白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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「捨てる」と「見捨てる」

2018年09月10日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>
本日は強い雨が降りました。
私は雨には濡れやすい方です。
体積がありますからね・・・。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
現在、雑誌「囲碁研究」にて「捨てる石と助ける石の見分け方」という講座を連載中です。
今回はそれにも関連することをお話ししましょう。



1図(実戦)
先日のサマー碁キャンプでも使った題材です。
5月30日に行われた朴永訓九段(黒)と范廷鈺九段の対局で、幽玄の間でも中継されました。

さて、白1に対して黒2から上下を分断された場面です。
周辺は黒の石数が多く、いかにも白が苦しそうですね。
こんな時は、石を助けることにこだわらず、捨てることも意識して打つべきです。





2図(失敗図)
ただ、このように白△をあっさり差し上げてしまうのはどうでしょうか?
助けることによる苦戦は回避できましたが、白の得たものがほとんどありませんね。
これは見捨てる打ち方です。
「助けるよりはマシだろう」という考え方に基づくもので、時にはそのような決断をすべきこともあるでしょう。
ただ、できれば捨てるにしても、その代わりに利益を得たいものです。





3図(実戦)
実戦は白13まで進行しました。
担ぎ出したようですが、Aの断点が残ったままです。
これは「捨てても良い」という考え方に基づく打ち方と言えます。
無理に助けようとはしないけれども、チャンスがあれば助けるということですね。

これを何が何でも助けようとしたり、逆に逃げることを完全に放棄してしまうと、作戦の幅が狭くなってしまいます。
柔軟な考え方が大切です。





4図(実戦)
実戦はこのような結果になりました。
白×は捨てましたが、その代わりに白△までと右辺でしっかり治まることができました。
苦戦を避けた上に利益も得ていて、最高の捨て石と言えるでしょう。

まず石を捨てる発想を身に付けることは大切ですが、よりレベルを上げるには捨て方も考える必要があります。
本局は着手そのものは難しいですが、考え方としては参考になるでしょう。