いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
過去の記事は随時掲載していきます。
以前読んで下さっていた方、ありがとうございます。

時を超えて

2019-09-10 21:34:49 | 日記
「一緒に帰るか?」

Facebookで検索したものの、結局先輩を見つけることはできなかった。Instagramでも同じだった。オレが新入社員の時に25才だったあの男性は今どこで何をしているのだろうか。

「ちょっと待ってて、パン買ってくるわ」

野球をずっとしてきたと話してくれた。背が高くてマッチョでイケメンで、そして優しかった。ガムをくれたりコーヒーを買ってくれたり、電車を待つ間ホームで一緒に食べようとパンを買ってくれたこともあった。好きだった。苦しいほどに好きだった。だから諦めた。告白などして彼に迷惑をかける訳にはいかない。精一杯の愛だった。いや、まだゲイだと自認もしていなかった時期だから、何をしていいか分からず単に何もしなかったというのが答えかもしれない。好きだった。だけど諦めた。そしてゲイとして歩き始めることにした。先輩と同じくらいカッコいい相手を見つけることが自分にとっての幸せだと思うしかなかった。だから、全てはこの時に始まったと言えた。

「コーヒ飲むか?」

それからは体を鍛えてマッチョになって、SEXをしまくって、そして恋愛もいくつも経験した。振り返ればどれも闇に輝くブラックライトのような妖しくも美しい思い出ばかりだが、それがあっての今なのだろう。あの頃の1つでもなかったら今の生活には辿り着けなかったと思うほどに、危うい道を歩き続けて1つの成功を手にしたと思う。手を伸ばしても決して届かなかった美しい月。それを諦めたのが23才の時だとしたら、その後の人生はその代替物を探し求める旅だったように思う。月、いやノンケのイケメンなど決しては自分は望んではならないものなのだ。それを知った23才からの人生も思ったほどは悪くはなかった。イケメンと呼ばれる層は実際にはピラミッドの第2階層に位置している。本物のいい男というのはその上に座しているものだ。地上に降りてくることはない。こちらに微笑むこともない。その男たちを自分は「月」と呼んだ。

「今度の休みドライブに連れてってやるよ、客先周りともいうけどw」

先日、仕事である男性と知り合った。完全な仕事だったが多少話す機会はあった。なぜか初日から気が合い、話が弾んだ。聞けば25才でずっと野球をしてきたと話してくれた。あまりそういう目で見ていなかったが、よく見ると精悍な好青年だった。

「一緒にい過ぎかな?」

先輩とは背丈も違うし顔も似ていなかった。強いて言えばマッチョで黒く焼けているところぐらいだったが、話していくうちにもう1つ共通点を見つけた。優しいところだ。女にモテるのは間違いないが、男とのどうでもいい約束をきちんと守るのだ。帰りも見送ってくれて、ちゃんと着いたか連絡もくれた。全然似ていないのに、あの頃に戻って先輩といる気がした。ただ違うのは、オレが好きにならなかったところかもしれない。

美しさ

2019-05-12 13:47:00 | 日記
カッコ良くなることは簡単だった。なれるかどうかは別として、方法だけは単純明快だった。自分が心の底から恋焦がれる男を模倣して、そうなるだけで良かったのだ。そう気付いてからの人生は、新しい人生となった。

大会に出る訳ではないので体作りは気が楽だった。ただただ大きくして部分部分をカスタマイズして、Tシャツがパンパンでケツがプリっとしていれば痩身の自分にとっては上出来だったからだ。元々が痩せやすいのだから食事制限などする必要もなく、ただ鍛えて、ただ食べて、デカくなっても腹筋さえ割れていれば良いとさえ思えた。脚が細いと思えば脚の日を増やし、腕が細いと思えばメニューを見直して、自分をデザインしていく作業はコンプレックスの強さの反動ゆえか堪らなく魅力的なものだった。あまりSEXに興味がなかったせいもあり、「やるためにエロい体にしよう」という事は思わなかったが、ピーク時には、スパッツ姿でロッカー内を歩いていれば後をつけられ、スウェットを腰履きして街を歩いていればAVに勧誘される日が続いた。とは言え、自分にとってのゴールは程遠く、いるのかさえ分からない理想の相手と出会う事も、まだなかった。

