たばこが喫煙者のがんや心筋梗塞などを引き起こすだけでなく、周囲にいる人の肺がんのリスクを1・3倍高めることが国立がん研究センターの解析で明らかになっている。喫煙と受動喫煙による国内の死亡者は、毎年14万5千人に上ると推計されている。海外では生々しい警告写真をパッケージに使う国が増えているが、日本では導入されていない。どの程度の効果があるのだろうか。(加納裕子)

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 ◆たばこ税2倍

 「韓国では、たばこパッケージへの写真警告表示の採用法案が今年2月、採択されました

 9月18日、神戸市中央区の兵庫医療大学で開かれた日本タバコフリー学会学術大会韓国の国立がんセンター禁煙センター所長で韓国禁煙協会会長を務める徐洪官医師は、禁煙治療などに取り組む日本の医師らを前にこう説明した。

 徐医師によると、韓国では1995年に健康増進法が施行され、公共の場所が禁煙になったりレストランでの分煙が進んだりしたが、2014年の男性喫煙率は43・1%で同年の日本男性(30・3%)よりも高かった。だが、政府が同年9月に「包括的たばこ規制プラン」を宣言。増税やパッケージへの写真警告表示が検討され始めたという。

 15年1月からたばこ税がほぼ2倍になり、すべてのレストランやバーが禁煙に。今年2月には禁煙治療に多額の補助が出るなどの支援態勢も整った。写真警告表示も今年12月からの導入が決まったという。

 ◆真っ黒な肺の写真

 写真警告表示の導入は世界中で進んでいる。たばこに対する規制や政策の有効性を研究する「国際たばこ規制計画」の主任研究者でカナダ・ウオータールー大学教授のジェフリー・フォン氏によると、01年にカナダが世界で初めて写真警告表示を採用現在、77カ国が導入しており、そのうち54カ国でパッケージ面積の半分以上を占めている。

 各国が採用している写真は衝撃的だ。真っ黒に染まった肺や口腔(こうくう)がんでただれた口の中。喫煙者はたばこを取り出そうとするたびに、目を背けたくなるような写真を目にすることになる。

 こうしたパッケージが続々と導入される背景には、05年に発効した「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」がある。同条約11条は「大きく明瞭で視認・判読が可能なもの」「主たる表示面の50%以上を占めるべきで、30%を下回ってはならない」などと規定している。

 国際たばこ規制計画によると、09年に表面40%、裏面60%に警告写真を表示するようになったマレーシアでは、警告を見て喫煙を中止した人の割合が33・4ポイント増加カナダでは文字のみの警告から写真警告に変更した結果、喫煙率が2・9〜4・7%減少した可能性があるという。

 ◆70%が画像に賛成

 日本では現在、たばこ事業法により、パッケージ全体の30%に8種類の注意文言が記されることが規定されているが、写真警告表示は導入されていない。今年6月に開かれた財務省の審議会で議論されたものの、「過度に不快感を与えないようにすることが必要」などとして、当面は見送られる方向になった。

 ただ、写真による警告の必要性を求める声は高まっている。国立がん研究センターが今年4月、成人2千人を対象に行った調査では、警告表示に画像を入れることについて70%が「賛成」または「強く賛成」と回答している。

 日本タバコフリー学会は「国内で年間10万人を大きく上回るたばこ関連病死を考慮すると、たばこの真実を写真警告表示で国民に情報提供することは、FCTCを批准している日本政府の義務」と訴えている。

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喫煙者の減少は、さまざまな疾病を減らすことになり、高騰する医療保険支払いを避けられる可能性も高く、国家財政を救います。

喫煙者を減らし、受動喫煙を減らして、国民をより健康にするためにも、一日も早いタバコのパッケージへの大規模でグロテスクな喫煙警告画像導入を望みます。

そして、それはFCTCを批准している以上、決定事項なのですから。