白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

本因坊戦結果&Master対棋士 第40局

2017年05月24日 21時26分32秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
本日は第72期本因坊戦第2局、2日目の対局が行われました。
封じ手予想は的中!
一間飛びに悪手無しですね。

内容としては、本因坊文裕の雄大な構想に驚かされましたね。
やや苦しい戦いになり、攻めの強い本木克弥挑戦者としては不本意だったのではないでしょうか。
第3局以降での巻き返しに期待しましょう。

さて、本日はMaster対棋士60番碁の第40局をご紹介します。
これでようやく3分の2に到達しますね。



1図(実戦)
孟泰齢六段(中国)の黒番です。
孟六段は4回目の登場ですね。

白1の肩ツキや白5のツケが驚きの打ち方です。
多くの場合、肩ツキやツケを打つと相手が固まります。
しかし、黒△の大ゲイマ締まりは隙のある構えです。
自ら固めてしまっては勿体無いと考えるのが、一般的な棋士の感覚です。





2図(実戦)
黒1、3は古くからある手段です。
これに対しては白Aか、ノゾキを防いで白Bと守ることがほとんどです。





3図(実戦)
しかし、実戦は受けずに白1の伸び!
手を抜かれた黒は2とハネましたが、これは当然の一手です。
お互いの根拠と地の要点であり、これを先手で打たれては白がつらい、というのが常識です。





4図(実戦)
しかし、後に白△と下がり、黒△一団を攻める展開になりました。
さらにその後・・・。





5図(実戦)
中央に白石を増やしておいて、白△に回りました。
いつの間にか周囲は白石ばかりで、今度はこちらの黒を攻める態勢が出来上がっています。
白リードの局面でしょう。

着手を選ぶ際には将来性が重要な基準になりますが、Masterはずっと先まで見通しているようです。

封じ手予想&柯潔九段ーAlphaGo 第1局

2017年05月23日 17時02分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は本因坊戦第1局の1日目が行われました(まだ対局中ですが)。
本木克弥挑戦者の意欲的な実利作戦に対し、本因坊文裕も思い切った中央作戦で対抗!
そして、とうとう上辺から空中戦が始まりました。
明日はどんな戦いになるのか、楽しみですね。

封じ手予想は深く考えず、直感でM-8の一間飛びにします。
本当の直感は一路左のカケなのですが、それはちょっと無理そうなので・・・。
手の広い場面なので、当たる確率は低いですね(笑)。
明日行われる2日目の戦いも幽玄の間で中継されます。
ぜひご覧ください。


また、本日は柯潔九段とAlphaGoの三番勝負、第1局が行われました。
私が印象に残った場面をご紹介しましょう。



1図(実戦)
柯潔九段の黒番です。
やはり出ました、序盤早々黒1の三々入り!
また、左上は近年では珍しい空き隅への三々打ちです。
どちらも柯潔九段が実戦で試していた手ですね。

想像ですが、柯潔九段自身もこれらの打ち方が最善手であるとか、AlphaGoに勝ちやすいといった感覚は持っていないと思います。
ただ、この打ち方に対するAlphaGoの対応を見たかったのではないでしょうか。
何しろ、人類のレベルを遥かに超えている相手との三番勝負です。
いかにして1局勝つかという戦いなのです。
本局も当然全力は尽くすとはいえ、まずは様子見といった所でしょう。





2図(実戦)
白△まで進行しましたが、どう見ても黒が良いとは思えませんね。
柯潔九段もそう感じているはずですが、あえてこの進行を選んだのでしょう。





3図(実戦)
黒△に挨拶せず白1、3の転身とは、鮮やかなものですね。
ちょっと気が付かない打ち方です。
正直に白2子を逃げて行くと、下辺一帯の白模様に悪影響を及ぼすということでしょう。





4図(実戦)
黒△と白△を取り合う分かれになりました。
白△が大きいようですが、白としては取られてしまった方が後が楽なのです。
白1に回って白リードでしょう。





5図(実戦)
黒1に対して、白2~6の対応も人間にはなかなか気が付かない打ち方です。
石の形だけ見れば、左下隅がスカスカで気が引けるのですが、むしろ黒に侵入を強要しているのです。





6図(実戦)
左下隅で黒を生かしても、白△に回れば黒△が風前の灯火です。
こうなっては、棋士なら全員白有利と判定するでしょうね。
かなりの差が付いたように感じました。

この後は色々あって細かくなりましたが、結局黒が良くなる場面は全くありませんでした。
AlphaGoの隙の無い強さを示した1局でした。
勝負としては、明後日25日(木)の第2局以降が本番ですね。

Master対棋士 衝撃度ランキング

2017年05月22日 23時19分02秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
明日は第72期本因坊戦第2局が行われます。
勢いに乗る本因坊文裕が連勝を果たすか、本木克弥挑戦者が番碁初勝利を挙げるか?
七番勝負の行方を占う上でも、重要な1局ですね。

また、明日からはついに柯潔九段がAlphaGo(Master)と対決します!
1年前に李世ドル九段と対局した時とは、比べ物にならない強さに到達している筈のAlphaGo・・・。
柯潔九段は、人類代表として一矢報いることができるのでしょうか?
こちらも大変注目の戦いです。

ところで、私はここまでMaster対棋士の60番碁を、第39局までご紹介して来ました。
良い機会ですから、その中で私が印象に残った5つの打ち方をランキング形式で振り返ってみたいと思います。



