白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

シチョウ

2018年09月11日 23時59分59秒 | AI囲碁全般
<本日の一言>
日本棋院で、対局中の棋士の電子機器使用に関する規制が強化されました。
来月からは休憩時間も含め、常に預けておかなければいけません。
やむを得ないことですが、これはAIの進化による負の影響ですね。
このまま規制を強化しようとすれば、休憩時間の外出禁止、会話制限などと際限がありませんが、どうなっていくのでしょうか?
</本日の一言>

皆様こんばんは。
日本棋院ネット対局幽玄の間では、毎日棋士とAIの練習対局が行われています。
今回は9/10に行われた、金澤秀男八段とELFopenGoの対局をご紹介しましょう。
ちなみに、ELFopenGoの開発元はFacebookです。
当然のように人間超えを果たしており、幽玄の間での対棋士成績は70勝1敗・・・。



1図(テーマ図)
金澤八段が黒△とツケた場面です。
これは一種のシチョウ当たり作戦ですね。
このあたりに黒石を増やして、黒Aからのシチョウを成立させる狙いです。





2図(実戦)
その後、黒1の切りを決行!
しかし、平然と逃げるELFopenGo・・・。
まさか得意のシチョウ間違いでしょうか?
現在唯一の1敗も、シチョウ間違いによるものでしたが・・・。





3図(実戦)
白△まで進みました。
黒Aには白Bで4子とつながりますから、シチョウ不成立です。
今回はシチョウ間違いではありませんでした。

ということは、金澤八段のシチョウ間違いでしょうか?
しかし、棋士は滅多にシチョウを間違えないものです。
もっとも、数少ない例外をタイトル戦で披露した棋士もいますが・・・(笑)。





4図(実戦)
黒1の当てが両当たりとなって、黒3と抜くことができました!
これが金澤八段の読み筋だったのです。
ただし、これを実現させるために払った犠牲も相当なものです。
白4の所を含め、なんと18箇所もの断点が残ってしまいました。

俗に、「シチョウの逃げ出し7目損」「シチョウの追いかけ6目損」などと言います。
ということは、取れないシチョウを20回ぐらい追いかけた黒の損害は120目!?
もちろん、この手の数字にはさほど根拠がありませんし、一手一手の罪はだんだん小さくなっていくものですから、実際の損はそこまで大きくありませんが・・・。

ではどちらが良いかということになりますが、これは判断不能ですね。
これまで何万局もの棋士の対局を見てきましたが、こんなにシチョウを追いかけた碁は数えるほどしか見たことがありませんから・・・。
公式戦では怖い打ち方ですが、練習対局だからこそ思い切れたところもあるかもしれませんね。
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