それから15年が経った。生活は何も変わっていないがトレーニングの強度は下がった。ジムで話す大学生達はマッチョなだけでなく肌もつやつやしていて眩しいほど輝いている。かたや自分はどうか。20代の時にピークを迎えた肉体は下降線を辿り、いまや型落ちした。若い人達と張り合って痛々しい振舞いをしたいとは思わないが、もう一手が必要ではないだろうか。もう少し強度を上げて、もう少し肌つやを取り戻す必要があるのではないか。ああ、かつての20代の時を思い出す。カッコよくなりたい、マッチョになりたい。そう切望したあの頃とまるで同じだ。

また新しい人生を歩んでいこうと思う。

君を想う

2019-04-01 01:46:41 | 日記
その男はネットでとある画像を目にすると絶望した。カッコいいカッコいいと言われて生きてきたが、「彼」が100だとしたら自分は1にも満たないかもしれない。キラキラと輝くような笑顔で通販サイトの下着モデルはこちらを見つめていた。

「ゲイの世界には全く興味がないが、下着モデルになりたい」

そう思うと、その男は別の下着サイトに応募してみることにした。明らかに格下のブランドで、モデルも大した事はなく、思った通り即採用となり色々と学ばせてもらった。素人の自分が一応はモデルになれたのだと思うと自尊心がくすぐられた。例え売れないゴーゴーでも下着モデルでも、AVにちょっと出演しただけであったとしても世間が思っている以上に反響は大きい事を知った。こんな素人モデルでもSNSからはちらほらとオファーがくる。中には愛人契約のDMが届いていて笑ってしまった。

カッコいいと言われてきた人生は、それはそれで幸せだった。何不自由なくとまでは言わないものの、愛に溢れた人生だったと思う。しかし、第一線にはなれない人生でもあった。鍛えまくって研究と努力を重ねた普通顔の男の方が上には行けるのだ。カッコよくなりたい。モデルになって初めてその男はそう思った。少しして彼は期待の新人モデルとして活躍の場を広げていった。

地方企業に勤める会社員の男はネットやSNSでゲイの情報を集めるのが趣味だった。フォルダは拾い画像や動画で溢れ、タイプの男性のInstagramやTwitterを眺めているのが日課だった。いつも通り色々なサイトを眺めていると新しい下着モデルが追加されていて衝撃を受けた。まだ粗削りな感じではあったが、本当にタイプだった。イベントに出演すると書いてあったのでスケジュールを確認すると唯一東京に行けそうな日があったのでその日に決めた。いい年をして下着モデルに恋をしてしまったかもしれない。そう思うと胸が締め付けられた。

何回もサイトを確認してイベントの情報を確かめた。小さなお店のようだったので荷物はほとんどホテルに置いて新宿に向かった。会ったら何て言おう。長話する度胸もないが、そんな状況にもならないだろう。握手くらいは無理やりにでもしてもらわないと交通費の元が取れないよな。そんな事を考えながら歩いていると新宿2丁目にあっという間に着いてしまった。緊張するけど、どうでもいいような、変な気持ちのまま店に入る事にした。

モデルの男は早めに店内に出ることにした。色々な客から声が掛かる。大体が一緒に写真を撮ってくれと言ってくるが、逆に声を掛けられなさそうにしている客にはこちらから声を掛けた。人気というのはあっという間になくなるものだと知っている。いつの日か自分もそうなるのだ。その最後の時まで支持してくれる人を1人でも多く作るのが今だと思っている。ちやほやしてくれる人が真っ先に手のひらを返すのだろう。薄情な大多数の人間によって人気というものが作られているのかもしれない。

何回か目が合った男性がいた。自分目当ての客ばかりではないので違うモデルやゴーゴー目当ての客かもしれないと思ったが、一言声だけ掛けてみることにした。

「こんばんは。楽しんでいますか?」

「〇〇さんですよね?一度会ってみたくてきました。」

会社員は、まさか自分に向こうから話しかけてくるとは思っていなかったから咄嗟に切り返せなかった自分を恨んだ。もっと気の利いた事が言えたら彼の印象に残ったはずだ。こんな事ならプレゼントでも持ってくればよかった。自分はその他大勢の1人で、こんな1対1になる機会は訪れないと思っていたので何の準備もしていなかった。おしゃれだねって笑顔で褒めてくれたのも不意打ちだった。何もかもがグダグダの会話になりながらホテルへの帰路についた。モデルの彼との会話の一言一句全てを反芻し自分の会話力のなさを後悔しながら思ったことがある。彼の事が好きだと。





