2月3日、中学受験真っ直中の東京に、雪が降りました。私は雪国生まれなので、いつか雪に関わる思い出を綴りたいと思います。
4日朝の冬景色
さて、今回の和田中の問題は私自身が平成18年度から江東区立の小中学校で、平常授業を担当している関係で、避けて通れない問題を含んでいます。
この問題を考えるにあたって、まず近年の公立小中学校と学習塾との提携が、どのように行われてきたかを知る必要があると思います。
始めに、港区の土曜の学習指導についてです。
公立中学校が週休2日制になって、学習指導時間が私立中学校に対して明らかに少ない状態となりました。またゆとり教育の影響で、学校での生徒の学習量は減少しました。それを改善するために、土曜授業を含む補習指導を学校で行う必要性が出てきました。
その指導に、現場の公立教師を充てることは、公的機関全体が出費を抑える昨今に、コストの面で出来ない相談だったのでしょう。
一方、大手学習塾としては、要求する費用を相当下げても、長い目で見て公立学校の指導は、うま味のある話だったはずです。
塾教師の活用は、硬直した公立学校の学習指導に対して、また教師に対して、インパクトを与えるといった意図も、区の担当者にはあったことでしょう。
大手学習塾に、指導を丸投げした港区は、教師管理など雑多な事務作業からは解放され、当たりではないにしろ、はずれではない教師の補習指導を、実施できました。
港区の公立中の補習指導は、以上の両者の思惑の上に立ち、本音を「あうんの呼吸」で語らず、大手学習塾と区の教育委員会の「大人の取引」として成立しているといってもよいでしょう。
いずれにしろ、学校の土曜休日を有効利用して、生徒の学習時間を確保したという観点で、家庭にも支持され、大きな問題も生じなかった事例です。
次に、江東区の場合です。
今年度で2年目を迎える学習塾と学校の連携事業は、まず小学校の学習指導に、おもに地元の指導経験豊富な学習塾の教師を活用することにより、公教育を活性化することに目的があったと思います。
それは生徒の学力向上に、公的私的も無いのであり、連携して教育の質の向上を目指すものでした。
また学習塾を入れることにより、習熟度別のクラス分けも、生徒保護者に違和感なく受け入れられることがあったと思います。
初年度、区の教育委員会のこの企画に、多くの学習塾の教師が関心を示しました。しかし、次年度になると、まず地元塾の側からその熱が冷めてしまったようです。
学習塾と学校との連携事業の趣旨は良かったものの、学習指導の立案が各学校単位で、十分塾教師を活用できなかったことと、地元学習塾側のメリットが少なすぎたことが原因と思われます。
おまけに、ただ単に公立学校の風通しを良くする、また公立教師の意識改善をするために、塾教師を活用しているといった受け止め方もされたようです。
本来持っている地元学習塾の指導ノウハウを、うまく活用する受け手側(各学校・区教育委員会)の工夫が今後必要だと感じています。
江東区のこの取り組みは、公教育として港区よりまっとうな企画ではあるのですが、この企画を成功させるためには、塾の指導者と区教育委員会及び学校現場の教師とのより緻密な話し合いが不可欠でしょう。塾教師に、生徒に対する学習指導の権限を与えることも必要かも知れません。
では、今回の和田中の学習指導はどうでしょう。
まず、今回の和田中の学習指導が、港区と江東区と決定的に異なる点は、大手学習塾が公立学校の施設を使い有料で学習指導を行うことと、その指導対象者が選抜した学力上位者であることです。
この点において、あらためて公立学校の果たす役割と、公的教育機関と私企業の関係に関する問題を検討すること無しには、賛成しかねる人たちが多いに違いありません。
また違和感を覚える方の多くは、この点について、はっきりした結論を出し得ないからだと思います。
本来は、公的学習指導機関である公立中学・私立中学・公立一貫校等と、進学塾・補習塾・個別指導塾・家庭教師など私的教育機関とが、指導の多様性と選択の自由を確保しながら、うまく連携して各生徒の学力に応じた学習指導を展開してきたはずです。
今回のように、公立中学がその施設に進学塾を取り込む(あるいは進学塾が公立中学を取り込んでしまったのか)必要性があったのでしょうか。
唯一の利点として、保護者の教育費の負担の軽減ができるとしても、私は今回の和田中の取り組みには、賛成しかねます。
話題性・受けをねらったような印象を受ける今回の行為は、地道な学習指導の取り組みの結果出てきたものに感じられません。多少手間がかかるかも知れませんが、地元の学習塾と連携するなど、様々な点を配慮した学習指導を実施した方が、長期的に見て公立中学の学習指導として評価されたかも知れません。無論、個人としての学習指導能力は、例の進学塾の教師より優れた地元の学習塾教師は多いはずですから。
いずれにせよ、すでに実施された和田中の学習指導の波紋が、どのように各方面に影響を与えていくのか、今後の動向を注目していきたいと思います。
