在沪日記

流れゆく人生を残すブログ マウイ オアフ 上海 シンガポール そして日本

上海201X-026

2022-09-28 | 上海201X



 路上で仕事をしているヒトが好きだ。

 これまでの写真をみてくださったカタはおわかりだろうが。



 あとは・・・・・・

 上海や東南アジアの街角では、「外で昼寝」しているヒトをみかける。

 昔は日本でもいたような気がするのだが、最近はみない。

 公園のベンチでウトウトじゃなくて、もう毎日一定の場所で寝ているヒトがいる。

 昼寝しているヒトも好きだな。



 このオジサン、よくみるとTシャツの背中に"Nippon Paint"と入っている。

 撮ったときには気づかなかった。

 塗装業のオジサンなのだろうか。

 いまはちょっと一服。

 おつかれさま。

 2010年代 上海の街角
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残念な国

2022-09-19 | 諸国つれづれ



なんかね。

これをプラスネジでとめちゃうところが、シンガポールなんだよなあ・・・・・・

残念な国
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セイドロウのサーモンフライ定食

2022-09-05 | 諸国つれづれ
 ニュー・メキシコ州中央の荒涼とした乾燥地帯、正確に東西に伸びたUSハ
イウェイがこの人口1168人の街を貫いている。

 スペイン語で「杉の木」を表す言葉が街の名の由来だ。

 だが街のまわりに「杉の木」は一本も見られない。

 土漠と岩と少々のセージブラッシュの低木がただただひろがっているだけだ。


 ステイトハイウェイとUSハイウェイの交差点、唯一の信号機のある交差
点が街の中心地になる。

 こういう街におきまりのガス・ステーションが交差点の南東の隅にある。

 通り過ぎようとすると、街唯一の信号機が必ず赤なのはなぜだろうか。

 いつも停められてしまう。

 4ブロックから5ブロック通り過ぎれば街を完全に通過できる。

 信号機の交差点から USハイウェイを西に進み、3つ目の交差点を南に折れる。

 そこから1ブロック進んだ左手、道路から60フィートほど奥に入ったところに
そのカフェは北向きに建っている。



 波打った白いトタンでおおわれた片流れの屋根がそのままひさしとなって店の
前面に張り出し、大きな日陰を作っている。

 コンクリートで舗装されたテラスに当たる部分にはふた組のテーブルと椅子が
出されているが、あまり使われることははない。

 深いビリジアンに塗られた木製の壁。

 窓と入口はエビ茶色の木製の木枠で縁取られている。

 建物に正対して中央からやや右寄りにある入口。

 白くペイントされた木製のドアには、5インチ四方の4つのガラス窓が埋め込まれ
ている。

 ドアの左の窓から白地に紺の文字で「OPEN」という切り文字が貼られたプラス
チックボードのサインがのぞいている。



 入り口のドアを開けると真鍮でできたドア・チャイムが乾いた音をたてる。

 入ってすぐホール。
 
 フロアには明るいグレイの樹脂製タイルが敷かれている。

 壁材は8インチ幅のスプルース。

 正方形の深茶色い木製天板にスチールの脚のついたテーブルが5つ。

 天板上にはメニューとソルト、ペパー、ケチャップ、マスタード、ホットソース、それに
キッコーマン醤油の瓶が置かれている。

 その周りにはクロームの枠に黒のビニール・クッションが張られたチェアーを配してある。


 入り口から見て左手に低めのカウンターがある。

 木製の天板のふちにアルミニウムのバインディングがほどこされている。

 カウンターにはクロームメッキスチールの頑強な一本脚スツールが5人分、等間隔に並んで
いる。

 スツール上の円形クッションはホールのチェアーと同じ黒いビニール張りだ。



 スツールに腰をおろしながら、左手奥の厨房に「「こんちは」と日本語で声をかける。

 「はーい、いらっしゃい、ちょっと待って」

 日本語のあいさつに反応した日本語の返事。

 女主人が現れる。

 背の高さは5フィートくらいじゃないだろうか。

 初めてこの店に来たときには、こんな小さなニュー・メキシコ州の街で、こんな小柄な日本
