白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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小中学校団体戦

2016年08月01日 21時19分13秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
先日の高校選手権に続き、小中学生の全国大会が行われています
本日は団体戦の決勝が行われました。
結果は小学校の部は川崎市立東菅小学校、中学校の部は京都府立洛北高等学校附属中学校が優勝を決めました。
それではそれぞれの戦いを振り返って行きましょう。



小学生の部決勝から見て行きましょう。
川崎市立東菅小学校(黒)対京都市立御所南小学校戦です。
黒1と上辺の白2子に先制攻撃を仕掛けて行きました。





黒2、4と右上を目一杯に広げるのに対して、白は5と左上黒に迫って行きました。
両者元気一杯の戦いです。





ただし、黒1とコウを取ったのはいけませんでした。
白4が絶好点で、黒が急に苦しくなってしまいました。





左上が眼二つの生きになっては黒非勢です。
という所で黒1以下が思い切った打ち方で、なかなかのものです。
右辺全体を目一杯に広げています。





黒の必死の追い上げに対し、白は各所で確実に対応しています。
この落ち着きが持ち味なのでしょうね。
それが特に表れたのが白1で、深すぎず浅すぎずの素晴らしい踏み込みでした。





黒は右辺を囲い切りましたが、白8で左辺も大きくまとまりました。
これで白優勢です。
しかし最後にポカが出て好局を失ったのは不運でした。
こんな時は自分を責めてしまいがちですが、人間が碁を打つ以上避けられない事です。
何しろトッププロでさえ同じような事をやっているのですから・・・





ケースその1です。
左図黒1に白2とあらぬ方に手が向かい・・・

右図黒5までシチョウ!
2日制のタイトル戦が1日で終わる珍事となりました。





ケースその2です。
左図黒△と、なんと自ら当たりに突っ込んでしまいました!
5子に止まらず左下黒が全滅、80目損して当然即投了する羽目に・・・
この1手はNHK杯の伝説になっており、長く語り継がれて行くでしょう(笑)

トッププロでさえこんな事をやらかすのですからこれはもう運命のいたずらとしか言えません。
気持ちを切り替えて次へ向かって欲しいですね。





さて、次は中学校の部を見て行きましょう。
駒場東邦中学校(黒)対京都府立洛北高等学校附属中学校戦です。
小学校の部とは打って変わって穏やかな布石でした。





黒の方が仕掛ける棋風のようです。
黒1~5と積極的に立ち回りました。
対する白は6、8と落ち着いており、これも棋風でしょう。
ここで黒9とは面白い手でした。
AやBの一間飛びなら普通の手ですが、どちらももう一つと感じたのでしょう。
自分の頭で考えなければこういう手は打てません。





下辺でも黒は積極的に仕掛けていきました。





黒は下辺の荒らしに成功しましたが、お返しに白1と打ち込んで行った場面です。
黒2、4と強硬に白の退路を断ちましたが、ここで白は鮮やかなサバキを見せてくれました。





白1を一本利かして白3です。
自然に下辺の白と握手し、美しい石運びです。
黒4、6と守らせ、先手を得て白7の攻めに回って白好調です。





上辺を白1と分断に行ったのも良いタイミングでした。
白がポイントを挙げています。
それでもまだ勝負は長いと思われましたが、この後も黒の僅かな隙を見逃さずリードを広げて行きました。
黒は特段悪い手を打っていないのですが、自然体の白が勝利を引き寄せる結果となりました。
見事な1局だったと思います。


明日は個人戦が行われます。
今年もレベルが高く、誰が優勝してもおかしくありません。
選手たちの健闘に期待しましょう!