「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの受験アドバイス:中学受験の算数・・・その4・子どもの集中力と持続力(耐久力)の一考察

2011年07月16日 | 受験



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前3回で、中学受験に向けて算数の学習をする場合の、指導者と保護者に対する留意点を簡単にまとめて伝授してきました。

まず、公立小学校の学習を完全に定着させ、基礎学力を養成する大切さを指摘しました。

次に、算数の文章題解法において、与えられた条件を整理し問題構造を理解するための、日々の学習での留意点についてお話ししました。

そして前回、問題の構造を理解したうえで、体系化された知識を活用して問題を解いていく、日々の学習法に踏み込んだ内容で、算数指導法を解説しました。

興味ある方は、以下のブログを参照ください。

マッキーの受験アドバイス:中学受験の算数・・・その1・学校の学習定着 

マッキーの受験アドバイス:中学受験の算数・・・その2・文章題を解くための条件整理

マッキーの受験アドバイス:中学受験の算数・・・その3・体系化された知識


さて、上記の3回までの学習方法や学習指導の留意点を理解した上でも、なお保護者や学習指導をする全ての方に共通する、一つの大きな悩みが立ちはだかっています。

それは、算数の問題に取り組む子どもの、集中力であり持続力の問題です。

日常の学習全般を見ている指導者にとっては、自分の教務能力アップに努めても、なおかつ残る課題が、子どもの集中力であり持続力の問題であろうと思います。

たぶんそうした力の源は、子どもの学習意欲であり、知識欲であり、目標を達成しようとする意志なのでしょう。

今回は、受験の算数という範疇を越えて、また指導者側の教務能力や指導に対する情熱を一旦脇に置いて、子どもの集中力と持続力について考えてみたいと思います。

無論、子どもの集中力と持続力は、指導者の教務能力や情熱に影響されることは、疑いようのない事実ですけれども。

子どもの集中力や持続力を、持って生まれた資質として片づけてしまったら、運命論的で対処法など語るに及ばすとなってしまいますので、このような因子を今回は捨象して、子どもを取り巻く環境(後天的要因)に焦点を当てて考えてみます。


私は、大学時代の塾教師や家庭教師経験を経て進学塾を立ち上げ、プロとして生徒に学習指導を行ってきましたが、その長い子どもとの付き合いの中で、近年子どもの資質として、この集中力や持続力が平均的に減退している印象を受けます。

子どもを取り巻く、ゲーム・マンガ・カード・テレビ・携帯電話などさまざまな要因があるのでしょうが、子どもが集中して学習できる環境が少なくなりました。

また、今までの半端な「ゆとり教育」の推進は、生徒から知識欲や進取の気概を奪う結果ともなったと、私は考えています。

合わせて、一人っ子であることに起因する、若干わがままな生活態度が、自分の意に沿わないことでも持続し継続させることの障壁になって、そうした力を減少させているようにも感じます。


学校でも塾でもそうですが、仮に手いたずらをして解説を聞いていなかった子どもが、「分からない!」と叫べば、指導者は「敗北感」を味わいます。

なぜなら、この子どもの「分からない」という言葉の中には、「なんでこんな問題を出すの!」「なんでこんな問題をやらなければならないの!」「先生の説明が分からない!」等の意味が込められているからです。

こうした自分勝手な言動を抑えることができないわがままな子どもにさえ、教える側には細心の配慮が求められます。

経験の浅い教師であれば、「分からない」という言動で、指導する根底がぐらつき、その対処法が分からずに、場合によっては虚無感に襲われるかも知れません。


公立の小中学校でも指導していますが、私が子どもの頃に比べて、学校における教師と生徒(保護者)の関係は、微妙なものになっているように感じます。

実際、子どもの保護者は以前とは異なり、教師と同程度の学歴を有し、教免を取っている母親も相当数に上ると考えられます。

そうした状況が、学校および教師に対する理解につながる場合もあるでしょうが、保護者が教師と同じアイレベルで判断することになれば、そのことが軋轢の原因にもなるでしょう。


(寺のベランダから枝垂れるノウゼンカズラ)


さて、このような子ともを取り巻くさまざまな教育環境因子は、子どもが意欲的に学習し、集中力と持続力を維持して問題に取り組むことに、プラスというより、マイナスに働いていることが多いと考えられます。

