写真をとりすぎると何が起きるのかというのは、あまり経験しないほうがいいことだ。どういったことが起きるのかといえば、土門拳は「鬼が来る」と表現した。冥界と幽界が混雑した世界が目に広がるというものだろうか。
私の場合、目の前にある物体の意味が消えた世界が現れる。ものすごく異様な世界だ。ただその等質性の世界を無邪気に切り取って行けば、なぜかいい写真になる。もともと写真を撮る時には先読みばっかりするわけだが、意味のない世界では物理法則のみで世界が動いているわけで、先読みも簡単だ。車という色の塊が目の前を通り過ぎ、建物はリズムを不規則に刻む。人の意味もなくなり、その眼の動きと光だけがこちらに純粋に伝わる。その世界を切り取る反応速度はおよそ0.3秒から0.2秒で一定しているのはカメラのせいだ。そのリズムが狂うたびにイライラする。
要は過集中現象なのだ。ゾーンという人もいるがあまり健全ではない。コントロールは可能なのだが、それがボーっと出っぱなしになるとヤバイ。それが出たのは昨日の午後だった。
どうもこういった状態になると事故率が高くなる。夢中になって、というやつなのだが、それより深刻なのは立体感のない世界だからだ。意味のなさは距離までも失わせてしまう。目で見えているものではない世界だからしょうがない。そして意味のない世界なら、罵詈雑言言いたい放題になる。さすがに経験でこれは避けているが、今私にあって話を聞くと爆裂トークを聞く羽目に陥るだろう。
だから今日は昼に仕事をして、あとは泳ぎにいった。だがそれでも収まらない。さてどうしよう。
松園の春は綺麗なのに。イタヤカエデの並木の花も綺麗だし桜も綺麗。それに気がつかないのは、意味のある世界に生きている人なのでしょうが、今年のイタヤの花は美しいぞ。