上司

2019-02-14 00:20:40 | 日記
その男はフリーランスとして働く傍ら、企業でアルバイトとしても働く日々を送っていた。俗にいうWワークだ。お金が欲しくて始めたのだが、時給で選んでもいなかった。自分でもできそう、あまり電車に乗りたくない、そんなワガママを通せるのも本業があっての事だろう。生活がかかっていたら文句を言える立場ではないのだから。

実は最初はスキマ時間に近所のセブンイレブンで週2で働いていた。レジをやりながら肉まんを作ったりして意外と楽しかった。オフィス街だったこともありサラリーマンやOLが多く、自分もスーツを着て働いていたよなあ、と時々昔の事を思い出していた。そんな想いが高じてオフィスでアルバイトをすることにしたのだった。

久し振りにスーツを着て面接を数社受けてみることにした。早めに着いたら別室に案内されるものだと思っていたがエレベーターホールで立って待たされた企業や法曹関係の事務所はこちらからお断りした。一流企業と言ってもピンからキリまであるのだなあと思い知らされたものだ。求人広告と全く内容が違う提案をしてきた企業も辞退した。こちらが選ぶ側なのだ。企業側ではない。恋愛だってそうだった。ブサイクでガリガリだったなりに、無い物をこねくり回して、「ある」事にしてきたのだ。最終的に選んだのは通いやすくて自分でも活躍できそうな職場だった。

初日に挨拶されたのが上司となる男性だった。一目でゲイだと分かる男性で、ちょっと好きな顔だった。手を出そうとは思わないが、ずっと見ていたい顔だと思った。

「ちょっと記入してもらいたいものがある」と、上司が資料を渡す手に指輪はなかった。お昼休みに弁当を持参している様子もない。誰かが毎日渡してくれそうなハンカチやタンブラーもなく、結婚していないにしても同棲もしていないだろうと思わせた。くだらない駆け引きや恋愛指南にありそうな事を仕掛けるつもりはない。テクニックを駆使して興味を引かせるよりも、ただ自分が美しい存在であればおのずと向こうからやってくるだろう。ジムに通いながらWワークに励む日々だったが、新人アルバイトにしては役職者である上司から声を掛けられる機会は多かった。「何かあれば相談してきて」と言われたのは、単なる社交辞令ではないだろう。単なる仕事の話ではあっても話してみたい、と、それくらいは相手から思ってもらえただろうか。

仮に2人が付き合う事になったとしても、この恋愛が上手くいかなかった時の損失は大きい。そもそも相手がゲイなのかどうか、恋人がいるのかさえ知らないまま何かが進展するとは思えないが、毎日同じ職場で顔を合わせているというのはかなり大きい。ジムで毎日見掛ける会員だからと言って用もなく話しかけられるものでもないが、職場となると「いい」のだ。「コーヒー、お好きなんですね」や「おはようございます」等、何とでも話しかけられる。しかも同じ会社なのだから、何でも割と好意的に受け止めてくれる。

「好きだとしたら、どちらが先だろうか」

窓の外に目をやりながら、ふと考える。こちらからしてみたら向こうから来てほしい。しかし、上司が新人に手を出してくるとは思えない。むしろ向こうこそ、こちらに興味があるとしたらだが、来てほしいと思うはずだ。相手からくることを望んで、来やすいように振舞っていると、他の人からもよく話しかけられた。いつの間にか模範的な新人に自分はなっていた。




初恋

2019-01-17 22:33:21 | 日記
その男は高校時代はラグビーに明け暮れた。彼女もいた。地方での生活は順調だった。ラグビー部の先輩の事を好きになるまでは。

「オレは、男が好きなのか?」

戸惑いはあったが毎日部活はあり、毎日好きな先輩と会えて幸せだった。チームメイトとして抱き合ったし、ふざけてキスできた。幸せだった。そして東京の大学に進学した。

彼女とは遠距離になり別れた。東京での一人暮らしは寂しかった。東京でもラグビーを続けたが、高校時代のラグビーの方が楽しかった。先輩がいたからかもしれないし、東京の人とはあまり合わないからかもしれない。寂しさを紛らわす為にゲイのアプリに登録してみたが馴染めず放置した。

新宿2丁目に行く事もなくゲイのイベントに行く事もない。ただ毎日が大学かラグビーか、そんな感じで過ぎて行った。時々やりたくなった時だけアプリで近場の相手を漁ったが、会う相手のほぼ全員から好きだと告白された。

