いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
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学生ボディビルダー

2017-02-19 13:26:18 | 日記
その男は大学進学の為、東京を訪れた。地方の進学校を卒業することになり、それなりに悩みや心配事はあったが順風満帆な人生だったように思う。親と一緒に乗り換えた新宿駅は巨大な要塞のようだった。ちゃんと1人で電車に乗れるだろうか。有名大学に進学する彼の一番の心配事はそれだった。

大学生活は楽しかった。一番の理由はサークルが楽しかったからだ。ずっとガリガリだった自分が強引な誘いで軽くサインしたボディビルサークルがその後の生活を変えた。筋トレなどしたことがなかったからこそ体はみるみる変わっていった。サークルとして永続させていくためには当然学生大会での部員の活躍は必須だったが、スター選手の発掘が重要であることは4年生はよく分かっていた。自分たちはいずれいなくなる。社会人チームとは訳が違うのだ。先輩はみな新入部員には優しかった。

彼が大学4年になった時にはマスコミやメーカーから大学に名指しで仕事のオファーが届くようになっていた。雑誌のちょっとしたカットやサプリメントのイベントなどでの単発での仕事が主だった。ボディビルは卒業と同時に引退する。就職は内定が決まっているところに入る事が決まっている。残り少ない大学生活は後進育成とアルバイトに費やすことになっていった。

彼は社会人となって4年が経つ。最初の1年は地獄の様だったが、今となっては笑い話だ。トレーニングはあれからも続けてはいるが、学生時代の華々しい体からはかけ離れてしまっている。久しぶりに会う友人はみな「太ったね」と言ってくるのがお決まりとなっていた。通っているゴールドジムでも「結構体がいいサラリーマン」とでも思われているのだろう。ボディビルダーだったことは自分から話さない限り誰も知らない事となっていた。

学生時代に何となくやっていた。センスがあろうがなかろうが、それはそれ。就職してまで続ける気はない。学生ボディビルダーの大半がそんな感じだろう。中にはトレーナーやスポーツ業界で働くこととなって選手を続ける学生もいるだろうが少数だ。それがどこかさみしくもある。