どうでもいいこと

M野の日々と52文字以上

シリア・メモ2

2013-09-14 10:44:06 | インポート
シリア情勢をイスラエルから見ると、結構面白い。

イスラエルは第一次世界大戦にイギリスが出した「パルフォア宣言」からはじまっている。戦費欲しさにユダヤ人と妥協したとも言えるが、初代イギリス・ロスチャイルドがイギリスで初のユダヤ人男爵位を貰うなど、イギリスにもの凄い貢献をしている。2代目は動物学者として有名だが、イギリスのユダヤ人コミュニティーの長である。彼にアーサー・ジェームズ・バルフォア外務大臣が、シオニズムを認めた書簡のことを、バルフォア宣言という。


ただ実際のところイスラエルはイギリス委任統治になり、建国は撤回、ユダヤ人の居住地(ナショナルホーム)の建設は認められる事となった。そこで世界各国からユダヤ人が入植してくるのだが、現地に住むパレスチナ人との争いが絶えなかった。詳しくは知らないが、土地の所有概念がどうも違ったらしい。そのもめ事をどうするのかで、ある時はユダヤに、ある時はパレスチナにと言った具合でイギリスもかなり苦労していた。そのうちパルフォア宣言に基づいて、イギリスはイスラエルの簒奪者と考えるものが現れる。つまりテロの頻発です。この状況に音を上げかけていたイギリスですが、アメリカが手を差し伸べます。「ユー、手を引いちゃいなよ、約束守るのはクールだゼ!」と言ったかどうか解りませんが、イスラエル建国が認められます。

問題はシリアです。特にシリアです。なぜかと言えばイギリスの三枚舌に一番煮え湯を飲まされていたからです。レバノンもヨルダンもイスラエルも俺のもんじゃなかったのか!そう言った思いがあります。その上イスラエルでのユダヤ教徒とイスラム教徒の対立もあります。イスラム教徒にとっては信仰を同じにしているものが苦しんでいるのを見過ごす訳には行けません。ましてやユダヤ教徒の国が出来るとなれば大義に反します。

ということで、第一次中東戦争が起きるのですが、歴史上日時がはっきりと解っている建国も滅多にない。1948年5月14日の建国宣言直後から戦争が始まる。
歴史上滅多にない包囲戦だ。レバノン、シリア、トランスヨルダン、イラク、エジプトが参加している。そしてゲリラ戦でイギリスから武器を奪ったりしていたゲリラがいるとはいえ、そして世界中のユダヤ人が支援するとはいえ、人口でいっても圧倒的に不利なイスラエルが、なぜか勝ったのだ。

理由は、生まれたての子羊に鷲が何羽も飛びかかったが、鷲同士が喧嘩してしまった。そういったことだ。
だが地域内で最大のエジプトは面子丸つぶれ、国境が最も長いシリアに至っては、確かに分割はされていて制限はあったが、面子どころではない。これが現在のシリアを作るアサド政権に繋がる。

アメリカのイスラエル贔屓と言うのがある。確かに経済の問題や、ホロコーストの問題もあった。彼らのロビー活動もある。だが、この時の中東のまとまりのなさ、というか露骨すぎる領土拡張の意思にあきれかえったと思う。イスラエル支持もその辺りにあると思うのだが、イスラエルが領土拡張の意思を出し始めると、アメリカもかばいきれなくなってしまう。

この後イスラエルはこの恐怖から抜け出せない国家になった。もの凄い科学技術もそうだが、軍事費の投入とかでも異常な国家になった。その後の中東戦争でも勝ち続けるが、勝てば勝つほど妥協が出来なくなる。
そして迎え撃つ、アラブもそうなる。特に国境があるシリアにとっては、最も効果的な兵器を考える。化学兵器だ。

化学兵器の、変な所の安全性と言うのがある。反応が速い物質なので簡単に分解してしまう。だから時間があれば防護服程度でも突入出来るし、もっと時間を置けば全く安全に動く事が出来る。核兵器や生物兵器との最大の違いだ。
イスラエルも戦略核で防御しても実際には使用出来ない。イスラエルが小国すぎるからだ。シリアに使ったら自分に跳ね返る。イラクやイランを牽制するには有効だが、現実的には使えない兵器だ。

イスラエルにとっては、シリアはとても嫌な国だった。テロリストの中継点でもあるし資金や資材援助もある。イスラエルに直接ちょっかい出さなくとも、周辺には支援する国家だし、化学兵器の保有もかなりある。エジプトとは和平を結んだので、一応は問題がない。モルシ政権は無くなった。シリアは現在内戦中だ。ハリネズミ国家と言われたほどの軍事国家では、安定期でもある。隣国の化学兵器が無くなる可能性も出て来たのだ。


ここまで書かないと、次には行けない。「米国務長官がイスラエル首相とシリア・中東和平協議、15日に」

なぜこの会談があるのか。いまシリアが化学兵器を破棄出来るかどうかがあるからだ。これが実現したらイスラエルの核兵器も縮小出来る可能性がある。イランの核開発問題も収まるかもしれない。


現在シリアをはっきりと支持しているのはイランだけだろう。だがここもイスラムの大義とは少し違う。アサド政権はイスラムと言っていいのかどうかというほどの異端宗派に属する。シーア派の大国としてのメンツとイスラエル憎しでシリアを支持しているだけなのではないのだろうか。最近のイランの動きはかなり現実的で、妥協点が見い出される可能性がある。

今の瞬間にどの程度イスラエルとパレスチナの和平協議が進むか、重要なポイントだ。