクライナの親欧米政権はゴーゴリを「ウクライナの作家」として定着させようと躍起になっている。各地でロシアに対抗して生誕200年にちなんだ行事が盛大に行われ、ユシチェンコ大統領は「ゴーゴリは疑いなくウクライナのものだ。彼はロシア語で書いたがウクライナ語で思索していた」などと語った。政府はさらにゴーゴリの全作品をウクライナ語に翻訳することを計画し、ロシアの文学者から「作風を損なう」などと強い反発が出ている。

 他方、ロシアでもモスクワに初のゴーゴリ博物館が開館したほか、生誕200年を記念してウクライナのコサック(農奴制を逃れて辺境に住み着いた人々)を描いた「タラス・ブリバ」が国営ロシア・テレビの出資で映画化された。この映画については、ロシア民族主義やスラブ・欧州の対立が過度に演出されているとして、多くの識者が「プロパガンダ(政治宣伝)だ」と酷評している。

 【産経新聞】

ロシアとウクライナの政治的な確執は当事者同士のみならず、所謂東西の思惑までからんでしまい正直私のような世間知らずにはどうにもコメントも理解もできないのですが、いずれにしても欧州や亜細亜の大陸国ように国境を接した国同士、民族が同じでも宗教や過去の従属関係など言い出せばきりが無いものです。

ここまで実質的に紛争ギリギリの状態では無いのですが、過去にも似たような事例があったことを思い出しました。

もうかれこれ5、6年前のことですが、ドイツの国営第二テレビが視聴者参加型アンケートで「過去から現在までで最も偉大なドイツ人は?」というのを行いました。
で、そのアンケート募集の文言に「・・・例えばモーツァルトやフロイトのような・・・云々」というものがあったため、これがかつてはともに第二次大戦を戦ったお隣の国オーストリア人の神経を逆撫でしました。

オーストリアに観光しよう!とか考えてガイドブックなどを読まれると、オーストリアの紹介に必ずと言っていいほど書かれているオーストリアの有名人は、
「ザルツブルクで生まれウィーンで活躍した神童モーツァルト・・・」
「ウィーンで活躍した心理学者フロイト・・・」
では無いでしょうか。他にはワルツ王のシュトラウス親子や画家のクリムト、ココシュカあたりが見られますかね・・・。
とにかくドイツ第二テレビが例として挙げた「偉大なるドイツ人」は、我々も含めて一般にはオーストリア人だと思っている人物であるわけです。

ドイツ第二テレビがこう解釈する根拠はモーツァルトの生地ザルツブルクは1756年(モーツァルトの生年)当時はドイツ領であった。またフロイトは現チェコのモラヴィア地方出身でここも当時はドイツ領だった。だからドイツ人だ。と言う事です。

ザルツブルクは7世紀ころまではゲルマン民族に支配された土地でしたが、バイエルン人の東方植民政策の中でカソリック教の布教を進めるローマ・カソリック教会と思惑が一致し、司教国としてバイエルンがカソリック教会に寄進することで実質の東方植民を進めたのです。
その後もバイエルンと司教国はともにザルツブルクの領地拡大をはかり大司教国として繁栄していきます。

ちなみに映画アマデウスの冒頭の初めてモーツァルトが登場するシーンで、パトロンと喧嘩したモーツァルトがわざとパトロンに尻を向けてお辞儀していますが、あのパトロンの爺さんがザルツブルク大司教ヒエロニュムス・コロレドです。なんで王様や貴族では無く宗教家の爺さんに雇われているのかわからなかった方もこれですっきりですね。

で、この段階ではザルツブルクは実質バイエルンのもの。つまりドイツだと言うことが先に紹介した「モーツァルトの生地ザルツブルクは1756年当時はドイツ領であった。」ことの根拠なのだと思います。

結局、ザルツブルクは1800年代の始めにフランス革命の余波でフランスに占領され、ウィーンに亡命していたヒエロニュムス・コロレド大司教は領有権を放棄します。その後もオーストリアのものになったりまたバイエルンのものになったりを繰り返しますが、1816年、映画「会議は踊る」で有名なウィーン会議においてザルツブルクはオーストリアに併合されます。
ちなみにウイーン会議でオーストリア外相として活躍したメッテルニヒが、元々はドイツ生まれでオーストリアに亡命した人物なのは皮肉です。