団塊の世代が子どもの頃は、食卓の上に並ぶ食べ物が豊富にあったわけではなく、その限られた食料を複数の兄弟が残さずに食べていたはずです。

食べ物に限定しても、えり好みや好き嫌いなど、わがままはあまり許されず、出されたものはできるだけ食べたことでしょう。

しかし、飽食の現代にあって、かつ一人っ子では、その子に合わせた食事を考慮して出すはずですが、それでも好き嫌いをして、食べ物を残しているのが実情ではないでしょうか。

自分の意に沿わないことでも、それが乗り越えなければならない課題であった場合・・・実はこの世の中そんなこともけっこう多いのですが、その課題に取り組む意志の強さは、こうした状況で育つのでしょうか。

勉強大好き!といった子どもは稀で、多くの子どもは自らに「やらなければならない」という義務を課して、その目標を達成しようとする意思で、学習特に受験勉強を乗り越えようとしているように感じます。


また近年、切れやすい・・・こらえ性がない子どもが増えているという話は、巷でよく耳にします。

兄弟が多かった時代、兄弟間の人間関係の中で、社会に出たときの疑似体験が存分にできたわけで、周りの状況を判断しながら行動する社会性は身につく下地がありました。

自分のわがままを押し通せば、目上の者から厳しくたしなめられたでしょうし、感情をストレートに出せば、周りの兄弟から強いリアクションがあったはずです。

言葉だけではなく、とっくみあいや殴り合いのけんかもあったでしょうし、そうした関係の中での経験が、自分の行動を客観的にとらえて、自己規制することに役立ってきました。

したがって一人っ子が多い今の子どもは、こうした点においても、乗り越えなければならない課題があるといえます。


(風に揺れる白蝶草)


それから、困難なことに対処する力は、かつて子どもが遊びの中で、培ったことでもありました。

安全と危険の狭間で遊ぶことにより、自分の身を守りつつ、子どもは冒険の旅に出ることができました。

はたして、学校も社会もそて各家庭でも、不幸にも起きる事故をも想定して、こうした子どもの本来持っている特性を伸ばす許容力を、現代社会では持ちえるのでしょうか。

子どもで満ち溢れていた時代、辛辣な言い方をすれば子どものスペアーがあった時代、『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす』といったことも可能だったのでしょうが、一人っ子が多くなった今、教育的過剰関与と責任の所在を常に確認する訴訟社会が、そんな冒険を許すはずがありません。

万が一に万が一の想定をした上で、子どもの行動を許容する、そうした時代になっていることは明らかです。


学校の校門の扉は閉められ、重々しい鎖と錠前によって通りと断絶し、そこまで仰々しい状態でなくとも、施錠されているのは当たり前の時代になりました。

社会の中のほんの僅かな犯罪的な人間を想定して、本来持つべき学校の役割である、地域におけるコミュニティー形成の場として開かれた学校を、日常放棄してさえ子どもの安全を確保する必要が出てきました。

今の学校は、特に小中学校は、刑務所の如く閉ざされた空間として、地域に立地しています。

この状況は、子どもが今置かれている状況を、端的に象徴的に表しているように、私は思います。


子どもを取り巻く社会と、家庭において想定できる危険性をできるだけ排除することは、子どもの安全に寄与するでしょうが、その反作用として、子どもの冒険心や自主性を殺ぐ結果になることも事実でしょう。

また、子どもの権利をはき違えて対処すれば、子どもを甘やかしスポイルしてしまうことになります。

困難なことにもあきらめず、感情を抑えてがんばって取り組む姿勢は、日常生活の中で培われるものであり、学習の集中力や持続力も、学習の中で養成されるというより、やはり日々の生活全般の中で身に付けるものであると思います。


「およそ言いたいことは分かったが、では、具体的に日常生活の中で、どうしたら子どもの集中力と持続力を付けることができるのか?」

実は、この対処法は、自信にあふれた語り口で、巷に溢れています。

しかし、それらの対処法は、その効果を実証的に述べたものではなく、当然といえば当然なことを語ったにすぎないものが、ほとんどであると思います。

学習における集中力や持続力の養成は、間違いなく学習の範疇を遥かに超えて、生活全般の中で、またより幼い頃に、配慮して行われるべきテーマです。

なぜなら、それらが減退する要因が、今日取り上げたように、現代の社会的潮流に負っていると言えるからです。

このテーマについては、改めて紙面を用意して、私の長年の経験を踏まえ、論理的に実証的に、その対処法を検討してみたいと考えています。

 



(夏の日差しに映えるムクゲ)

 

 

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