「ずっと1人でいいかな」

セフレと呼ぶような相手を作る気もなく、彼氏も作れなかった。ゲイの世界にどうしても馴染めなかった。地元に帰りたいとよく思っていた。カッコいいと言われてもあまり嬉しくはなかった。ラグビーに明け暮れて、ただただマッチョな彼はその存在を知られることなく生きていた。彼を世に知らしめたのは何となく始めたInstagramだった。ゲイだけでなく女性フォロワーも増え、なぜこんな男性が今まで気付かれずにいたのだろうと不思議がられた。

「どう、気分は?」

「分からないです、ジムでも声かけられるようになりましたし」

誰もがインスタで見た事がある有名なイケメンは、現在は社会人になった。相変わらず彼氏はいないが東京に染まっていないところが凄いと思う。のんびりした感じというか、地方から来たまま変わらず大人になった感じだろうか。一緒にケーキを食べに行って彼の話を聞いていると、何だかオレも幸せになった。




夕日を浴びて

2018-11-21 08:45:26 | 日記
アプリを開くといつも出てくる広告、そこに映っている男性の事がいつしか気になり始めた。「売り専なんて使った事ないからなあ」、そう諦めていつも眺めていたが、意を決して予約する事にした。

思ったよりも簡単だった。特に余計な事をあれこれ聞かれる事もなく歯医者の予約よりも早く電話は終わった。狭いホテルで安く済ませることもできたが仕事で良く利用する一流のホテルにしたいと思った。何だかそわそわする。いい年して何だかなあと照れ笑いをしながら、その男はウェブサイトを閉じた。

ノックをされてドアを開けると、「え、」と大きな声を上げて「彼」が立ち尽くしていた。気になって気になって、ずっと好きだなと思って呼んだボーイは元彼だった。

彼の事が好きだった。一緒に過ごした日々を忘れることはないだろう。他の恋人に対してももちろんそうだが、ずっと永遠に憶えて生きていく。一緒に日曜の朝マックに行った。夜メシ作るの面倒だと言っていたので近所のバーミヤンに行った事があった。正月に無理を言ってミスドに付き合ってもらったことがあった。好きだった。全てが。自分が死んだら、もう思い出す事もない。1日でも多く生きていけたら、1日多く彼を思い出して生きていける。だから生きよう。そんな恋愛ができる人生で良かった。

「久し振り、ネコ達はまだ元気かな?」

「うん」

涙で彼の瞳がキラキラと輝いていた。

キンモクセイ

2018-09-24 05:37:59 | 日記
好きな人ができる度に香水を変えるようにしている。ずっと好きなままでいられたら、きっと変える必要はないのに。

香水ではないがルームフレグランスとしてキンモクセイの香りを部屋に置いていた時期があった。遊びに来た彼が、珍しいね、と手に取って匂いを嗅いでいた。彼とはパンケーキの有名店に一緒に行った。何かの途中で寄ったマクドナルドで話が弾んで結局彼とのデートはマクドナルドになった事もあった。歌舞伎町の路地を彼と歩いた。いつものジムに彼を連れて行った。こうしてずっと一緒に歩いていられたら、と送ってくれた夜道で願った事があった。好きだった。彼の事が。

キンモクセイの香りを久し振りに置いてみたら、ずっと忘れていた記憶が蘇ってきた。

君と一緒に

2018-09-23 22:42:12 | 日記
22時過ぎのベローチェでアイスコーヒーを1人で飲んでいるとLINEのメッセージが届いた。

「遅くなってすみません、急いで向かいます」

「いいよ、ゆっくり来て」

彼とはアプリで先日知り合って、初対面ながらゲームの話で盛り上がった。また会おうという事になってこの日彼と待ち合わせた。どんな顔だったっけ、とスマホで画像を確認する。アプリのプロフィール画像の彼はこちらを見て微笑んでいた。若くて鍛えていて、とてもカッコいいなと思いデータフォルダを閉じた。

不規則な勤務の彼は仕事の終わり時間も未定なようで、「大体」という事で決めた待ち合わせ時間が夜22時だった。サラリーマンであればこんな事は考えづらい。場合によっては「帰りが未定」という事もあるのかもしれないが、少なくとも日常的ではないだろう。彼は毎日が未定なのだ。

「もうすぐ着きます、まだいますか?」

「もちろんいるよ笑」

若い時はお金が欲しかった。何万もする服が欲しくて、香水も欲しかったし腕時計も欲しかった。カッコいい服を着て遊びに行きたかった。もしかしたら彼もそうなのかもしれないし、何か事情があるのかもしれない。本当に本業だけで忙しかったらトレーニングなどできないはずだ。マッチョであるという事は、トレーニングに関しては時間の融通が利くという事だ。もしかしたらマッチョでなくては「副業」が成り立たないのかもしれない。

