日時は全然覚えていないのだが、今あるのは大体こんな所。
まずエジプトなどの動きと同時に、シリアでも大衆運動が起きた。しかしそれをアサド大統領が攻撃してから話しが始まる。宗教的な問題としては、大衆はスンニ、アサドはアラヴィー派なのだが、このアラヴィー派がシーア派の分派なのだが、シーア派の教義が分裂しすぎてよくわからない所もあって、スンニとどの程度敵対するのかはよくわからない。確実に言えるのはこれってイスラム教?と首を傾げるほど変わった宗派です。神殿があるし。
更に、実は中東を勉強していて空白だったのが
シリアだった。ウイキですらこの程度。情報がない。今から思えばこの辺のおかしさに気がつくべきだった。観光で入る事は出来たみたいだから、ある意味解放されていた。それが更に情報を無くしていたと思う。
圧政が伝わっていなかった。そう考える。ただその圧政が徹底していた所に、IT技術でほころびが出来たというのがポイントなのだが、逆にそこまで放置したアサド政権はよほどの自信があったのだろう。
最初は小競り合いだったが、アサドの武器を奪っての内戦になる。ただこの時点では、はっきりと大衆側を支援する組織がない。あったとしても小規模で、体勢を覆すものではなかった。だがアサド側からすれば大きな問題で、攻撃がエスカレートしていった。
しかし報道には自由も無く制限された状況で、世界にこの状態は伝えられなかった。反政府側の映像も検証に時間がかかった。
さてこの状況で初めの化学兵器使用は、スルーされた。アサド側でなければ使えないハズなのだが、どちらの攻撃か誰もが立証出来なかった。
そしてイスラム世界の問題もあった。トルコの大規模なデモ、そしてエジプトのモルシ元大統領の問題、アメリカが撤退する予定のイラク・アフガニスタン、そしてイランの核開発とイスラエルの問題があった。この状況でたとえ化学兵器使用が立証出来ても、火に油を注ぐのは間違いがなかった。
ただエジプトでモルシ氏が失脚したのは大きかった。地中海で最大の国家、しかもシリアの目の前の国家が原理主義を押し込めたからだ。そして大量のシリア難民がはいったトルコ・レバノン・ヨルダンではかなり大変な状況になっている。特にヨルダンでは失業率30%の状態でこうなった。
なお近年日本でもこの問題はネジクレタかたちであった。福島県民差別だ。東電から保証貰ったんでしょ、いいですね、ホテル暮らしでウラヤマシイ~。そういった妬みが長期間になると起きやすい。
難民問題で最大の問題はここだろう。
さてここに来てまた化学兵器の使用があった。ただ、それでも逡巡があった。どちらが使ったかだ。
化学兵器と言うものがどういったものか、多分誰も知らないと思う。まず製造だが、高校生の使うガラス器具では作れないものが多い。例えばサリンだ。フッ素を使うのでガラスは溶けてしまう。オウム真理教事件で、彼らはハステロイドをプラントに使った。次に重要なのは、出来たものの毒性が強すぎるので精製が困難だと言う事だ。というか出来たものを移し替えるだけでも困難だ。もちろん強力なドラフター(空気を吸い上げながら水をまくみたいな特殊なものだろう)があったり防護服があったりすれば可能だが、精製となるとかなり危険になる。漏れだす濃度が高くなるからだ。
なのでプラントの癖がでる。不純物も含めて一気に作らないと事故が起きやすいからだ。高濃度の毒ガスを作れれば良いのだが、絶対残るその不純物で大体産地が解る。
例えば、イラクがクルド人に毒ガス攻撃(マスタードだと記憶しているが)したとき、アメリカが「これってドイツ製でしょ?」といってドイツを脅しました。
毒ガス攻撃から、アメリカはシリア懲罰に動きます。ここはエジプトとイスラエルの情勢が安定して来たからです。特に地政学的にエジプトは重要でした。エジプト沖に艦隊を集結したら何が起きるかと言う事です。イスラエルもイランとの敵対を押さえています。ちょっとこの前までミサイル打っちゃうぞ~みたいな勢いはありません。
アメリカはそこでようやく、人道を歌っている国だし民主党だし、となります。それでも逡巡をします。理由は、プリズム問題です、世界中を盗聴しまくったのが暴露されて、その暴露した人物がロシアに行ってしまいます。アメリカとロシアが対立してしまいます。