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4日朝の冬景色
さて、今回の和田中の問題は私自身が平成18年度から江東区立の小中学校で、平常授業を担当している関係で、避けて通れない問題を含んでいます。
この問題を考えるにあたって、まず近年の公立小中学校と学習塾との提携が、どのように行われてきたかを知る必要があると思います。
始めに、港区の土曜の学習指導についてです。
公立中学校が週休2日制になって、学習指導時間が私立中学校に対して明らかに少ない状態となりました。またゆとり教育の影響で、学校での生徒の学習量は減少しました。それを改善するために、土曜授業を含む補習指導を学校で行う必要性が出てきました。
その指導に、現場の公立教師を充てることは、公的機関全体が出費を抑える昨今に、コストの面で出来ない相談だったのでしょう。
一方、大手学習塾としては、要求する費用を相当下げても、長い目で見て公立学校の指導は、うま味のある話だったはずです。
塾教師の活用は、硬直した公立学校の学習指導に対して、また教師に対して、インパクトを与えるといった意図も、区の担当者にはあったことでしょう。
大手学習塾に、指導を丸投げした港区は、教師管理など雑多な事務作業からは解放され、当たりではないにしろ、はずれではない教師の補習指導を、実施できました。
港区の公立中の補習指導は、以上の両者の思惑の上に立ち、本音を「あうんの呼吸」で語らず、大手学習塾と区の教育委員会の「大人の取引」として成立しているといってもよいでしょう。
いずれにしろ、学校の土曜休日を有効利用して、生徒の学習時間を確保したという観点で、家庭にも支持され、大きな問題も生じなかった事例です。
次に、江東区の場合です。
今年度で2年目を迎える学習塾と学校の連携事業は、まず小学校の学習指導に、おもに地元の指導経験豊富な学習塾の教師を活用することにより、公教育を活性化することに目的があったと思います。
それは生徒の学力向上に、公的私的も無いのであり、連携して教育の質の向上を目指すものでした。
また学習塾を入れることにより、習熟度別のクラス分けも、生徒保護者に違和感なく受け入れられることがあったと思います。
初年度、区の教育委員会のこの企画に、多くの学習塾の教師が関心を示しました。しかし、次年度になると、まず地元塾の側からその熱が冷めてしまったようです。
学習塾と学校との連携事業の趣旨は良かったものの、学習指導の立案が各学校単位で、十分塾教師を活用できなかったことと、地元学習塾側のメリットが少なすぎたことが原因と思われます。
おまけに、ただ単に公立学校の風通しを良くする、また公立教師の意識改善をするために、塾教師を活用しているといった受け止め方もされたようです。
本来持っている地元学習塾の指導ノウハウを、うまく活用する受け手側(各学校・区教育委員会)の工夫が今後必要だと感じています。
江東区のこの取り組みは、公教育として港区よりまっとうな企画ではあるのですが、この企画を成功させるためには、塾の指導者と区教育委員会及び学校現場の教師とのより緻密な話し合いが不可欠でしょう。塾教師に、生徒に対する学習指導の権限を与えることも必要かも知れません。
では、今回の和田中の学習指導はどうでしょう。
まず、今回の和田中の学習指導が、港区と江東区と決定的に異なる点は、大手学習塾が公立学校の施設を使い有料で学習指導を行うことと、その指導対象者が選抜した学力上位者であることです。
この点において、あらためて公立学校の果たす役割と、公的教育機関と私企業の関係に関する問題を検討すること無しには、賛成しかねる人たちが多いに違いありません。
また違和感を覚える方の多くは、この点について、はっきりした結論を出し得ないからだと思います。
本来は、公的学習指導機関である公立中学・私立中学・公立一貫校等と、進学塾・補習塾・個別指導塾・家庭教師など私的教育機関とが、指導の多様性と選択の自由を確保しながら、うまく連携して各生徒の学力に応じた学習指導を展開してきたはずです。
今回のように、公立中学がその施設に進学塾を取り込む(あるいは進学塾が公立中学を取り込んでしまったのか)必要性があったのでしょうか。
唯一の利点として、保護者の教育費の負担の軽減ができるとしても、私は今回の和田中の取り組みには、賛成しかねます。
話題性・受けをねらったような印象を受ける今回の行為は、地道な学習指導の取り組みの結果出てきたものに感じられません。多少手間がかかるかも知れませんが、地元の学習塾と連携するなど、様々な点を配慮した学習指導を実施した方が、長期的に見て公立中学の学習指導として評価されたかも知れません。無論、個人としての学習指導能力は、例の進学塾の教師より優れた地元の学習塾教師は多いはずですから。
いずれにせよ、すでに実施された和田中の学習指導の波紋が、どのように各方面に影響を与えていくのか、今後の動向を注目していきたいと思います。
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