白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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シチョウ

2017年05月06日 22時42分39秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された対局をご紹介します。
童夢成六段(中国)と李世ドル九段(韓国)の対局です。
個人的には日本棋士以外の対局にはあまり興味を持てませんが、この対局は別です。
序盤から信じられないような展開になりました。



1図(実戦)
李九段の白番です。
白1とシチョウに抱えましたが、黒2と逃げられました。
白A以下追いかけても、黒△が邪魔で取れないではありませんか!

俗説ですが、取れないシチョウを追いかける手は6目損と聞いたことがあります。
深い根拠のある数字ではないでしょうし、実際のところ6目までは行かないと思いますが、酷い損になることだけは間違いありません。





2図(実戦)
李九段が取れないシチョウを追いかけたことにはビックリです。
しかし、話はこれで終わりません。
今度は白1と逃げ出しました!
しかし、黒2と当てられ、シチョウになっています!
一見すると白△に当たりそうですが、すり抜けて取られてしまうのです。

シチョウに取られている石を逃げ出そうとする手は7目損と言われています。
具体的な数字はともかく、取れないシチョウを追いかけるよりさらに悪い手と言えます。





3図(実戦)
そして、白1と取れないシチョウを追いかけ、シチョウに取られている石を白3と逃げ出しました!
かつて世界最強と呼ばれていた李九段、まさかシチョウが分からなくなってしまったのでしょうか?





4図(変化図)
もちろん、そんなことはありません。
黒1に対しては、一例として白8までの手順が考えられます。
白6がシチョウ当たりになり、黒Aのシチョウが成立しません。
お互いに取れないシチョウを追いかけて損をした格好ですが、黒の方が損が大きいと判断したのでしょう。





5図(実戦)
実戦は黒が前図のような進行を嫌い、黒1、3とシチョウを放棄!
白としては右下で取れないシチョウを追いかけた代わりに、右上ではシチョウに取られていた石を逃げ出すことに成功しました。





6図(実戦)
それから20数手進んだ場面です。
右辺は黒地になりましたが、白は下辺、左辺に地歩を進めました。
さらに黒△、黒〇への攻めを狙える状況になっています。

流石李九段、天才的な打ち回しでした。
碁には色々な打ち方があるのですね。
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