上海にも梅雨がある。
日本列島に横たわる梅雨前線。
その西端が華南までのびてくると、上海も梅雨入りだ。
ただ雨の降り方が違う。
東京のように何日間も雨が降りつづくことはない。
日中、数時間だけ強い雨の降る日が2週間ほどつづく。
それが上海の梅雨。
梅雨が終わるころ、水蜜桃が旬を迎える。
華南は桃の産地だ。
戦前の日本には「上海水蜜桃」という名の桃が流通していたらしい。
もちろん今でも无锡(江蘇省・無錫)の水蜜桃は名高い。
かの地から運ばれた水蜜桃が6月半ばから上海の街角に顔を出しはじめる。
住んでいるフラットの前に移動果物店がやってくる。
トラックの荷台にフルーツをのせた行商人だ。
我家では彼らをフルーツ・トラック、略して「フルトラ」と呼んでいる。
残念ながらフルトラで買うよりも、店舗を構えた果実店の方が品が良い。
やはり看板をもたない商売は限界がある。
同じ「看板あり」のフルーツ・ショップでも、繁華街にある立派な店はあまり利用しない。
一番いいのは小区の入り口にあるような半露店の果物屋。
上海の人々は夕飯のあと散歩する。
そしてこのナイト・ウォーキングのついでに明朝食べる果物を買う。
自分の住む小区の果物屋に並ぶ品がよくなければ、となりの小区の店舗まで行ってしまう。
なんてったって散歩なんだから。
少々の距離なんか気にしない。
いいかげんな品物を置いたら買ってもらえないのは店側もよくわかっている。
かくして小区の果物屋のレベルは高くならざるえないのだ。
そんな小区のフルーツ・ショップで无锡の水蜜桃を買う。
雨上がりの夕方、舗装が悪くてやたらと水溜りだらけの道をあるいて家に帰る。
西の空は夕焼け。
明日は晴れそうだ。