怪獣や特撮(懐かしい。今じゃVFXですか?人情味の無い言葉・・・)と聞くとうるさいevnc_chckです。すでに持っているソフトもございますが、全巻購入で鼻息も荒く意気込んで、すでに定期購読の申し込みまでしてしまっております。
初代ゴジラから始まり、つい最近まで邦画観客動員数歴代一位であった「キングコング対ゴジラ」や、少しマイナーなところでは「大怪獣バラン」や「妖星ゴラス」。ラストの核戦争シーンの悲壮さではハリウッド映画のやんわりとした表現なぞおととい来やがれ!の「世界大戦争」などなど・・・。
ところで当のムックには東宝特撮映画の年表が記載されているのですが、何故か1973年公開の「日本沈没」と、1974公開の「エスパイ」の間に一本、重要な映画の収録が抜けています。
それは1974年公開の「ノストラダムスの大予言」という作品です。
1970年代はオカルト・ブームが起こり、悪魔や幽霊など超常現象的なものに人々の興味が集中しました。
ハリウッド映画の「エクソシスト」はショッキングな内容だけで無く、論理的なストーリー展開や登場する役者たちも名優を起用したことで大ヒット。多くの亜流が生まれ、大抵は換骨奪胎であったり、単に気持ち悪いだけであったりしながらも、いくつかは名作として現在も鑑賞され続けています。
邦画は1977年の大林宣彦監督の、どこが巨匠やね映画「ハウス」ぐらいしかオカルト映画的な作品は無いように記憶していますが、そんな中で中世フランスの詩人で医師で占星術師である「ミシェル・ノストラダムス」の、四行の詩で綴られた預言書を世紀の大預言書としてムルヤリ喧伝した、「ノストラダムスの大予言」という胡散臭い書籍の内容を元に、何と東宝製作による大叙事詩的な怪奇ロマン映画が1974年に公開されました。
前年に公開した「日本沈没」が空前のヒットを記録し、日本でもアメリカに負けないパニック映画が(10分の1くらいの予算で)創れる!と多分思っちゃったであろう東宝特撮スタッフは、今度は傲慢に地球の自然環境を蹂躙する人類に、滅亡への警鐘を打ち鳴らような映像を実現しちゃる!と大いなる気概でもって挑んだことでしょう。
映画自体は殆ど「日本沈没」のヒットの勢いと、何故かバカ売れした原作の勢いに乗っかってヒットしたのですが、公開の際に起こった多くのエピソードから、今や伝説のトンデモ映画として語り継がれています。
あらすじはあるような無いような作品です。
まず江戸時代の場面から始まりますが、何を研究しているかわからない江戸時代の学者(丹波哲郎)が登場。どうやら彼はノストラダムスの預言書を研究しているのですが、人心をいたずらに恐怖に陥れたか何かで幕府に捕まります。
その後もこの江戸時代の学者の子孫が、預言書に基づいて第二次世界大戦の日本敗戦をとなえて特高につかまる。
でここで世界の冨田の気色悪いヘニャヘニャとしたシンセ音楽が流れ、時代は現代へと一気に飛びます。
さっきの江戸の学者とそっくりな現代の学者「西山良玄(丹波哲郎)」。つまり子孫なんですが、彼は西山環境研究所の所長として大気汚染などの環境破壊の研究をしており、このままでは先祖が研究していた「ノストラダムスの預言」のとおり人類は「恐怖の大王」により滅亡してしまう。と訴えていますが、糾弾される企業などからはいやがらせもされて前途多難な啓蒙活動です。
公害を垂れ流す企業の上空を勝手にセスナで調査したり、それを注意に来た警官に「企業のイヌ!」と罵倒したり、果ては家族と湯豆腐を食べながら、「しかしこの豆腐には危険な発ガン物質が使われている」とか、何か空気の読めない発言をしている姿を見ると、煙たがられるのもある程度は理解できるかなぁ・・・。
で、こっからはもういろいろなエピソードが現れては次!という感じでどう説明していいかわかりません。
現在と違ってまだゴミの山であった夢の島で、子犬くらいあるナメクジがウジャウジャと現れて焼却処理される。
西山の娘まり子(由美かおる。もの凄い大根ぶりは必見!風呂でも入ってろ!)の彼氏である、カメラマンの中川(黒沢年男)の故郷である漁村では赤潮の大量発生で海の幸が全滅。
漁村の危機の中、夜中に海岸で未来への不安を語り合ううちに感極まったか?漁船の中で思わずセクースするまり子と中川(必然性ゼロ)。かろうじてバスト・トップが見える由美かおるですが、この映画って文部省(当時)推薦であったはず・・・。
各地で異常なジャンプ力や計算能力を持つ「ミュータント」的な子供が現れ、逆に畸形児の出産率が高まる。
エジプトの砂漠に雪が降り、東京上空は大気汚染で空に地上の景色が反射し、ニューギニアの原住民が放射能の影響で食人族になり調査隊に射殺される・・・。
まり子と中川は砂丘でデート。すると突然、何の前置きも無くまり子は踊り出す・・・。バカさ加減は必見!風呂でも入ってろ!
最後には核戦争でほぼ滅亡した人類の後に、ウルトラセブンで登場したバド星人と禁断のスペル星人を、足して2で割ったような「新人類」が登場する・・・。
どうですか?わかります?
結局、このニューギニアの食人族と、最後のドロドロのメイクを施した新人類の描写が、被爆者団体から「被爆者を怪物扱いしている」と抗議され、1974年12月25日に東宝株式会社、株式会社東宝映画、東宝映像株式会社の連名で主要新聞紙上に「お詫び」が掲載された上で、抗議の対象となった場面はカットされて、それでも公開は継続されました。
その後この作品はTVで一度放映されたものの、ビデオ化もDVD化もされることなく、幻の作品となってしまいました。
実際は海外ではDVD化されており、私もとあるルートで購入いたしました。割と簡単に入手できたりする情報化時代ではあります。
今となっては東宝のこの処置が正しかったのか、単に臭いものには蓋的なありがちな話しとするべきなのか、私には判断できません。
しかしややヤコペッティ的な扇情さはあるにせよ、エンタティメントの世界で大真面目に環境問題に取り組んだ姿勢はもう少し高く評価されてもいいのでは無いか?と思ったりします。