耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

“君が代”「不起立」を闘う“根津公子”さんの『日記』を読む

2009-06-17 09:18:53 | Weblog
 まず、反吐の出そうな次の映像をご覧ください。

 「傲岸不遜」:http://www.youtube.com/watch?v=PwGbfMoCuHU

 この品性下劣な石原慎太郎都知事のもとで、「国粋教育」の見せしめに不当弾圧を受ける多数の教員がいる。その象徴的存在の“根津公子”さんの日記を読んでみよう。わが国がどのように毒されているかが了解できる。この毒は子どもたちの未来におよぶ。いま、「良心の自由」という“毒消し”が求められているのだ。

 
 百年前、ドイツ法学者・ルードルフ・フォン・イェーリングは「権利=法の目標は平和であり、そのための手段は闘争である。…権利=法にとって闘争が不要になることはない。権利=法の生命は闘争である。諸国民の闘争、国家権力の闘争、諸身分の闘争、諸個人の闘争である。
 世界中のすべての権利=法は闘い取られたものである。」(『権利のための闘争』)と言ったが、根津さんをはじめ都教委と闘う人々はこの言葉の実践者である。

 根津さん、がんばれ!


『根津公子さんの停職「出勤」日記 9』  ~『レイバーネット』より

・6月9日(火)

 あきる野学園に。3回続けてあきる野学園の「出勤」日に雨だったので、2週間前に都庁前で配ったチラシを今朝やっと同僚たちに配った。今日は一日中曇りの非常に過ごしやすい気候だった。

 ご近所にお住まいとおっしゃる60代と思われる男性と出会った。プラカードの前で立ち止まり、「いつのことですか」と聞いてこられた。「今はマスコミで取り上げていないから」とこの件は過去のことと思われていたらしい。土肥校長の提訴のニュースから「君が代」処分まで、今まさしく「戦前」の学校の現状を説明した。「停職6ヶ月はひどいよね。生活厳しいでしょう。がんばってください」。優しい声だった。

 今日も学外学習の子供たちを見送り出迎え、スクールバスのかたと話をし、ゆったりした時を過ごした。


・6月10日(水)

 南大沢学園特別支援学校に。今年は南大沢に「出勤」すると、必ず晴れて暑くなる。今日も一日中曇りという予報だったのに、途中から晴れてきて、蒸し暑い。校外学習に行き来する子どもたちの中には、湯気を出している子もいた。

 今朝、高等部の一人の生徒が、プラカードを見てしばらく歩を止めていた。「お話しするの初めてよね。これ、私のことって、知っていた?」と話しかけると、「それは知っていたけれど、どういうことかわからなかった。どういうことかなと思って」。そこで少しばかり説明した。「わかりました。がんばってください」と言い、頭をぴょこんと下げて、中に入っていった。

 お子さんを送ってこられた A さんのお母さんが、「まだまだ解決はできないんですか」と声をかけてくださった。「あの都知事では、まず無理でしょうね」と答えると、「石原都知事は、福祉も切り捨てるし、早く辞めていただきたいですね」とおっしゃる。早朝から来てくださった御近所の S さんと、「私たちの周りに石原都知事を支持する人はいないよね。どこに支持する人がいるんだろうか」という話になった。

 S さんが帰られ、一人読書をしていると、頭の上で声がした。昨年知り合ったご近所の女性だった。しばらく、話し込んで行かれた。

 Sa さんも来てくれた。

(中略)


・6月13日(土)

 解雇をさせない会の2009総会と講演「抵抗の火は消せない! 新たな『皇民化教育』にどう立ち向かうか?」を開催。講演は、山田昭次さんの「関東大震災時の朝鮮人虐殺と秋田雨雀」。自警団に参加し、朝鮮人虐殺に加わっていった当時の人たちの、進んで国家のために身をささげるように手なづけられた国民意識について指摘した秋田について。

「お前のやったすべてのことはお前の身になって帰ってくるのを知らないのか?/お前の敵はお前の迷信の中に巣くっているのを知らないのか?
市民よ!/征服と屈従と野蛮と無反省を美徳として教えたのは誰だ
市民よ!/お前の敵は果たして誰かよく見よ!/お前は何を血迷っているのだ?」

 自身の中に巣くう迷信あるいは世間と向き合うこと、これは今日的問題、今の私たちの問題だ。

 続いて昨年、今年の「君が代」不起立教員であるDさん、Eさん、近藤順一さんが思いを語られた。Dさんは生徒との関係性の中で、「生徒に嘘はつけない」とおっしゃる。Eさんは、不起立は団塊の世代がいなくなってからと先延ばしにしてきたが、今年「主任教諭」が導入され、学校がいよいよめちゃめちゃにされる中、処分を受ける不起立を選択されたとおっしゃる。お二人の話を伺うのは、初めて。とっても共感した。

 名古屋の小野政美さんから、当地で集会をするので「気持ちで参加。気持ちは参加」と電話があり、メッセージをいただいた。私(たち)を支えてくれる。

 以下、一部割愛して掲載する。


ひるまず、あきらめず、しなやかに
~「河原井さん根津さんらの「君が代」解雇させない会」2009総会へのアピール~
2009.6.13 小野政美(愛知・小学校・「再任用」教員)

