いま店頭に“新レンコン”が出ている。母が佐賀・白石町の出だから、特産品の「白石レンコン」は小さい頃からなじみが深かった。母の実家の裏には「クリーク」(小運河:白石平野には随所に点在する)があって、初夏にピンクの大きな花を咲かせ、秋口に蜂の巣のような実を結ぶ。その実の何ともふくよかな味が忘れ難い。白石への里帰りが頻繁だったのは、祖母が健在だった第二次大戦開戦前後の頃だろうか…。寒が来て堀上げたレンコンは身が締まって、煮物にしていただけばホコホコして味わい深い。いまの“レンコン”はホコホコ感よりサクサク感が勝るが、なんと言っても馴染みの「白石レンコン」が一番。時折、通りかかる地元の「ふるさと農産品市場」で必ず買って帰ることにしている。
泥田から一本の茎がのびて咲く花を「清浄」なものとみて、仏教では蓮を象徴的にとらえ仏像や仏殿の造形に取り入れている。釈迦牟尼如来像や観世音菩薩像などの仏像はいずれも“蓮肉”“蓮弁”に座しておられる。諺に「蓮の台(うてな)の半座を分かつ」とあるが、“死んでからも一緒に極楽に往生して、一枚の蓮の葉に仲よく身をまかせあって、幸せを分かち合うということで、生きているうちはもとより、死後までも、行動、運命を共にするほどの仲をいう”(折井英治編『ことわざ辞典』/集英社)とある。類語に“一つ蓮(はちす)の縁”“一蓮托生”が挙げられている。蓮はこの世とあの世をつなぐ特別な意味を持った植物なのだ。また、レンコンにはたくさんの穴があいていることから「見通しの良い」縁起物としても知られている。
蓮(ハス)はスイレン科の多年生水草、果実が蜂の巣に似ているのでハチスと呼んでいたのをハスと略称するようになったという。蓮は薬効の多い植物としても知られている。中国最古の本草書『神農本草経』には上薬(「無毒の不老長寿薬」で薬用人参・甘草などと同一)に収載され(参照:本ブログ『薬考』:http://blog.goo.ne.jp/inemotoyama/d/20070209)、花、実、房、雄しべ、根茎、葉、茎すべて薬用として重宝される。
槇佐知子著『自然に医力あり』(筑摩書房)から用法と薬効を見てみよう。
●蓮の葉めし=鍋に水を入れて煮立て、塩を一つまみ入れ、細かく刻んだ蓮の若葉を茹でる。一たん葉を除いて茹で汁で御飯を炊き、蒸らす。蒸し上がったら先に除いておいた葉を混ぜ合わせると、風味のある蓮の葉めしができあがる。
●蓮茶=新しい葉を採り、、桶に水を満たした中に漬け、ときどき水を取り替えて二昼夜ほど置く。そのあとで陰干しにし、乾いたら刻んで袋に入れ、袋ごと陰に吊るす。これを運茶という。
蓮の葉を漢方では「荷葉(かよう)」といい、めまい、腹くだし、むくみ、吐血、鼻血、子宮からの下血、血便などに効能があり、渇きをとめて唾液の分泌を促し、清熱解暑の作用もある。現代中国では、こしけや慢性子宮炎、夜尿症、男子の遺精などに用いているという。
●蓮の茎=茎の繊維で天寿国曼荼羅を織ったという中将姫の伝説があり、何トンもの大量の蓮の茎からとったわずかな藕糸(ぐうし:蓮の糸)で織った布がわが国でも復活した。
蓮の茎は「荷梗(かこう)」といい、清熱解暑、通気作用があり、下痢や腸炎、暑気あたり、慢性子宮炎、こしけ、夜尿症、男子の遺精などに、煎じて服用する。またキノコ中毒の解毒にも効き、うるしかぶれには煮汁で洗浄する。
●蓮の雄しべ=煎じて飲むと、精力増進、唾液の分泌をうながし、顔色をよくし、血液のめぐりをよくする。
●蓮の花びら=揉んで腫物に貼ったり、陰干しにして貼ると、膿を吸い出し、痛みを止める。
●蓮の実=お粥や御飯に炊き込んだり、点心としてお菓子にも使う。
腎臓や脾臓に効き、長く治らない下痢や婦人のおりもの、夢ばかり見る者、遺精などに良いという。ただし、便秘気味の人は、いっそう便秘するので食べない方が良い。
晩秋になると熟しきった黒い果実は穴から飛び出す。飛ぶ前に採取して皮を取り除いて種だけを蒸してから陰干しにする。これが生薬の「蓮肉」(蓮子)である。鈴木昶著『薬草歳時記』(青蛙房)には「蓮肉」を配合した処方の「啓脾湯」「参苓白朮湯」「清心蓮子飲」などが紹介されている。
民間療法として『漢方・鍼灸・家庭療法』(保健同人社)は次のような例を挙げている。
●鼻づまり・鼻血=ハスのおろし汁をまるめた脱脂綿にしみこませ鼻孔に入れる。
●高血圧=ハスの根をおろし、一日二回、一回にさかずき一杯をのむ。
