長年オアフで働いている友人と昼飯を食べた。
ペリーズ・スモーギーで。
彼が働いているワイキキで会うことになり、教えてくれたのが「ペリーズ・スモーギー」
クヒオ通りとカネカポレイの角に店があるのは知っていた。
僕が「アメリカの安食堂の味を食べたい」と言ったら「あんまりおいしくないけどいいかい?」と誘ってくれた。
入り口のキャシャーで料金を払って店に入る。
壁のない広い店内。
パビリオン形式っていうのかな。
薄暗くて風の通るところが「古い南国の店」という雰囲気を生んでいる。
数種類の薄いライオンコーヒーが10パイントも入るような大きな保温ポットに入れられて並んでいる。
分厚い茶色のマグにコーヒーを注いで運ぶ。
カネカポレイストリート側の庭になっている部分のテーブルについた。
フェンスぎわに沢山のシダが植えられている。
「いちおうね、こんなところが俺の思い出の店なんだ」
ランチのメイン料理であるローストチキンを口に運びながら彼が笑った。
ローストチキンは丸焼きを係員がスライスしてくれる。
「21歳のときにハワイに来て、初めて入ったレストランがここだったんだよ」
「『スモーギー』って『スモーガス・ボード』だろうから、たぶんバフェだろうと思ったんだよね。だったら簡単でいいやって思って」
「いちいち英語で注文もしなくていいしさ。チップの計算とかしなくていいし。長い間飛行機乗って疲れてて初めてのハワイだから楽に済まそうと思って。ひとりだったしね」
「でも失敗したよ。鳥」
「ほらあそこにいるマイナバード、食べ残しを狙ってるんだ。だから途中で席を立つことができない」
「コーヒーもう一杯飲みたいな、と思っても皿のうえに食べ物残しておけないわけ。これは地味にストレスだったな」
そう言われてみると確かにスレート張りの屋根のふちで鮮やかなオレンジ色のくちばしの鳥が何羽もあたりをうかがっている。
店は1970年代に開業したという。
いまある建物は1983年に改築されたそうだ。
「80年代のハワイ」というものを僕は知らないが、当時の雰囲気をこの店は残している気がする。
「うわ、このマッシュポテトグレービー、ヤバいんじゃないのか。少しすっぱいぞ」
彼がおおげさにのけぞって笑う。
「でも食べちゃおう」
テーブルからはカネカポレイ通りをはさんで向かいに3階建ての古いコンドミニアムが見える。
ベージュ色のコンドミニアムの壁面には”Beach Side Apartment “と記されている。
ビーチまで4分の1マイルあるビーチサイドアパート。
アパートの部屋に暮らして夕飯はペリーズ・スモーギー。
そんな生活をふと想像してしまった。
「こんな店だけどさ、ここに来るとハワイ初日を思い出すんだよ。あのころの自分はバカだったなあってこととね。まあ今でもバカだけど」
”Beach Side Apartment “はいつまでワイキキにありつづけられるのだろうか。
(「ペリーズ・スモーギー(Perry's Smorgy Restaurants」は2010年8月に閉店した。)