彼が一生懸命鍛えた体を、見知らぬ誰かがお金で好きに弄んでいる事を思うと少し心が痛んだ。とても自分勝手な感情だと思う。彼が経済的に潤う事を応援したい。しかしそれは、彼がそれだけ体を好きに使われて色々な事をさせられるという意味でもある。

「お待たせしました笑」

「お疲れ様ー!」

汗だくの彼が笑顔でリュックから財布とタオルを取り出した。

「オレも何か買ってきますね!」

すぐ席を離れた彼からはボディシャンプーの匂いがした。そして、なぜか財布がリュックの奥底に入っていた。

疲れたと言ってオレンジジュースを飲んでいる彼の笑顔が眩しかった。無い時間を割いて、こうしてオレと会ってくれているのだ。余計な事を聞く必要もないだろう。彼が何をしていようと彼の本質とは関係がないように思えた。信じた、と言ってもいいかもしれない。

「楽しいね」

「楽しい!」

こうして一緒にいられて、よかった。






同志

2018-09-19 14:19:24 | 日記
Twitterやアプリを眺めていると鍛えて真っ黒に焼けたヤリ目的のバリタチの煽り投稿が目に付く。とにかく徹底的に当て掘りするからガタイいいウケのみ募集といった、いつの時代でもよく見かける文章だ。総じてSEXマシンのようなエロいマッチョタチが性処理相手のマッチョ従順ウケを探し求めている様子が目に浮かぶ。実際にその通りなのだろうが、その性獣のようなタチも当然普段は普通の生活をしているはずだ。スーツ姿で会社に出勤しているのかもしれないし、サービス業でお客様に笑顔で接しているのかもしれない。そんな彼らがジムで鍛えた体と自慢の性器をフルに使って激しいSEXをしていると思うとかつては興奮した。しかし更にその先の、「でも普通」という部分にこそ今は興奮する。

自分もずっとタチなので彼らが対象になる事はないが、同志として気持ちが分かる部分はある。毎日ヤリたくて今日も明日もウケを探しているようなタチが、どこか愛おしいのだ。かつての自分がそうだったから分かるが、心が空虚だからヤリ目的に走るのだ。会社で活躍していて、ジムで鍛えていて、カッコいいヤリたいとチヤホヤされているようなタチもどこか寂しいのだろう。色々な人とSEXしたい。だから恋愛とか面倒。でも誰かと出会ってずっと一緒にいたい。そんな風に行先を失ったタチが路頭に迷っているように思える。自分は満ち足りていない時はアイスやポテトチップスをやたら食べたくなるので分かりやすいが、欲求としてはそれと同じだろう。満ち足りていないから何かを補おうとする。それが買い物かもしれないし、SEXかもしれない。

「よかったら今度一緒に食事しましょう!」

「はい。タチから誘われるの初めてですw」

体画像だけのエロいバリタチも気軽に誘うと割と会ってくれたりする。


チームメイト

2018-08-31 14:27:05 | 日記
新入社員だった23才の時に、25才の先輩を本気で好きになった。それをきっかけにゲイとしてデビューしたという、とても思い出に残る恋だったが、それが全ての始まりだったように今は思う。

ノンケの会社の先輩に告白する程バカではなかったので、その恋を諦める形でゲイ活動に邁進した。本当に手に入らないものの代替品を探す旅に出たのだ。

自分が本当に好きだったのは、学生時代にプロ野球選手を本気で目指していた男性だった。その道を諦めて先輩はこの会社に入ってきたのだった。中学時代に好きだった相手も野球部だった。自分は野球選手が好きという事でもないだろう。自分にはない何かを持っている男性に心惹かれるのかもしれない。

ゲイとして全くモテなかった時代を経て、それなりにモテるようになると、物事を選別するようになっていく。簡単に言えば、エロくて超カッコいい男と出会う事が全てだった生活から、そうではない生活へ変遷していくということだ。過去にイベントのフライヤーを見てカッコいいと思ったゴーゴーを何とも思わなくなったりするのが一例だ。この程度ならジムにいるノンケの方がよっぽどカッコいい。オレが目指すのはこのようなイケてる風ゲイではなく、ストイックなノンケだ。なれなくてもいい。目指していたいのだ。ああなりたい。それが自分の心を補完していく作業なのだと知っている。