モーツァルトは生地こそザルツブルクですが幼少のころからステージ・パパに連れられて、ヨーロッパ中を演奏旅行して回ります。さすがに「天才少年」では売れなくなってからはザルツブルクで大司教に仕えますが、すぐに喧嘩して25歳でウィーンに職探しに飛び出してしまい、そのまま35歳で没します。
ある意味、真のコスモポリタンであったモーツァルトを今更「ドイツか?オーストリアか?」の議論、意味があるのか?みなさんはどう感じられますか?

私の考えですか?まぁモーツァルト・クーゲルンがおいしいからいいんじゃないすか・・・ってワケわかんねぇ!

ドイツ人にしてみればそんなことより、オーストリアで生まれドイツでナチス党を創設した20世紀最大の虐殺者を返すからモーツァルトを返せ。といったところでしょうか・・・。

モーツァルトの曲の中でも特に好きな曲です。
ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K.537《戴冠式》


(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(3)

2009-04-09 00:07:39 | 無駄に深く
童謡の「おつかいありさん」に登場するありさんは急ぎすぎて「こっつんこ」してしまいます。一体何をそんなに急いでいたのでしょうか?
この急いでいた蟻さんが「はたらき蟻」であったと前提を置いた上で、今回は「はたらき蟻」の分担業務から順次「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証していきます。

はたらき蟻の分担する仕事は
・女王の世話(後宮の女官)
・卵と幼虫の世話(育児)
・餌の運搬(調達、保管)
・巣の拡張(土木作業)
・餌の食べかすを巣から運ぶ(廃棄作業)
・その他情報収集と伝達(諜報・防衛)
がメイン業務ですがこのうち巣の外で行う仕事は「餌の調達」「餌の食べかすの廃棄」「その他情報収集と伝達」です。

まずはこの蟻さんは餌を調達する「おつかい」の最中であったと想定すると、何ゆえそんなに急いでいたのでしょうか?
蟻は巣の外で餌を発見するとその場で一旦腹嚢に飲み込んで巣まで運ぶか、そのまま強力な顎でくわえて引きずって巣まで運ぶか、やはりその顎で刻んで少しづつ運ぶかします。その他に、仲間を呼び整然とした行列を作って共同作業で運ぶ場合があります。これは触覚で蟻同士が会話して「餌を発見した」情報を伝達しているわけですが、道を迷わないのは最初に餌のある場所に到達したはたらき蟻から地面についた固有のフェロモンの臭いを伝っていると考えられています。ちなみに昔は道を記憶しているのではないかと考えられていたこともありました。

この蟻さんは恐らく「大きくて食べがいのある餌」を発見し、とても単独では運べ無いと判断したため、その情報を仲間に報告する途上であったのでしょうか?しかしこの場合はそれほど急ぐ話でも無いように感じます。例えばその餌を他の巣の蟻も狙っていたため「時ハ金ナリ」とばかりに急いでいたのでしょうか?

蟻は巣から10メートルを超える範囲をテリトリーとして餌の調達をします。そのテリトリーを外れて他の巣のテリトリーに入ると、すぐれた嗅覚で他の巣の蟻(つまりそのシマをしめている女王の配下)がたちまちやって来て、壮絶な陣取りバトルが始まります。蟻を飼育するとわかるのですがうっかり他の巣の蟻を入れてしまうと、まさに死闘、殺し合いになりジェノサイド状態になります。
少しくどくなりましたが他所のテリトリーで餌の調達などしようものなら、上記のような結果を招くわけですから「発見した極上の餌」の情報を「急いで伝える」ケースは起こり得ないと思われます。これは無い!という結論です。

次回では更に「はたらき蟻」の担当業務から、「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証していきます。

(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(2)

2009-04-06 00:03:18 | 無駄に深く
童謡の「おつかいありさん」に登場するありさんは急ぎすぎて「こっつんこ」してしまいます。一体何をそんなに急いでいたのでしょうか?
今回はまず蟻の社会構造とその社会における「はたらき蟻」について認識を深めたいと思います。

