白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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本日の対局

2016年09月29日 20時33分18秒 | 対局
木曜日は棋士の手合日です。
それでは本日も幽玄の間で中継された棋譜をご紹介・・・ではありません。
本日は私も3か月ぶりに対局しました。
これだけ間が空くと自分もプレイヤーである事を忘れそうになりますね
それでは振り返っていきましょう。



1図(テーマ図)
私の白番、黒はアンティ トルマネン初段です。
アンティ初段はフィンランド出身、久々に誕生した青い目の棋士です。
日本語もスラスラと操ります。
将来は海外普及で活躍するでしょうが、今は修行の時。

さて局面は白番です。
ここまでの進行に誤算があり、形勢は悪いと思っていました。
ひとまず白△を取られるわけにはいきませんが、私はどう打ったと思いますか?





2図(変化図・黒無理)
白1、3と1目取れば5子が取られる事はありません。
黒4と無理やり連絡を止めようとすれば白5でAとBが見合いになり、黒崩壊します。





3図(変化図・白不満)
しかし黒は無理に取りに行かず、黒4などと中を打ってくるでしょう。
白は黒Aに備えていずれもう一手かかる形です。
黒Bと「2目の頭」をハネる絶好点が残っている今、大勢に遅れる恐れがあります。





4図(実戦)
そこで実戦は白1、3と打ってみました。
少しでも黒に響かせながら連絡する狙いです。
次にAとBを見合いにしています。





5図(変化図・黒正着)
ここで黒1と白からのハネ出しを防ぐのが正着です。
白2となって、白としてはAの切りが残るので3図より良い繋がり方です。

しかし黒としても左上の4子はカス石なので、Aと切られても捨てて全く問題ありません。
黒3、5などと打って左辺白2子は逃げにくい形です。
こうなると黒△がいかにも良い所を押しているのが分かりますね。
黒優勢です。





6図(続・変化図)
この後もし白1と伸びれば黒2、4と左右を繋げてしまいます。
白2子は完全に立ち枯れ、中央の黒模様は両手が入る大きさです。
黒圧勝でしょう。





7図(実戦①・黒失敗)
ところが実戦は黒1と連絡を妨げて来ました。
白2に黒3で取れるという読みですが、これは意外でした。
どうも魔が差してしまったようです。
確かにこれで白を取れるのですが・・・





8図(実戦②)
黒2や6といった形の悪い動き方をしなければいけないのがつらい所です。
黒6でこちらの黒は脱出できていますが・・・





9図(実戦③)
白1、3でこちらの黒が止まってしまいました。
白△との攻め合いは黒が勝っていますが、一手差なので・・・





10図(実戦④)
白2から6まで、全て先手になってしまいました。
この後白AとBも先手です。
白8に回って上辺一帯が真っ白になってしまいました。

こういう展開、見覚えがありませんか?
そう、昨日の農心杯の右下隅での変化とそっくりですね。
この碁でもやはり白が良い分かれとなりました。
ここでのリードが大きかったようで、最後は白中押し勝ちとなりました。





11図(再掲)
6図を再掲します。
この図と前図、どちらが良いかは一目瞭然でしょう。
碁では取れる石をあえて取らない方が良い事もあるのです。


なお本日の農心杯は中国の范廷鈺九段が韓国の李東勲八段に勝ち、2連勝となりました。
明日の第4局が第1ラウンドの最終戦、日本チームは2番手の張栩九段が出場します。
張九段は世界戦での優勝経験があります。
なんとしても范九段の連勝を止めて貰いたいですね。
皆さん、幽玄の間で応援しましょう!