自分が美しい女に生まれていたら中学時代の野球部はおろか25才の先輩も落とせていたかもしれない。しかし、そこに興味はない。それよりも自分がアスリートの男に生まれていたら彼らとチームメイトになれていたのかもしれないと思うと心が締め付けられる。柔道でも野球でも水泳でもいい、スポーツだけの人生でもよかった。ノンケの選手と付き合いたいのではなくチームメイトになりたかった。一緒に何かを目指してみたかった。できる事なら必要として欲しかった。なぜ、そういう人生を歩めなかったのだろう。

自分はいい男になりたいと思っている。最初はいい男と付き合う為だったが、今は人生をやり直したいからだと思っている。

失われた風景

2018-08-15 01:13:06 | 日記
すぐ好きになっていたのが20代で、簡単には付き合わなくなったのが30代。
何もかもがぐちゃぐちゃだったのが20代で、洗練された生活を送るようになったのが30代。
幸せだったのが20代で、色々なものを手にしながら不幸せなのが30代。

夜遅く丸の内線の駅を出ると、目の前に見たことがある男性が階段を上っていた。実際には他人だったのだが、昔付き合っていた男性にどことなく似ていた。こんなバッグをしょって、よく遊びに来てくれたっけ。今頃彼は何をしているのだろう。

平日のこの駅は住人以外はあまり使っていない。彼を見た事はなかったが、この辺に住んでいるのだろうか。手前の信号で待つ彼を、1つ先の信号で待つオレが上手に眺めている。スマホを見る姿勢もよく似ていた。もしかしたら彼もこれから誰かの家に向かっているのかもしれない。あの頃の彼のように。

好きになるのは早い。会った瞬間というと言い過ぎかもしれないがその日中には好きだと分かっている。そうして好きになって、初対面の帰り道に改めて気付くのだ。本当に好きかもしれないと。男はありきたりな事に慣れていない。おしゃれな場所でデート中に好きだと言うよりも、何でもない道端でそっと手を握ると驚かれる。え、とこちらを見た時に、好きだと伝えた。2回目のデートだった。まだ早いよ、と笑う彼に、そうだね、と答えて話題を変えた。また会いたいと連絡をしてきたのは彼からだった。

信号が青に変わったので歩き始めると、丸の内線の彼は真っ直ぐに歩いて行った。自分はもうすぐ右に曲がる。もうお別れだ。

好きだった。でも別れた。別れたばかりの頃は何も考えなかったが、なぜ後になって彼が優しくしてくれたこと、彼が言ってくれた言葉の1つ1つが思い出されるのだろう。未練はない。復縁しようとも思っていない。でも目の前の彼が本人だったらどうだっただろうか。人生とは自分が思っているよりも運要素が強いのかもしれない。自分はこうだと主張しても、結局状況が変われば考え方も変わるのだろう。未練はないのであれば、何も思う事はないはずだ。

好きだった。でも別れた。あの日、好きになったのは事実だ。この人の為にもっと鍛えてもっとお金を稼いで幸せにしたいと思った。でも別れたのだ。

右に曲がると、彼を振り向くことなく真っ直ぐ歩いて行った。


記憶の彼方

2018-08-13 21:26:58 | 日記
中学時代に隣のクラスにいた野球部の男の子が好きだった。まだゲイだと自覚していた訳ではなかったのだから、「好き」と明確に認識できていたかどうかも定かではなかったが、それでも思い出の中では「好きだった」事を覚えている。それはそれでいいのだが、今になって不思議に思ったのは、なぜ彼だったのかということだ。当時は既にジムに通っていてマッチョな大学生のスタッフがそれこそいっぱいいた。スイミングでも有名なジムでもあった為か、水泳関連のクラスもいっぱいあり、それこそイケメンスイマーも大勢いた。思い出補正でそう思っているだけで実際はそんなに皆イケてなかったとしてもまだ中学生だった自分には十分すぎる程粒揃いのメンツだったに違いない。なぜ彼らを好きにならず、何の接点も無い隣のクラスの野球部の彼のことが好きだったのだろうか。

