在沪日記

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フリーク・ショー

2021-11-08 | ワイキキの影
 マウイでしばらく過ごしたあとオアフ島に、しかもワイキキに移る。

 飛行機で30分の距離だがあまりの環境の違いにしばらくなじめずにいる。

 特に夜。マウイなら午後10時はもはや深夜と言っていい時間だ。

 同じ時刻、ワイキキは観光客のラッシュアワー。次から次へとホテルから人が出てくる。

 こんな時間でもレストランの空席を待つひとだかりができていたりする。

 カラカウア大通り。

 大道芸人が何組も通りに出ている。

 極彩色のオウムを観光客の肩にとまらせ、結構な記念写真代を請求する悪名高い「オウムおじさん」

 だが白人の家族連れは法外な撮影料をとられても楽しそうだ。

 デジタルカメラのモニターをファミリーでながめている。

 夜のワイキキの匂い。牛肉の焼ける匂い。ケチャップ、たまねぎ、フレンチフライの揚げ油、マスタード。

 それらはまじりあってレストランの厨房から漂ってくる。大通りを走る車の排気の匂い。

 観光客のオードトワレの匂い。

 客になりそうなの観光客の耳元にだけ聞こえるように発せられる不思議なマリワナ売りの声。

 突然マイケル・ジャクソンの曲が大音量で流れはじめた。

 その曲はなぜか本格的なオーディオシステムを搭載した電動車椅子から聞こえてくる。

 乗っているのは年老いた小柄な白人の男。目つきがうつろだ。ノロノロと歩道を進んで行く。

 通りかかった10代前半の白人の女の子が車椅子に走り寄り、曲に合わせて2小節くらい踊ってみせた。

 少女は老人に話しかける。
 
 「ハイ!最高ね。この曲大好き」

 車椅子の男は反応しない。虚空をみつめながら車椅子を進めて行く。

 「さよなら」

 老人に挨拶すると少女はくるりとふりむいた。

 そしてあっけにとられて眺めている僕と目が合うと突然悪い目つきをして笑い、叫ぶ。
 
 "Woo! Freak show!"

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