酔いどれ堕天使の映画日記

劇場やテレビでみた映画の鑑賞記。原則ネタばれなし!

『ディア・ドクター』(2009・日)

2009年08月10日 16時58分46秒 | 劇場鑑賞作品
先週の金曜日、娘のバレエのコンクールがあり
中野区のZEROホールに妻と次男と一緒にいってきました。
正確にいうと本選コンクールの前の“プレコンクール”というらしいですが
日ごろの練習の成果でしょうか親の贔屓目では、かなり上達した印象でした。

しかし現場は女性ばかりで気恥ずかしいこともあり
娘の出番までの時間を利用して新宿に急行。
西川美和 原作、脚本、監督のこの作品を堪能してきました。

先に読んだ直木賞候補にもなった話題の原作「きのうの神さま」(ポプラ社刊)は
医療に従事するそれぞれの主人公たちの過去や現在をきりとった優れた短編集。
この本には映画と同名の短編も含まれていて
映画をみるまではと意識して読み飛ばしていたのですが
小説家としての彼女はまったく別の話法をもちいており杞憂でした。

長らく無医だったとある過疎の村
今では数年前健診に訪れた伊野(笑福亭鶴瓶)という医師がこの村の診療所におさまってくれています。
親切で面倒見のいい伊野は村人から絶大な信頼を寄せられ今や村にとってなくてはならない存在。
つい最近都会からやってきた瑛太演じる研修医からも理想の医師として尊敬されています。
そんな伊野がある日突然村人たちの前から姿を消します。

周りの人物の淡々とした描写によって薄皮をはがすように少しずつ明らかにされる伊野の正体。
西川監督の抜群のストーリーテリングのうまさにはいつも感心させられます。

慈愛に満ちた眼差しと同時に突き放すような厳然さ。

前作『ゆれる』(2006)で感じた(昨年10月11日当ブログ)
人智を超えた何者かの視線を感じさせる独特な世界観ともいうべき表現手法は
この作品でも健在です。

主演の鶴瓶師匠もなかなかでしたが脇をかためる俳優陣が皆素晴らしかった。
特に不可思議な役どころの薬のセールスマンを演じる香川照之。
やはりこわいくらい絶品で
この監督との相性のよさみたいなものを感じます。

原作本の折り返しにある西川監督の愛らしい笑顔が素敵なポートレイト
これを見る目がにわかに羨望のまなざしへと変わりました・・・。

☆☆☆☆


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