いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
過去の記事は随時掲載していきます。
以前読んで下さっていた方、ありがとうございます。

close to you

2006-11-04 22:09:58 | インポート

Ccmg044

どうもありがとう、またね。」

そう言ってドアを開けると、涙が溢れてきた。オレが泣くなんて、ありえない。どうして?ドアを閉める一瞬だけ振り向くと、相手の驚いた顔が目に映った。

彼と同棲して、何もかも一緒にやってきた。仕事から帰ってきて夜中まで取り留めのない話をするのが楽しかったし、スーパーに買出しに行くのも大好きだった。ジムも一緒に行ったし、日常の全てが彼と共にあった。しかし、そういった生活は破綻する。どちらかが常にどちらかを待っていないと成立しないからだ。やがて、少しずつ、それぞれ別々の生活をするようになっていった。それでも、一緒に暮らしているからこその幸せがいっぱいあったと思う。なのに、気持ちも少しずつ、別々になっていくことが許せなかった。そんなある日、コーヒーを一緒に飲んでいると、彼が切り出してきたのだ。別々に暮らそう、と。

それが、今日だった。お互い、敢えて話題にするワケでもなく、オレが荷造りを始めた。別に2人が別れるワケじゃない。ただ、今後は別々の自宅で暮らしましょう、という事なのだから多少の忘れ物があったっていい。そういう意味で、何も哀しいことではないと思っていた。

宅急便のドライバーが荷物を取りに来た。もう、この場所にオレの生活用品はないのだ。そう思うと、急に変な気持ちになった。窓の外の景色や部屋の風景、この空間の全てが愛おしい。

そろそろ行くね。」

バッグを手に、玄関に向かう途中でキッチンが目に入る。いつも彼が料理を作ってくれた。ねえ、何が食べたい?と、いつもいつも聞いてくれた。お願い、何で今、そんな光景が浮かんでくるの?あとちょっとで、あの玄関に辿り着くのに。「たくさん食べてね。」、と微笑む彼。いつの間にかコーヒーを淹れてくれる彼。キッチンにいる彼が好きだった。もう、その彼を毎晩見ることはできなくなる。「ねえ?」、そんな彼の笑顔と今日、さよならするのだ。

どうもありがとう、またね。」

涙が止まらない。いつもいつもオレに料理を作ってくれて、ありがとう。

「鍵、ちゃんと持った?」

涙でぐちゃぐちゃになりながらも、一生懸命彼の質問に頷いてドアを閉めた。

記事一覧