人女性が食堂を経営しているなんて驚いた。

 おそらく街で唯一の日本人。

 しかも彼女は「日系人」ではなく、日本で生まれ成人するまで日本で育った「日本人」なの
である。

 ハワイのサトウキビ労働者が着ていたという赤と白のボックスチェックの「パラカ」と呼ばれ
るシャツに何度も洗われた色合いの細身のワークジーンズ。

 足元はタンのワーキングメンズ・ブーツ。

 オフ・ホワイトのコットンのエプロン。

「あーひさしぶり。何か食べる?鮭フライできるよ」

 黒地に白くアルファベットの「O」が縫い取られたベースボール・キャップを被っている。

 キャップは彼女のトレード・マークだ。

「今日のキャップは大阪に住んでる友達からもらったやつ。日本のプロ野球チームの復刻版?
っていうの、昔のデザインらしいよ。あたし全然野球わからないからなんていうチームのか
知らないでかぶってるの」

 大きなピッチャーに入ったアイスド・ティーをプラスティック製の透明なタンブラーに注い
でくれながら、彼女はキャップについて説明してくれる。

 「キャップはディッシュに髪の毛が入らないように、と思ってね。最初はバンダナ巻いてた
んだけど、キャップの方がサッと脱げて便利だし」

「毎日キャップかぶってたら、そのうちお客さんがキャップをプレゼントだよってくれるように
なって。家に50個くらいあるかな。いちばんいいのは地元のリトルリーグのキャップ。あたしチビっ
コだからキッズ用がピッタリなのよ」

 笑いながらそう言って厨房のフライヤーに戻っていく。

 調理場からは”真性な日本のフライ”の匂いが漂ってくる。

 アイスド・ティーは氷なしだが、よく冷えていておいしい。

「お味噌汁いる?」

 しばらくするとボウルに入ったライスとつけあわせのマカロニサラダを出してくれる。

「最初、日本の定食みたいなものを出そうって思ったときにさ、どうしても『日本のパン粉』っ
てやつがこのあたりでは見つからなくてね。しょうがないから、食パン買ってきて自作したんだ
けど。ほら、いまはね『トンカツ』とかアメリカでもポピュラーになってきたから、通販で手に
入るんだよ。やっぱり自作のパン粉よりおいしくできるんだ、売ってるやつのほうが。くやしい
けど」

 調理場とカウンターを往復しながら話しつづける。

 調理場に入ると声が大きくなる。

 カウンター奥の壁にはソーダポップの商品名が入った大きな鏡がはめこまれている。
 
 スナップ写真やメモ書き、ポストカードなどが何枚も鏡の縁にさしてある。

 鏡のとなりには新聞を半分に折ったくらいのサイズの風景写真。

 砂浜から30mほど沖にふたつの円錐状の岩があり、それらはしめ縄でむすばれている。

 荒々しい白い波が岩に当たって砕けている。

 空は白っぽく曇っている。

 手前の砂浜には白い鳥居が見える。

「これは私の生まれた街にある観光名所。街って言ってもただの田舎だけどね。『君の
ホームタウンはどんなところなんだ』と聞かれたら、これがホームタウンの写真だよって
答える。海があって山があってイイとこだけど、一生をそこで過ごせって言われたらちょ
っとキツいかな」

 サーモンフライをサーブしながら写真の説明をしてくれる。

「ほい、ブルドッグ・ソース。そんなところから出てきて、いろんなところグルグルして、
こんなとこで、こんな食堂やるとは、思ってもなかったなぁ」

 料理を出し終えて彼女は故郷の写真を眺めながら、にっこりと微笑んだ。

「でもねそのほうがおもしろいよね。どうなるかわからないほうが。映画でもテレビのドラ
マでも『予定調和』っていうの?こうなるんだろうなぁってわかっちゃうやつは全然おもしろ
いと思わなかった。くだらない。こんなのウソだって。子供の頃からそう思ってたな」

「うん。大切なことは自分ではわからないから、毎日生きてけるんだよ。あ、なんかあたしか
っこいいこと言っちゃった?」

 照れ笑いしてから、ふと彼女は真顔になった。

 店の裏ではトヨタのピックアップ・トラックがニュー・メキシコの強烈な日差しを浴びている。

 彼女の車。

 ホワイトのボディは土埃でなかばベージュに見えるくらい汚れている。

 ジリジリと陽の光にあぶられながらトラックは停まっている。


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