白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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余七段、王座挑戦!

2016年09月08日 17時37分18秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日第64期王座戦の挑戦者決定戦が行われ、余正麒七段高尾紳路九段を白番中押しで破って挑戦権を獲得しました。
それでは早速対局の模様を振り返っていきましょう。



白△と黒の山型の構えに打ち込んで行きました。
置き碁でもよく出来る構えなので、ここからの打ち方は覚えておくと便利です。





左辺で白が生きた後、白1、3で外側の黒に寄り付いていきました。
打ち込んでただ地を荒らしただけでは大した事はありません。
左辺黒の根拠を奪った事に価値があり、こういう手が狙いになります。





黒1、3が手筋で2目を捨てて繋がりましたが、白は全体の黒を狙っています。





そこで黒は下辺に仕掛け、黒△までしっかり補強しました。
高尾九段らしい石運びです。
右辺黒もますます大きくなってきたので、ここで白1と侵入しました。





黒は攻めを狙いますが、白は一歩一歩の打ち方で眼形を作っていきます。
なんとなく中央に逃げるよりも、しっかり生きてしまおうという打ち方です。
余七段の印象は一言で言えば「しぶとい」です。
しっかり読み切って打つ碁で、なかなか隙を見せません。
この打ち方も余七段らしいと言えます。





白AとBが見合いで無事治まる事に成功しました。
お返しに黒1と打ち込んで新たな戦いが始まります。





打ち込んで来た黒をとっちめたくなりますが、無理せずしっかり傷を守って生かしました。
白Aの切断が残って損をしていないと見ています。
不完全な右上を白5と守り、これで自信ありという事でしょう。





黒1は大きいヨセですが、白2も手厚い好点です。
白、落ち着いた打ち回しです。





白△まで、薄かった中央に地が付きました。
こうしてみると確かに形勢は白が良さそうです。





黒△に対して、白Aがいかにも大きなヨセです。
しかし黒Bと飛ばれると白全体が薄く、厳しく苛められてしまうかもしれません。





そこで白1が好手で、決め手となりました。
白3まで中央をしっかり守り、黒4を譲っても白5に回れるので十分です。
これで白の勝ちが決まりました。
後は隙のないヨセで締めくくっています。


一力七段に続いて若手が井山七冠への挑戦権を獲得しました。
高尾九段も名人挑戦中ですが、果たして誰が井山七冠を倒すのでしょうか?
それとも井山七冠が全員返り討ちにしてしまうのでしょうか?
いずれも眼が離せない戦いになりますね!