店長さんはマカナイを食べている、モグモグモグ。
今日のマカナイは搾菜と細切り肉を炒め。それに白米飯と冬瓜スープだ。
「甜蜜蜜」というのがこの店の名前。
8年ほど前にできたショッピング・モールの地下階にある。
「茶餐庁」形式のレストランだ。
チェーン店らしい。
若者相手の店だから安い。
安いけれどそこそこおいしい。
上海ではある程度の味を提供できないと飲食店はつづかない。
僕が上海に来てからもうすぐ5年になるけれど、「安い」だけで「おいしくない」店が何軒も
開店してはあっという間に潰れていった。
それだけ「安くてそこそこうまい」店の競争が激しい。
「甜蜜蜜」の菜単品目はたぶん200くらいあるだろう。
店名からわかるように、香港スタイルの甜品スイーツメニュー、例えばマンゴーポメロとか
タピオカ入り焼きプリンが売り物なのだが、その他に、おかず、それにお粥や麺類ご飯物も揃え
ている。
要するになんでもある。
そして、安くてそこそこに美味しい。
昨夜少し飲みすぎた僕は、朝昼兼用の食事として「ピータン痩肉粥」を食べにきた。
収銀所のイスに座って店長さんはマカナイを食べている、モグモグモグ。
店長さんは30歳くらいの女性。けっこうガタいがいい。ガッシりしてる。
クセ毛をいつもお団子状にして頭の頂上でまとめている。
春夏秋は店の制服の黒いポロシャツを着ている。
冬はその上にダウン。
顔見知りになってからは、「今日も粥か?」とか「健康にいいからブロッコリーを食べろ」
とか声をかけてくれるようになった。
ホールには服務員がいるけれど、大声を出して捕まえるのがめんどうくさい。
二日酔いだから。頭痛いんだよ。
直接キャシャーの店長さんのところに注文しにいく。
「こんちわ。僕は冷たい塩セブンナップと皮蛋痩肉粥が必要だ」
悪い発音の変な普通語で店長さんにそう伝える。
いちおう通じる。
店長さんはマカナイをたべながらオーダー用の端末に僕の注文を入力してくれる、モグモグモグ。
「15元」
その場で支払って席に戻る。
店長さんはスマートフォンを見ながらマカナイを食べている、モグモグモグ。
ピータン粥はいつもの味だ。
すぐに食べられないくらい、熱い。
上海では珍しい、こんなに熱いのは。
別にとびきりうまいわけではない。
でもこれでいい。
油のまわってしまった油条。
が、しかし、これをお粥といっしょに食べると結構おいしいんだ。
店長さんはマカナイを食べ終えて、だれかに電話をかけている、「喂?」
僕の中国語ヒアリング能力では断片の単語しか聞き取れない。
僕も粥を食べ終える。
店長さんごちそうさま。
またね。