貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

美濃の壺石大騒ぎ

2024-05-19 10:04:08 | 国産鉱物

いやいや、びっくり仰天であたふたおろおろどたばた。(うるさいね)
ヤフオクを眺めていたら、「美濃の壺石」がなんと1000円で出ているではないですか。
は? 天然記念物ですぜ。今は採取不能で、オールドストックはめったに出ない。超レアものですぜ。ありえんだろ。
ただしでかい。最長24センチとある。
出品者さんはリサイクルショップ的な品揃え。石専門ではない。何かごちゃごちゃした石だしでかくて場所を取るから早々に売ろうとお考えになったのか。
なんで誰も手を挙げないの? でかいから? 確かにこんなのうちに置けるか?
しばらく迷ったけど「ええい」と入札。「美濃の壺石」を「入札者なし」なんて事態にはさせたくない。(何だそれ?) 誰かちゃんとしたコレクターが出てきて落札してくれるのならそれでいい、むしろその方がいい、と。(君はちゃんとしたコレクターではないと自白しているわけね)
ところが、なんとそのまま落札。
嬉しいは嬉しいけど、「わ、どうしよう」とも。(小心だねえw)
しかし落ち着いて調べたら、たまに出るらしく、メルカリで数千円で売ってるものもあった。(なあんだw) 天然記念物の稀少石なのに、もうこういうものに興味のある人はいないのでしょうかね。

で、とっかーんとでかい段ボールが到着。
開けてみると、「漬け物石ですか」という重さのモノが出てきた。
壷石は壷石だけど、えらくごちゃごちゃしている。そして、ズボンが泥で汚れた。
「は? これ伝世品じゃないの? 掘り出し?」
泥や砂がぼろぼろ落ちるのでともかく洗うことにした。洗面台にプチプチを引いて、シャワーを掛ける。
出るわ出るわ。洗面ボウルが泥水で溢れそうになった。カミさん激怒。そんなこと言ったってこんなに泥が出るとは思わなかったんですよ。
しばらく放置して、上澄みの水を少しずつ流して、溜まった泥をペーパータオルで拭き取って。ようやく復旧。小さな石もいくつか取れた。
はあ、大騒ぎ。で、ようやくじっくりと観察。

壷石は壷石だけど、きれいに壷になっていない。後ろに大きな石を巻き込んでいる。黒板消し(そんな言葉もう通じないぜw) じゃ大きめのスマホを3枚重ねたような「板」。見る方向によっては本体よりでかく見える。まいったねこれ。






どうも「お、壷石だ」と掘り出してはみたものの、巻き込みが大きすぎて「花生けにかがですか」と売りに出したのではないか。買った人は生け花の趣味があってそのまま使おうとしたけどちと乱雑すぎるので泥だらけのまま物置に放置した。で遺族が(またかよ)リサイクルショップに売りに出した。に違いない。
やれやれ。しかしこれは一応壷石である。天然記念物である。珍しい石である。そう見てあげなければいけない。

底を見たらまたびっくり。負けず劣らずの石がめりこんでいる。

こりゃ漬け物石になるわけだ。
壷の部分には穴が開けられている。石を外したのではなく何かの金具でごりごり穴を開けたらしい。中はちゃんと空洞。商品説明に「花生け」とも書いてあったので、ここに花を入れてインテリアにしろということらしい。まあ花器としては面白いかもしれない。

と眺めていたら、え? となった。
もう一つ付いてる?

そう、奥に小ぶりの亜球体があるのです。そっちは穴が開いていないから確かではないけれど、おそらく空洞でしょう。
すげえ、「二連壷石」! こんなんあり?

こうやって立てると、ちょっとした水石みたいですな。*すんません、最初の投稿で別の写真を入れてました。あほ。

こうやって飾ると、なんか現代アートですか?みたいになる。

礫を含む粘土層から産出するわけだけれどもその礫とは何か。堆積岩が風化崩壊し硬いチャートが残ったということらしい。これらはみんなチャート? しかしチャートって粉々になるものなんですかね。

壷石とか鳴石とか鈴石と呼ばれる「空洞亜球体含褐鉄鉱粘土岩」については、前に「生駒山産鳴石」で書いた。割とあちこちで出る。褐鉄鉱を多く含む粘土岩が空洞球体に形成され、しばしば周囲の礫を巻き込む。生成プロセスは不明。不老長寿の秘薬とかローテク鉄器生産とかにも関わる偉大な石である。ぜひご一読ください。自分で書いといて何だけどとても面白いです。
「美濃の壷石」は岐阜県土岐市で採れ、1934年=昭和9年に天然記念物に指定され一帯は採取禁止。これは周辺で出たものか。別に売買は禁止されていない。(わかったよw)
空洞内の粘土は「余糧」として薬扱いされた。振るとからから鳴るという記述はない。東隣の瑞浪市ではからから鳴る「鳴石」が産出し岐阜県指定天然記念物になっている。

こやつの場合、欲張って巻き込む石が大きすぎてこんな姿になったのでしょうか。
しかしねえ、褐鉄鉱が空洞球体になるというのも謎だし、そこに礫を巻き込むというのもよくわからない。その周囲の空間には何があったのか。水のような泥=粘土鉱物の中で起こったのか。からから鳴るのと鳴らないのとどう違うのか。

珍しくて面白い石だけど、とにかく図体がでかくて重くて、扱いに難儀する。部屋の中には置けそうもない。花を生ける趣味もないし。ベランダに出して眺めるしかないけれど、穴に水が溜まったらボウフラが湧くのではないか。ううむ。どうしよう。

(しかし変なものにあちこち手を出すねw)
うん、もう少し王道に戻ろうかと思う。


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