全くモテずに1年半ほどヤリ目的のみに特化した時期があった。とにかく鍛えまくって掲示板と発展場でほぼ毎日ヤリまくっていたからこそ分かったことがあった。たまたま射精したいだけでやって来た本当にイケている男達は危険なプレイはしないという事だ。彼氏がいてもいなくても帰る場所があるという事でもある。会社かもしれないし、実家かもしれない。一人暮らしの自宅とは別に誰かに愛されていて、誰かから必要とされていて、そして何かに情熱を注いでいるのだろう。ああこの場所で一番はオレなんだろうと思う事は何度かあったが、それは最高2位までしかここでは相手は見つからないという失望でもある。タオルで軽く隠して通路に立っていると勝手にタオルをまくってチ〇コを握られまくり、一瞥して相手にならない男だと分かり押し退ける作業を繰り返していた。

情熱とは何だろう。仕事にそこまで自分は情熱と呼べるものを注げない。トレーニングがそうだろうか。そう思うと、その究極の状態というか根源に当たるものが部活ではなかっただろうか。自分は何の部活もやらずに就職した。それなりの幸せを手に入れて生きてきたと思うが、部活に明け暮れて就職する人生でもよかった気がする。野球をずっとやってきて、大した企業ではないけど就職しました、高校しか卒業していないけどスポーツばっかやっていたから消防士になりました、そういう人生でもよかったと思うのだ。キャリア、年収、そういった呪縛に囚われてずっと生きてきてしまった事を少し後悔する気持ちもある。でもまた矛盾するが、そう思って軌道修正してきた部分も実はあるのだ。途中で気付きながら諦めて生きてきた訳ではない。可能な限り修正して、今がある。あの時に消防士になっていたら今の生活には辿り着けなかっただろう。

野球に打ち込んでいる彼の姿が好きだった。他の部員ではなく彼だった理由はちょっと思い当たらないが、何か小さな接点があったのだろう。自分もそういう人生を歩めたはずなのに、あの頃は引っ込み思案でスポーツが苦手で何もチャレンジできなかった。だから彼の事が好きだった。憧れていた。なぜ自分は彼の様に生きられなかったのだろう。そんな想いの断片が当時の恋心だったように思う。イケててマッチョなら誰でもいいという訳ではないのは今も昔も変わらないようだ。発展場に行ってもやらないで帰る事が多かったし、やるだけの相手でも、「ここではなかったら好きになっていたかな」と一瞬思える人を選んでいた気がする。


イケメン達へ

2018-07-02 14:09:09 | 日記
中学1年の時に隣のクラスにいたイケメン野球部員の事が好きだったが、中学3年の時には後ろの席にいたヤンキーの事が好きだった。その他にも好きではなかったがカッコいい人達がいっぱいいて、その容姿に憧れた。彼らも年を取っていき、今頃は中年と呼ばれて生きているのだろう。そのうちの何人かはFacebook等で見掛けたが、微かに面影があるものの、よくいるおじさんになっていた。それでいいのだと思った。

自分は彼らに憧れた。実際の彼らに対してというよりも、世の中のイケメンノンケ達にだ。あの容姿だけでなく、そもそもストレートの男性に生まれていたらこんな人生ではなかったはずだ、と。では、こんな人生とはどのような人生なのか。ゲイの友人に囲まれて、ゲイの男性と恋愛をして、ファッションや香水に興味を持ちジムに通う人生のことだろうか。だとしたら、こんなに幸せな人生はないと思っている。ノンケに生まれていたらそれなりの、ゲイに生まれた今は今なりの幸せがあるものだ。仮定に過ぎない別の人生を羨む程バカらしいことも無いと思った。

ノンケとゲイ

2018-06-29 05:23:29 | 日記
ノンケとゲイの顔面偏差値の平均値を比較したら恐らくゲイの方が上回っていると思う。とは言ってもデータがある訳でもなく主観によるものだが、この意見にあまり異論も無いのではないだろうか。理由はいくつかあって、①結婚をしないから②女性的な感覚に近いファッションセンスを持ち、積極的にスキンケアを行なっているから、と、このあたりが該当すると思っている。①によって③自分にお金を掛けられる人が多いから、と波及して理由付けが多くなっていく。でも、少数かもしれないが、メンタルの強さも挙げられると思う。どういう事なのか。