思想・信条・良心の自由を蹂躙する「日の丸・君が代」強制に反対する人々がいる
「日の丸・君が代」で処分された全国の人々がいる
そして、日本社会で自由と平等の抑圧に抵抗する人々がいる
それらの人々をつなぎ、さまざまな場で、
あきらめず、ひるまず、しなやかに、多彩に闘い続ける人々がいる
それらの多くの人々に、闘う勇気と確信を送るかけがえのない闘いがある。
それが、根津さん河原井さんを解雇させないという闘い。
合言葉は、二人の著書。

河原井純子『学校は雑木林』
根津公子『希望は生徒』

2008年3月31日の雨の朝、
東京・八王子・南大沢学園養護学校前の光景を僕は忘れない
「やったぞ~!」「かったぞ~!」「この雨は天のうれし涙だア!」
予想に反しての都教委の処分内容に、思わず泣き叫んでいた僕たち。

誰彼と言わず泣きじゃくり、抱き合って喜び合ったあの雨の朝の南大沢養護学校校門前。
そして、一年後、
2009年3月31日、水道橋、東京都研修センター前での処分発令の日のこと。

2008年3月31日の雨の朝、
僕は、マイクで叫んでいた。
「全国の人々に伝えます。
都教委は、根津さんを免職にすることが出来ませんでした。
根津さんは、都教委に勝ちました。
『君が代』不服従・不起立の闘いは、今日から新しい段階に入りました。
『勝って兜の緒を締めよ』の言葉通り、
気を許さず、粘り強く闘い続けていきましょう」

「君が代」斉唱時の不起立での6ヶ月定職は、決して喜ぶべきことではない。
都教委が宣言予告していたように、誰もがそう思いこんでいたように、
根津さんへの停職6ヶ月処分の次に来るのは免職しかない。

僕もまた、そう思い込んでいた。
だが、根津さんだけを他の処分者と分離し、
勤務先養護学校に出向いて処分発令するという姑息な手段を弄した都教委として
もなお、根津さんを「見せしめ免職」にできなかった。

 なぜ都教委は根津さんを免職に出来なかったのか。
それは、何よりも、「君が代」不起立で、
子どもたちの人権と教員の教育の自由・思想良心の自由を守り抜くために、
「不起立」という表現手段で抵抗する教員を免職する根拠がどこにもないことである。

同時に、全国各地で、そして、いくつかの外国から、
根津さんへの「君が代」免職を許すな!と、
電話・FAX・メール・署名という方法で、
あるいは、僕も何回か同行した、都教委への出向いての連日の要請で、
あるいは、集会や学習会で、
あるいは、裁判の傍聴で、
あるいは、「『君が代』不起立」や「あきらめない」の映画会で、
新聞への意見広告で……、

根津さん河原井さんの不服従・抵抗・闘いに連帯・支援する、
文字通りの草の根からの多くの良心的な人々による、
多様で多彩な活動があったからに違いない。

もしも、
根津さんが、河原井さんが、
子どもたちとともに生きる現場で、
自分の生きている存在のすべてをかけた不屈の抵抗・闘いを続けなかったとしたら……、根津さん河原井さんの抵抗・闘いに、誰も連帯・支援の行動を起こさなかったとしたら……、もしも、連帯・支援の行動が、大きなうねりのように広がらなかったら……、
大方の予想通り、都教委の処分は、
根津さん免職しかなかったであろう。

「(03年)10.23通達」以来、
423名の処分(2009.5.29現在)を発令し続けてきた都教委をして、
根津さん河原井さんを免職解雇することが出来なかった。

小学校現場勤務31年間、
ささやかに、「君が代・日の丸」不服従の抵抗を続けてきた。
根津さん河原井さんの不服従・不起立に連帯することはもちろんとして、
僕の出来る、僕が当然しなければならない、
支援というより、根津さんとの連帯のささやかな行動。

 (中略)

根津さん、河原井さんたちに繫がる連帯・支援の闘いの列に加わる
多くの仲間たちとともに、
僕の好きな二人の不服従の思想家、
魯迅とベンヤミンの言葉を噛みしめたい。

「思うに希望とは、もともとあるともいえぬし、ないともいえない。
それは地上の道のようなものである。
もともと地上に道はない。
歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」
~魯迅『故郷』(1921.5)<竹内好訳>

「夜の闇のなかを歩みとおすとき、
助けになるのは、
橋でも、翼でもなく、友の足音だ」
~ヴァルター・ベンヤミン『ベンヤミンの生涯』(野村修訳)


 今年、三鷹高校を定年退職した土肥校長の闘いについては、『janjanニュース』「東京都を訴えた都立三鷹高校の土肥信雄前校長に聞く」(三上英次記者)次のリンクをご覧ください。三鷹高校生が土肥さんに送った「卒業証書」が見事です。

 『janjanニュース』(6月16日):http://www.news.janjan.jp/living/0906/0906155123/1.php