第5位・筋悪攻撃!
棋士なら見向きもしないような筋の悪い手を、Masterは平然と繰り出しました。
これで上手く行くはずがない、というのが棋士の感覚です。
しかし、Masterはそういった常識を次々と破壊して行きました。
この打ち方は第5局で現れました。





第4位・いきなりのツケ!
大ゲイマは足が早い代わりに薄いシマリであり、無暗に固めてはいけないというのが常識でした。
しかし、こんな早い段階でのツケ・・・。
それも滅多にないような位置です。
思いもよらない発想と言えるでしょう。
この手は第10局で現れました。





第3位・肩ツキ連打!
こんなに早い段階で肩ツキを連打するなんて・・・。
これまでの常識では考えられない打ち方でした。
第2局をはじめとして、肩ツキは多くの対局で現れました。





第2位・本因坊道策・現代に蘇る!?
白1とわざわざ狭い所に入り、白3、5の派手なサバキ!
史上最強と名高い、本因坊道策を思わせる着想でした。
この打ち方は第22局で初出しました。





第1位・いきなりの三々入り!
皆様の予想通りだと思います(笑)。
私が24年間で培って来た囲碁観をひっくり返そうとするかのような、信じられない一手でした。
この手は認めたくないものです。
第23局で初出しました。

明日からの勝負では、こういった打ち方が表れるかどうかにも注目ですね。

石の価値

2017年05月21日 23時03分51秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は第4回会津中央病院立葵杯、準決勝が行われました。
決勝に勝ち進んだのは、謝依旻会津中央病院杯藤沢里菜女流本因坊でした。
両者は女流三冠と二冠であり、本命同士がぶつかることになりました。
正に頂上決戦といった印象ですね。
来期から挑戦手合制になることもあり、優勝には例年以上に大きな意味があります。
決勝第1局は6/16(金)に行われます。
ぜひご覧ください。

さて、本日も指導碁を題材にします。
テーマは石の価値です。



1図(テーマ図)
白△と守った場面です。
次の黒の一手は、AとBどちらでしょうか?





2図(正解)
黒1と傷をしっかり守っておくのが本手であり、正解です。
白2と守るぐらいですが、そこで黒3、5などと攻めながら左辺を大きくして行きます。
黒にとって理想的な展開でしょう。





3図(実戦)
実戦は黒1と切りました。
黒△を取られても白△を取れば良いという発想ですが、どうでしょうか?





4図(実戦)
白5までとなり、確かに白△は取れました。
黒1子との振り替わりは互角に見えるかもしれません。
しかし、実際には違います。

黒△は絶対に死なない強い石であり、そこに張り付いている白△は価値が低いのです。
そこから地を増やしたに過ぎないのが本図の進行です。
白3子を取っている間に中央に白石が増え、攻めが狙えなくなってしまいました。
また、左辺を切られたことにより、左下一帯の黒も薄くなっています。

分断によって両方の石を攻められると最高ですが、カス石を切っても喜んで捨てられてしまいます。
2図のように、丸飲みする勢いで大きく攻めるのが厳しい攻めなのです。
私の本にも、ちゃんと「弱過ぎる石は取らない」と書いてあります(笑)。

2目の頭

2017年05月20日 23時53分52秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日、は第4回会津中央病院女流立葵杯が開幕しました。
予想通りどの碁も熱戦でしたね。
明日は12時から準決勝が行われますので、ぜひ幽玄の間でご覧ください。
また、13時25分からは囲碁プレミアムで大盤解説会の模様が中継されるようです。

さて、本日は指導碁を題材にします。
6子局の序盤です。



1図(テーマ図)
白△とツケた場面です。
指導碁ではこういう形に持って行くことがよくあります。
相手の方が石の形をどれだけ理解しているか、数手の対応でよく分かるからです。





2図(実戦)
黒1とぶつかり、白2と押さえられました。
こう打たれる方が物凄く多いのです。
私の経験では、級位者なら5割は超えますし、有段者でもこう打たれる方が珍しくありません。

白△に石がある以上、黒1は自ら2目の頭をハネられに行く手なのです。
白2となった時にはじめて気が付き、尻尾の方もハネられないように黒Aなどと守りますが、白Bとなって白を固めただけの結果に終わります。
ツケにブツカリは悪形の代表なのです。
時にプロがこういう手を打つこともありますが、それは特別な理由がある場合だけです。





3図(参考図)
ツケにはハネよ(伸びよ)という訳で、黒1はそう悪くありません。
白2が自然な対応ですが、ここで続けて黒Aとぶつかったのが前図です。
本図の方がはるかに勝ります。

ただこの黒1、正しくは伸びではなく下がりですね。
行き先が盤端ですから・・・。
ツケに下がりというのは少し遠慮した打ち方なので、もう少しのびのびした手を打ちたいものです。
置き碁なので当然ですが、周囲には黒石が多いという好条件もあります。





4図(正解)
黒1のハネが正解です。
白2には黒2と伸び切り、白の根拠を奪いながら次に黒Aの分断を狙います。
今までの図に比べて、いかにも前に進んでいる感じがしませんか?





5図(正解変化)
黒1に白2の引きなら、そこで黒3のブツカリです。
白4と押さえると白が空き三角の愚形になるからです。
そこで黒5と切れば有利な戦いになります。
白は4と押さえずに5と引くのが石の形ですが、それも黒4からの切断が残ります。

2目の頭を自らハネられに行くのは、アマの皆さんの間に常に流行している病気です。
囲碁の上達には石の形を身に付けることが重要ですから、意識して取り組んで頂きたいですね。