白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

ニューヒーロー

2018年08月03日 22時11分18秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第43期碁聖戦第3局が行われました。
結果は、挑戦者の許家元七段が白番中押し勝ちを収め、3連勝でタイトル奪取!
ついに井山碁聖の七冠独占が崩れました。

圧倒的な強さを誇っている井山碁聖ですが、それが永遠に続くことはありません。
ただ、井山碁聖の力が落ちてから誰かがタイトルを奪ったとしても、若手が強くなったということは証明できないでしょう。
そういう意味でも、許七段の勝利には意義がありますね。

さて、それでは私の印象に残った場面をご紹介しましょう。
なお、対局の模様は日本棋院ネット対局幽玄の間やYoutubeの日本棋院囲碁チャンネルにてご覧頂けます。



1図(テーマ図)
この場面で左下方面に打つとすれば、ほとんどの棋士は白Aでしょう。
まず自身の形を整え、"後で"黒×の攻めを狙います。
ところが・・・。





2図(実戦)
許七段の選択は、白1、3のツケ切り!
「"後"が来る保証なんて無い、"今"行くんだ!」
と叫んでいるかのような、激しい仕掛けです。





3図(実戦)
続いて、このツケも強烈でした。
強引に黒の頭を押さえ付けてしまおうというのですね。
これも、いかにも許七段らしい手だと思います。





4図(実戦)
白が天元の左にハネた場面では、白が楽勝の碁と感じました。
ところが、井山碁聖も黒△の切りという妙手を用意していました!
流石の読みです。





5図(実戦)
下辺黒模様がどれだけまとまるかの勝負となりました。
白はどこに入るか悩ましい場面ですが、許七段の選択は白△!
凌ぎの場面でも、黒に目一杯に迫っていきましたね。


シリーズを通して、許七段が持ち味を存分に発揮した印象です。
今年は他棋戦でも圧倒的に勝ちまくっていて、むしろ何かタイトルを取らない方がおかしいぐらいのものでした。
それでも、井山碁聖がストレートで敗れるとは驚きでした。

これで他の若手も、自信を持って七大タイトル獲得を目指せるようになるかもしれません。
どれだけ活躍していても、やはりタイトルを取れるか取れないかでは大違いです。
碁界全体に活気が広がると良いですね。