蟻は実に社会性を持って生きている昆虫です。繁殖期になると処女女王蟻は雄とともに空中で交尾します。空中で交尾するのはなんかロマンティックと言いますか、企画物のAVでありそうなシテュエーションと言いますか・・・ゴホゴホ。それはともかく女王蟻はこの1回の交尾で相方の雄の精子をすべて精子嚢に溜めてしまいます。つまり雄はここで一生分の精子を抜かれてしまうわけで、この後は力尽きて死んでしまうのです。
生涯一度の交尾にすべてを燃焼させる!「生涯現役じゃよ。かかか・・・」と自慢するご老人には信じられないし、元々そんなに好きでもない(私のような・・・ダメだろそれは)男性から見ればめんどくさくなくていいようにも思いますが、いずれにしても女王は交尾を終えると羽が無くなり巣を作り排卵を始めます。
女王は嚢に溜めてある精子を使い驚くことに「有精卵」と「無精卵」を産み分けることができ、「有精卵」はすべて雌となります。ちなみに「無精卵」は孵化すると雄になります。このあたり必ず受精しないと子供が産めない人間とは大きく違います。
話がそれましたが、雌のうちの一匹がいわゆる「ローヤルゼリー」を餌として女王蟻になるのです。つまり他の雌は無条件に「はたらき蟻」か「兵隊あり」となりますが、もし女王が死亡したりすると他の雌蟻が産卵をすることもあるようです。しかし殆どは女王蟻が不在になった時点ではたらき蟻が怠け始めて、結果として働き手のいないその家族は崩壊するようです。

歌詞に登場する蟻さんがはたらき蟻であることはほぼ間違い無いとして、そのおつかいとは?
はたらき蟻の分担する仕事は
・女王の世話(後宮の女官)
・卵と幼虫の世話(育児)
・餌の運搬(調達、保管)
・巣の拡張(土木作業)
・餌の食べかすを巣から運ぶ(廃棄作業)
・その他情報収集と伝達(諜報・防衛)
がメイン業務ですがこのうち巣の外で行う仕事は「餌の調達」「餌の食べかすの廃棄」「その他情報収集と伝達」です。

次回では「はたらき蟻」の担当業務から、「おつかいありさん」が急いでいた理由を検証していきます。

(暇な)大人のための童謡講座 「おつかいありさん」は何をそんなに急いでいたか?(1)

2009-04-04 01:45:39 | 無駄に深く
部屋を片付けていたら息子が赤ん坊から幼稚園くらいにかけて就寝時に聴いていた「童謡」のCDが出て参りました。
懐かしいので眺めておりますとふと「おつかいありさん」が収録されていることに気づきました。

「おつかいありさん」

関根栄一作詞
團伊玖磨作曲

あんまりいそいで
こっつんこ
ありさんと ありさんと
こっつんこ
あっちいって ちょん ちょん
こっちきて
ちょん

あいたたごめんよ
そのひょうし
わすれた わすれた
おつかいを
あっちいって ちょん ちょん
こっちきて
ちょん


この童謡はとてもかわいらしい歌詞だと思います。子供のころに公園で遊ぶ友達がいないか探しているときなど、ふと見た足元でいかにも「忙しい忙しい!」と働き回る蟻を飽かず見ていたことが思い出されます。巣穴の付近などは出入りする蟻となんか意味があるのか無いのかわからないままウロウロする蟻たちが入り乱れ、よくこっつんこしないもんだと思ってしまいます。
ところでこの童謡に登場する蟻さんはなにをそんなに急いでいたんでしょう?歌詞の一番だけでは「いそいでこっつんこ」だけしかわかりませんが、二番で実は「おつかい」に行くところであったことがわかります。巣の外にいたこととおつかいがあったことからこの蟻は「女王蟻」とか「兵隊蟻」では無く、「はたらき蟻」であったと推測されます。

次回では蟻の社会の構造を認識しこの「蟻さん」が急いでいた理由を検証していきます。