学生時代に既に自分がゲイだと認識していながら、簡単に肯定できるはずもなく、結局そこは「変な自分」としてフタをして生きてきた。社会人になってゲイであると自己を肯定したとはいえ、学生時代に恋愛ができなかった事、恋愛の話が誰ともできなかった事は今でも心に大きな歪みとして残っている。だから変わろうと思った。今からでも取り戻そうと。今からカッコよくなって、凄いカッコいいゲイの男性と恋愛をして、お互いの学生時代の話をいっぱいして共感し合って、皆そうだったんだ、でもこれからは幸せに生きていこうね、と笑い合えたその瞬間に自分の人生は浄化されると信じたのだ。それを自分は、「希望」と呼んだ。どんな手段を使ってでもカッコ良くなろう。それだけが全てだったように思う。その「希望」に向かう事が自分の魅力を引き上げていった。これはあくまで自分の話だが、このような想いがあれば自然と平均値は上がっていくだろう。

ノンケ神話というものがあって、ノンケの方が全てにおいてカッコいいという考え方だ。例えばどこかのジムに行って凄いカッコいい人を数人ピックアップしたら、ほとんどがノンケだろう。そういう意味ではこの考え方は間違ってはいない。カッコいい人だけを並べて比較審査したらゲイはノンケよりは確実に劣るのだ。しかし、平均値となるとゲイの方が圧倒的に上なのだと思わざるを得ない。ジムや駅で見掛けた最高ランクのノンケだけが印象に残るので、どうしても「ノンケはイケる」という話になりがちだが、ノンケの膨大な総数に対していえばレア中のレアであるイケてるノンケだけがゲイに対抗できていると言える。ゲイに関して言えば、見た目がイケている程度であれば割とそこら辺に転がっているのだから。


オンラインゲーム

2018-01-29 22:49:17 | 日記
「オレが守るから下がってて」

「はい」

彼女は、100 VS 100 のバトルが売りのゲームでソロで戦っていた。実はオンラインゲームは初めてだった。マウス操作も慣れておらず中々敵を倒せない事が多かった。スキルや戦略は頭に入れていたが、指が追い付かないのだ。向いてないのかな、とも思ったが好きな世界観のゲームだったので、気を取り直してモニターを眺めていた。

「こっちに来て、回復するから」

「いつもありがとうございます」

初心者ギルドに入ってみた。ゲームよりもギルドでチャットをしているのがまた楽しかった。毎日ログインしているとこんな仮想空間でも友達ができてくる。意地悪な人もいれば面倒見がいい人もいて個性があった。ゲームだから楽しまなくちゃと気楽に勝ち負けを楽しんでいたが、チームプレイである以上上級者が彼女のような初心者のサポートをしてくれて成り立っているのだと少しずつ分かってきた。私がもっと上達すればギルドマスターは楽になるんだわ。そう思うと彼女は真剣にゲームに取り組んだ。

「オレ、違うギルドに行こうと思うんだ」

一番話しかけてくれた男性ユーザーがギルド移籍をすることになった。もっとガチなところでやっていきたいと。心に一筋の風が通り抜けていった。どうでもいいと思っていたゲームの世界で、私自身が少しずつ真剣に取り組むようになっていって、楽しいと思うようになった今、彼が抜ける。フィールドでよくフォローしてくれた事が思い出される。気付いたら彼女も彼の後を追って移籍することになっていた。

中級のギルドに2人で移籍した。人間関係ができていたからアウェイの環境の中でも2人の息はぴったりと合っていたと思う。しかしそんな楽しい日々も長くは続かず、彼は段々とログインをしなくなっていった。スマホゲームをよくやっていたから分かる。もう彼はこのゲームは続かないだろう。なら私が、そう決心し彼女はトップギルドの1つに移籍することになった。

罵倒や煽りを受け、たかがゲームで何をここまで、と思う毎日だったが我慢した。しかしギルドチャットでは名指しで罵倒されるようになり、とある負けた試合では私のせいだと古参の1人から非難された。私とは一緒に出撃したくないと言うのでそれではチームとして成り立たないので私がギルドを抜けることにした。何か情熱というかゲーム愛みたいなものはもう消えてなくなっていた。思えば初心者の私がよくここまで来たものだ。マウス操作もよく分かっていなかったのに今では攻略サイトが作れる程だ。上位ギルドでは通用しなかったが、自分のせいだけでもなかったと思いたい。またソロに戻ってしまったが、時々知らない人達に戦場で声を掛けられるのでさみしくはなかった。また昔のギルドに戻ろうとは思わない。色々な事を思い出しながらプレイしていると、1人で始めたゲームだったのに孤独を感じた。

「オレが守るから下がってて」

あの彼は、結局ログインしなくなって引退した。大学生だったのだろうか、それとも社会人だったのだろうか。もし実生活で出会っていたら、ゲーム以上の何かが始まっていたかもしれない。