酔いどれ堕天使の映画日記

劇場やテレビでみた映画の鑑賞記。原則ネタばれなし!

『不知火検校』(1960・日)

2009年06月01日 16時35分11秒 | TV鑑賞作品
BS2で深夜放送していたのを録画して昨日みました。

当時“売れない”俳優だった勝新太郎がみずから新境地を開き
大ヒットシリーズ『座頭市』が世にでる転換点となった傑作時代劇です。
監督はプログラムピクチャーの巨匠、森一生。

“検校(けんぎょう)”とは盲官の最高位。
中世から江戸時代までつづいた男性盲人の自治的な互助組織である“当道座”には
最高位の検校から順に、別当、勾人、座頭などの役職があったそうです。
江戸時代まで下ると高い官位を得るための金銭の授受が公然のこととされたばかりか
官位の早期取得に必要な金銀収入を容易にするため金貸しが公認されていたことから
多額の蓄財をなし吉原で豪遊するものもあらわれたということです。
(以上、Wikipediaを参考または引用して記述)

そんな時代背景のなか
杉の市と名のる若い鍼灸師が悪事を重ね検校までのぼりつめるおはなしです。

生来の狡賢さから周りを手玉にとり金銭を掠め取るばかりか女性をも弄ぶ杉の市
やがて子悪党を出し抜いて自らの師匠さえも手にかけます…。

人をあやめてもなお平然とする杉の市のあきれるばかりの極悪非道ぶりは
一方で不思議な魅力に満ちたユーモアを放ちながら決してみるものの心を離しません。

嬉々としてこのあたり役を演じきった勝新太郎の力量ゆえでしょう。

胸のすくかっこいい“市”もいいですが
人間くささが横溢して断然好きな映画です…。

☆☆☆☆

『皇帝の鴬』(1948・チェコ)

2009年06月01日 11時13分43秒 | TV鑑賞作品
ひきつづき人形アニメーションの巨匠、イジィ・トルンカの作品です。

先週書きました『バヤヤ』に続いてBS2で放送していたのを
録画して子供たちとこの週末みました。

もともとの邦題は『支那の皇帝の鴬』
“支那”が蔑称と解釈されるからでしょうか?いつのまにか省かれてしまったようです。
アンデルセン童話「小夜啼鳥」が下敷きのおはなしで
題名のとおり中国のかわいらしい皇帝が登場します。

冒頭と終わりに実写で登場する病弱で家に篭りがちな少年がみる夢という設定
このあたりの演出はともかくも
想像力をかきたてるトルンカの人形アニメはこの作品でも実に秀逸です。

独特なかたちでデフォルメされた人形たちの愛らしいキャラクターは
この寓話にぴったりですし
皮肉に満ちた演出とあいまって生き生きとふきこまれたその命に驚嘆します。

まさにトルンカ・マジック!
おとなのためのきわめて贅沢な“おとぎ噺”なのです。

☆☆☆☆