●口内炎=ハスの葉の黒焼きを布につつみ、水にひたしてから、口にふくむ。
●神経痛=ハスの根の皮をとり、おろし金でおろし、、一日二回、一回さかずき一杯飲む。
ちなみに「国宝の石仏」で知られる“臼杵の古代蓮”をリンクしておく。ハスの花や実がかわいい。
「臼杵の古代蓮」:http://www.us.oct-net.jp/~sekibutu/hana.html
泥田から一本の茎がのびて咲く花を「清浄」なものとみて、仏教では蓮を象徴的にとらえ仏像や仏殿の造形に取り入れている。釈迦牟尼如来像や観世音菩薩像などの仏像はいずれも“蓮肉”“蓮弁”に座しておられる。諺に「蓮の台(うてな)の半座を分かつ」とあるが、“死んでからも一緒に極楽に往生して、一枚の蓮の葉に仲よく身をまかせあって、幸せを分かち合うということで、生きているうちはもとより、死後までも、行動、運命を共にするほどの仲をいう”(折井英治編『ことわざ辞典』/集英社)とある。類語に“一つ蓮(はちす)の縁”“一蓮托生”が挙げられている。蓮はこの世とあの世をつなぐ特別な意味を持った植物なのだ。また、レンコンにはたくさんの穴があいていることから「見通しの良い」縁起物としても知られている。
蓮(ハス)はスイレン科の多年生水草、果実が蜂の巣に似ているのでハチスと呼んでいたのをハスと略称するようになったという。蓮は薬効の多い植物としても知られている。中国最古の本草書『神農本草経』には上薬(「無毒の不老長寿薬」で薬用人参・甘草などと同一)に収載され(参照:本ブログ『薬考』:http://blog.goo.ne.jp/inemotoyama/d/20070209)、花、実、房、雄しべ、根茎、葉、茎すべて薬用として重宝される。
槇佐知子著『自然に医力あり』(筑摩書房)から用法と薬効を見てみよう。
●蓮の葉めし=鍋に水を入れて煮立て、塩を一つまみ入れ、細かく刻んだ蓮の若葉を茹でる。一たん葉を除いて茹で汁で御飯を炊き、蒸らす。蒸し上がったら先に除いておいた葉を混ぜ合わせると、風味のある蓮の葉めしができあがる。
●蓮茶=新しい葉を採り、、桶に水を満たした中に漬け、ときどき水を取り替えて二昼夜ほど置く。そのあとで陰干しにし、乾いたら刻んで袋に入れ、袋ごと陰に吊るす。これを運茶という。
蓮の葉を漢方では「荷葉(かよう)」といい、めまい、腹くだし、むくみ、吐血、鼻血、子宮からの下血、血便などに効能があり、渇きをとめて唾液の分泌を促し、清熱解暑の作用もある。現代中国では、こしけや慢性子宮炎、夜尿症、男子の遺精などに用いているという。
●蓮の茎=茎の繊維で天寿国曼荼羅を織ったという中将姫の伝説があり、何トンもの大量の蓮の茎からとったわずかな藕糸(ぐうし:蓮の糸)で織った布がわが国でも復活した。
蓮の茎は「荷梗(かこう)」といい、清熱解暑、通気作用があり、下痢や腸炎、暑気あたり、慢性子宮炎、こしけ、夜尿症、男子の遺精などに、煎じて服用する。またキノコ中毒の解毒にも効き、うるしかぶれには煮汁で洗浄する。
●蓮の雄しべ=煎じて飲むと、精力増進、唾液の分泌をうながし、顔色をよくし、血液のめぐりをよくする。
●蓮の花びら=揉んで腫物に貼ったり、陰干しにして貼ると、膿を吸い出し、痛みを止める。
●蓮の実=お粥や御飯に炊き込んだり、点心としてお菓子にも使う。
腎臓や脾臓に効き、長く治らない下痢や婦人のおりもの、夢ばかり見る者、遺精などに良いという。ただし、便秘気味の人は、いっそう便秘するので食べない方が良い。
晩秋になると熟しきった黒い果実は穴から飛び出す。飛ぶ前に採取して皮を取り除いて種だけを蒸してから陰干しにする。これが生薬の「蓮肉」(蓮子)である。鈴木昶著『薬草歳時記』(青蛙房)には「蓮肉」を配合した処方の「啓脾湯」「参苓白朮湯」「清心蓮子飲」などが紹介されている。
民間療法として『漢方・鍼灸・家庭療法』(保健同人社)は次のような例を挙げている。
●鼻づまり・鼻血=ハスのおろし汁をまるめた脱脂綿にしみこませ鼻孔に入れる。
●高血圧=ハスの根をおろし、一日二回、一回にさかずき一杯をのむ。
●口内炎=ハスの葉の黒焼きを布につつみ、水にひたしてから、口にふくむ。
●神経痛=ハスの根の皮をとり、おろし金でおろし、、一日二回、一回さかずき一杯飲む。
ちなみに「国宝の石仏」で知られる“臼杵の古代蓮”をリンクしておく。ハスの花や実がかわいい。
「臼杵の古代蓮」:http://www.us.oct-net.jp/~sekibutu/hana.html