屋外でバーベキューを楽しむ機会などが増える夏にかけ、カンピロバクターによる食中毒が増加する。鶏肉が原因となることが多く、刺し身やたたきなどの生食の他、加熱不足でも起こっている。筋肉を動かす運動神経が障害されるギラン・バレー症候群を引き起こすこともあり、内閣府食品安全委員会は「肉は十分加熱し、生や半生で食べることは避けて」としている。(平沢裕子)                 

 ◆鶏肉で多発

 カンピロバクターは、鶏や牛、豚など家畜の腸管内に生息している細菌。厚生労働省によると、昨年発生した原因物質が判明している食中毒のうち、最も件数が多かったのがカンピロバクターで全体の3割を占めた。

 中でも多いのが鶏肉が原因となっているケース。食鳥処理の過程で汚染されやすく、市販の鶏肉の6〜8割から菌が検出されたとの調査結果もある。

 「新鮮だから大丈夫」と鶏肉を生で提供する飲食店があるが、カンピロバクターに汚染されている場合は、鮮度に関係なく食中毒となる可能性が高い。また、菌量が少なくても発症することがあるため注意が必要だ。

 東京都台東区の飲食店で4月下旬、コース料理を食べた約50人のうち23人がカンピロバクターによる食中毒を発症した。鶏のささ身を湯引きしてポン酢であえた料理が原因とみられ、同店は「刺し身と違い、湯引きしているから大丈夫だと思っていた」と打ち明ける。

 東京都健康安全研究センターが鶏のささ身を使い、9秒間湯通ししたところ、外側の色は白く変化したが内部は生肉の色のまま。菌も生存していた。軽く湯を通す程度の加熱では食中毒になる恐れがある。

 台東保健所生活衛生課は「『飲食店で提供されるものは安全』と思っている消費者は多い。鶏肉は中までしっかり火を通したものを提供してほしい」と飲食店に呼びかけている。

 一方、焼き鳥やバーベキューなど加熱して食べる料理でも生焼けのことがある。食べる前に肉の内部の色を見て、火がきちんと通っているかを確認しよう。

 ◆交差汚染に注意

 カンピロバクターによる食中毒は、原因となる食品を食べてから2〜7日(平均3〜4日)たってから発症するのが特徴だ。主な症状は腹痛や下痢、発熱、嘔吐(おうと)など。

 腸管出血性大腸菌のように重篤化で死亡することはほとんどないが、症状が治まってから1〜2週間後に、ギラン・バレー症候群を発症することがある。主に筋肉を動かす運動神経が障害され、手や脚に力が入らなくなる難病だ。約7割は回復するが、中には後遺症で歩行に介助が必要となる人もいる。日本では、ギラン・バレー症候群の患者の約3割がカンピロバクター感染が原因とみられている。

 調理器具などを介して感染が広がる交差汚染にも注意が必要だ。例えば、汚染された鶏肉を扱ったまな板や包丁に付いた菌が生で食べる野菜などに付着し、それを食べたことで食中毒になることもある。

 食品安全委員会は予防のため、(1)肉は十分に加熱(75度以上で1分以上)(2)肉と他の食品と調理器具などを分ける肉に触った後は十分手を洗う−などを呼びかけている。

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■鹿児島、宮崎は生食用に「基準目標」

 厚生労働省は、焼き肉店で5人が死亡した腸管出血性大腸菌O(オー)111による食中毒事件を契機に平成24年7月、牛レバーの生食提供を食品衛生法で禁止。その後、E型肝炎ウイルスの感染リスクが高い豚の肉やレバーを生で提供する店が増え、豚についても近く生食提供を禁止する。

 一方、鶏肉の生食については、死亡リスクが低いことから、「現状では法律での規制は考えていない」とする。

 鶏肉を生食してきた鹿児島と宮崎の2県は、食中毒リスクの低減のため、生で食べる鶏肉の細菌量などについて独自に「基準目標」を定めている。ただ、宮崎県衛生管理課は「基準目標はリスクを減らすためのもの。生食を推奨しているわけではない」とし、消費者には加熱して食べるよう呼びかけている。

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生で食べられるものが、どんどん減っています。でも、こんな記事を読んだら、鶏の刺身は絶対に食べたくないし、他の肉の刺身にも手が出にくくなります。豚のレバー刺身が大好きなのに、困ったものです。