直木賞を受賞したノンフィクション・ノベルを30数年ぶりに全面改訂。
400字詰め原稿用紙800枚を最初から書き直し。

西口彰の内面をどうしてものぞくことが出来ずに、調べることに徹して出来上がったノンフィクションだとか。
そのインタビュー、記事、取材で書き並べつつ事件を明らかにしていく手法はやはり圧巻。

また、今年は緒方拳が亡くなって映画を見た後なので、読めば読むほど、今村昌平の「復讐するは我にあり」の凄さを再認識することになる。勿論ノベルも充分に傑作たりえるのですが・・・
あとがきで佐木氏も映画の白川和子(ストリッパー吉里幸子)の件を引いて今村監督の調査の執念を讃えています。
浜松の旅館おかみとの関係、その母親との関係、父親と嫁との関係に焦点を当て榎津のキャラクターを形成。ノンフィクションから作品へと昇華させる脚本・演出・演技の凄さ。

原作の方はそれらに焦点を当てメリハリを付ける手法は取らずに淡々と事件を追っていく。これはこれで読み応えがあるんですね。

特に取り調べの記録係の巡査部長によるメモ。(たまに検事に見せる事はあるが法定に提出することはない)このメモを整理して巡査部長の作った私家版が興味深い。
映画でエロとバイオレンス描写にスポットが当たる反面、原作では榎津の杜撰でありながら巧妙な詐欺事件の描写が光ります。

原作と映画、両方に接する事により相互にその素晴らしさを知ることが出来る稀有な作品。



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