これやこの江戸紫の若なすび 西山宗因
今年初めて作った“賀茂なす”の初物を糠漬けにして頂いた。実が締まってハリハリ歯ごたえが心地よい。茄子にも次のような色・形で幾種類もあるのを知ったのでご参考に供したい。
「野菜図鑑」:http://alic.vegenet.jp/panfu/zukanmokuji.html
いつも引用する『中医営養学』(山崎郁子著/第一出版)の“茄子”の項に、
性味=涼、甘
帰経=脾、胃、大腸経
効用=熱を下げ、出血をとめて腫れを治す。出血性の皮膚の潰瘍などに、黒焼粉末を用いる。
とある。古典医学研究家の槇佐知子著『くすり歳時記』には「ナスビ礼賛」として詳しい記述がされている。一部紹介しよう。
<暑さが続くと、どうしても食欲が落ちる。そんな夏の食卓に欠かせないのは、何といっても漬物。それも手が染まりそうな紫紺の茄子(なす)や、白瓜、キュウリなどの糠味噌漬があれば最高。茄子の漬物の切口の、紫と白のあわいの色が何ともいえない。…
ところで茄子は紫とばかり思っていたところ、九州の西南端、鹿児島県坊津町へ行って驚いた。瓜のような色をしたナスが成っているのだ。それも十一月になろうという季節に~である。
もっとも、ナスの仲間には、トマト、ホオズキ、ジャガイモから、ピーマン、タバコまである。『華岡青洲の妻』で有名になったチョウセンアサガオも一名キチガイナスビともいい、ナスの一族。外科手術の麻酔剤として用いられるのはご存知の通りで、エンゼルトランペットと呼ばれる白い花は喘息発作の鎮静剤。…
中国でも古くから栽培され、漢代の『神農黄帝食禁七巻経』という文献には、「多食すれば陽(陽は活動力、陰は蓄える力)を損ずる」と記されている。また、隋唐の書誌に書名をとどめる『崔[う]錫食経』には、皮膚に張りを与え、気力をつける食物として紹介されている。そのほか、脚の病気の治療には、苗や葉を煎じた汁に浸す。…
俗に「親の意見とナスビの花は、百に一つもムダがない」という。咲いた花は全部が実になるからで、正月の初夢に「一富士、ニ鷹、三ナスビ」というのも、そのためだが、漢方薬という見地からも、ムダのない植物といえよう。>
さて、月日の経つのは早いもので、この年も今日で半分が過ぎた。旧暦では二十四節気の冬至から夏至までがその年の前半だが、「易」でいえば夏至は「陽が極まる」状態から逐次「陰が萌(きざ)す」ことを示す。旧暦で一年三百六十日を五日ずつに分割したのが「七十二候」で、二十四節気に三候ずつ(5日ごと)当てられている。ちなみに夏至(6月22日頃)、小暑(7月8日頃)、大暑(7月23日頃)の各候をみてみよう。
●夏至=第28候:鹿角解(しかが、つのをおとす)
第29候:蝉始鳴(せみが、なきはじめる)
第30候:半夏生(はんげしょう)
夏至から11日目。江戸時代から、農民にとっては八十八夜と共に 重要な日で、この日までに田植えを済ますことになっていた。
●小暑=第31候:温風至(かぜが、あつくなる)
第32候:蟋蟀居壁(きりぎりすが、かべでなく)
蟋蟀は「きりぎりす」のこと。
第33候:鷹乃学習(たかが、そらをとぶことをおぼえる)
●大暑=第34候:腐草為蛍(くさったくさが、ほたるになる)
これは言い伝えられた話。
第35候:土潤[じょく]暑(つちがじわっとしめって、あつい)
第36候:大雨時行(ときどき、おおあめがふる)
(参照:『旧暦はくらしの羅針盤』(小林弦彦著/生活人新書))
これを見れば、旧暦が実際の季候に合致し、いかに季節感豊かであるかが分かるだろう。畑仕事に追われながらも「易」の“乾卦”にあるように“天行は健なり”を実感する毎日である。
参照:「冬至」を示す易卦
「坤」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-02.png
「復」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-24.png
「夏至を示す易卦」
「乾」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-01.png
「こう[女偏に后]」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-44.png