プリズム問題なのですが、その前にエシュロン問題もあった訳で、何を今更と、盗聴され放題の日本人としては、そうご近所の噂とかそう言ったものまで含めて、個人情報漏れまくりで個人情報出さないと社会に生きていけない社会と違うようです。
アメリカ人にとっては、その諜報機関が間違った故の、イラク問題があります。あの悪夢が再びと言う気持ちはとてもよく解ります。今までは、政府は我々をだましている、だけだったのが、政府は人のプライバシーまで調べ上げているにもかかわらず、間違いで我々をだました。と2重に信頼を裏切った訳です。
しかしシリアはアメリカのレッドラインを超えてしまいました。アメリカは有言実行の国ですから、軍は当然準備を初めて8月31日には作戦開始となります。しかしここでオバマ大統領が議会に承認をもとめます。シリア攻撃の支持率が9%と余りにも低かったこと、国連査察団の解析を待つべきだと行った考え、イギリス議会がシリア攻撃を否認と条件が悪かったのは間違いがありません。G20での主要国への説得と言うのもあります。
さてこの頃ロシアは変な発表をしています。化学兵器使用を非難してから、シリア政府へ武器供与を行うと言うものです。この武器供与は、先にお金を受け取っていたから契約を履行しないわけにはいかないというもっともな理由がありますが、2年間ほっとらかしていたのになぜ今か。アメリカへの牽制です。
その前に、「この毒ガスって、ロシア製じゃネ~の?」とどこかで聞いたような台詞をアメリカは言ったりしています。これも牽制です。ドイツの時と違ってこれは無視されました。
G20でもシリアの旧宗主国フランス以外は、シリア攻撃に賛成するが参加しないと言った具合でかろうじて11カ国が賛成、後は反対。特にロシアと中国が反対。
一応人権団体ヒューマン・オブ・ライツがアサド側が化学兵器を使用したと確認します。これでアサド側はほとんど黒と認定されました。あとは国連査察団のみです。
ここでイランに目を向けると、毎日おかしな事になっています。まず主席広報官に初の女性を据えました。イランとしては画期的な発表です。その次の日に宗教指導者が「悪魔の行為だ」とアメリカを非難します。この日はヒズボラも非難声明を出していた。そして次の日イランの外相がシリア攻撃が行われた場合、「報復行為は行わない」と火消しに回っているような発言があります。
どうもイランも苦労しているようだ。歴史的経緯からアメリカには反対だが、現実は対立出来ないし、かといってシリアを救う事も出来ない。
パキスタンが奇妙な事をしている。アルカイダNo2を突然釈放した。これまでもアフガニスタンのアルカイダへの説得工作のためにアルカイダの要人を釈放して来たが、ここまでの大物になると何を考えているのかさっぱり解らない。なぜこの時期に解放するのか?
さてアメリカとロシアですが、シリアに毒ガスがなけりゃいいじゃん、と話し合っていたようです。大統領演説の前の日に、ロシアがシリアに毒ガスを第3国に引き渡すという提案をした所、シリア側が一気に賛成、中国はもとよりフランスまで賛成。ただしフランスは期間を設けるとか厳しい内容にはしていますが。世界中が一気にこの方向でまとまろうとしています。
所がですな、毒ガス使用はアサド大統領が認めたものではなかった、という説が出て来ております。現場の指揮官が勝手に使用したと言うものです。となればどこにどの程度毒ガスがあるのかシリア政府は把握していない、となりそうです。そうなれば、引き渡しが困難になるし、隠蔽する部隊も出てきそうです。場合によっては、テロリストに流出する可能性まで出てきました。
多分明日になれば、また状況がガラっと変わっているのだろう。ただ、ここでイスラエルが出てこないのが不幸中の幸いなのかもしれない。
PS
イランがまた変な事を…イランの最高指導者ハメネイ師が「米国のシリアに対する新たな姿勢が本気であり、メディア向けの駆け引きではないことを期待している」。この前悪魔と罵倒したばっかりなのに…もしかするとイランは本気で変わろうとしているのか。ひょうたんから駒でも良いから和解してもらいたいものだ。