耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

“犯罪と失業率の相関”~注目の『松尾匡のホームページ』

2008-01-26 11:18:00 | Weblog
 『松尾匡のホームページ』に「私の主張」というのがある。項目を挙げてみよう。

1.新興大国の75歳寿命説
2.コンドラチェフ長期波動と今日の激動
3.ソ連型体制は国家資本主義だった
4.民営化・規制緩和の悪魔的傾向は社会主義への前進!
5.民族自決に反対せよ
6.世界春闘を実現しよう。戦闘的に!国際的に!
7.市場でもなく、国家でもなく、その中間でもなく
8.非営利・協同ネットワークと個人のアイデンティティ

 実に内容の詰まった論文で一読物である。「4.民営化・規制緩和の悪魔的傾向は社会主義への前進!」などは、逆説的な表題ながらナルホドと納得してしまう。

 『松尾匡』氏のプロフィール紹介によれば、1964年7月25日生まれの石川県出身、本職:家事・育児、地域活動、久留米大学学内運営諸雑務。副業:久留米大学経済学部での教育。趣味:理論経済学研究とある。

 『松尾匡のホームページ』:http://www.std.mii.kurume-u.ac.jp/~tadasu/index.html

 このサイトの「最近感じること」というエッセイコーナー1月14日に、松尾先生のゼミ生清水咲希さんが挑戦して作成した『犯罪の九割は失業率で説明がつく』という論文がある。この記事には多くのコメントが寄せられたらしく、16日、17日、25日と追記、続報が掲載されている。政治・経済が不安定な状況下では国民の心理が動揺するのは当然で、それが犯罪の増加につながるというのもうなずける現象だろうが、失業率と犯罪の相関関係を長期にわたり理論的に分析し、解明していることは注目に値する。参考文献もリンクしてあるからぜひご覧いただきたい。

 『犯罪の九割は失業率で説明がつく』:http://www.std.mii.kurume-u.ac.jp/~tadasu/essay_80114.html

 『やっぱり九割がたの説明がつく』:http://www.std.mii.kurume-u.ac.jp/~tadasu/essay_80124.html

 論文作成者の清水咲希さんは「少年犯罪についてもやってみたいと言うから、渡した資料の中に管賀江留郎著『戦前の少年犯罪』(築地書房)を入れておいたら、論文締め切りが迫る中、データを読む前に本文に読みふけったそうで、結局少年犯罪の分析は何もしないままに終わってしまった」と松尾先生が書いている。この『少年犯罪』がデータベース化され、リンクがあったので見てみたが、清水さんならずとも「ハマッテ」しまって、つい時間を忘れそうになった。ご覧下さい。

 『少年犯罪データベース』:http://kangaeru.s59.xrea.com/

 これをみればわかるが、近年、残忍な犯罪や猟奇的な犯罪が増えているように思われがちだが、実際はそうではなく、どこかで世論がゆがめられている気配がある。つまり、政治的、経済的政策の齟齬によって人心がすさんでいく事実を隠蔽している勢力が存在すると見るべきだろう。松尾先生の本論文に関するコメントをつけておく。

 <失業者というのは、民族性や身分や性別と違って、個人の属性でもないし、多くの場合個人の責任でなったわけでもない。無策や誤った政策で作られたものです。そして民族性や身分や性別と違って、本来はなくすことを目指して政策がとられるべきものです。犯罪や教育や道徳のせいにして真の原因を放置することこそ、一部の人々には不幸な境遇を強いる差別につながるのではないかと思っています。>

 『松尾匡のホームページ』は読んで得した気になるサイトの一つである。