今年初めて作った“賀茂なす”の初物を糠漬けにして頂いた。実が締まってハリハリ歯ごたえが心地よい。茄子にも次のような色・形で幾種類もあるのを知ったのでご参考に供したい。
「野菜図鑑」:http://alic.vegenet.jp/panfu/zukanmokuji.html
いつも引用する『中医営養学』(山崎郁子著/第一出版)の“茄子”の項に、
性味=涼、甘
帰経=脾、胃、大腸経
効用=熱を下げ、出血をとめて腫れを治す。出血性の皮膚の潰瘍などに、黒焼粉末を用いる。
とある。古典医学研究家の槇佐知子著『くすり歳時記』には「ナスビ礼賛」として詳しい記述がされている。一部紹介しよう。
<暑さが続くと、どうしても食欲が落ちる。そんな夏の食卓に欠かせないのは、何といっても漬物。それも手が染まりそうな紫紺の茄子(なす)や、白瓜、キュウリなどの糠味噌漬があれば最高。茄子の漬物の切口の、紫と白のあわいの色が何ともいえない。…
ところで茄子は紫とばかり思っていたところ、九州の西南端、鹿児島県坊津町へ行って驚いた。瓜のような色をしたナスが成っているのだ。それも十一月になろうという季節に~である。
もっとも、ナスの仲間には、トマト、ホオズキ、ジャガイモから、ピーマン、タバコまである。『華岡青洲の妻』で有名になったチョウセンアサガオも一名キチガイナスビともいい、ナスの一族。外科手術の麻酔剤として用いられるのはご存知の通りで、エンゼルトランペットと呼ばれる白い花は喘息発作の鎮静剤。…
中国でも古くから栽培され、漢代の『神農黄帝食禁七巻経』という文献には、「多食すれば陽(陽は活動力、陰は蓄える力)を損ずる」と記されている。また、隋唐の書誌に書名をとどめる『崔[う]錫食経』には、皮膚に張りを与え、気力をつける食物として紹介されている。そのほか、脚の病気の治療には、苗や葉を煎じた汁に浸す。…
俗に「親の意見とナスビの花は、百に一つもムダがない」という。咲いた花は全部が実になるからで、正月の初夢に「一富士、ニ鷹、三ナスビ」というのも、そのためだが、漢方薬という見地からも、ムダのない植物といえよう。>
さて、月日の経つのは早いもので、この年も今日で半分が過ぎた。旧暦では二十四節気の冬至から夏至までがその年の前半だが、「易」でいえば夏至は「陽が極まる」状態から逐次「陰が萌(きざ)す」ことを示す。旧暦で一年三百六十日を五日ずつに分割したのが「七十二候」で、二十四節気に三候ずつ(5日ごと)当てられている。ちなみに夏至(6月22日頃)、小暑(7月8日頃)、大暑(7月23日頃)の各候をみてみよう。
●夏至=第28候:鹿角解(しかが、つのをおとす)
第29候:蝉始鳴(せみが、なきはじめる)
第30候:半夏生(はんげしょう)
夏至から11日目。江戸時代から、農民にとっては八十八夜と共に 重要な日で、この日までに田植えを済ますことになっていた。
●小暑=第31候:温風至(かぜが、あつくなる)
第32候:蟋蟀居壁(きりぎりすが、かべでなく)
蟋蟀は「きりぎりす」のこと。
第33候:鷹乃学習(たかが、そらをとぶことをおぼえる)
●大暑=第34候:腐草為蛍(くさったくさが、ほたるになる)
これは言い伝えられた話。
第35候:土潤[じょく]暑(つちがじわっとしめって、あつい)
第36候:大雨時行(ときどき、おおあめがふる)
(参照:『旧暦はくらしの羅針盤』(小林弦彦著/生活人新書))
これを見れば、旧暦が実際の季候に合致し、いかに季節感豊かであるかが分かるだろう。畑仕事に追われながらも「易」の“乾卦”にあるように“天行は健なり”を実感する毎日である。
参照:「冬至」を示す易卦
「坤」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-02.png
「復」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-24.png
「夏至を示す易卦」
「乾」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-01.png
「こう[女偏に后]」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Iching-hexagram-44.png