Broken Flowers …はうはう河馬の脂肪遊戯

いらっしゃいませ。お独りさまで?どうぞお好きな席に。戯れ言、繰り言、かあるくかるく。

02…淡い緑色のような、蒼白いような、そんな光を

2008年07月02日 | 2008


庭の睡蓮鉢の横の芝生に蛍が一匹、蒼白い光を放って、静かに居た。
ぬばたまの闇の中、俺は手を伸ばし蛍を捕らえようとしたが
蛍の元気がなかったのか、俺の指の間から転げ落ちて、芝生の草の間に落ち込んでしまった。
それでも、蛍は、ぼおっと、淡い緑色のような、蒼白いような、そんな光を放ち続けている。
捕らえるのをあきらめて俺は家の中に入り、母に蛍がいたことを告げる。
テレビを見ていた母は、俺の言葉に喜んで庭に出て蛍を探した。

最初、どこに隠れたのか、見つけられなかったが、
ほどなく、草の陰で光っている蛍を見つけることができた。
見つけてうれしそうに笑む母。
闇の中、蛍の姿は見えず、放つ光しか見えないのだが、
その光があまり動かないところをみると、やはり弱っているのかもしれない。

「おまえ、こんなところで、このまま、終わっちゃうのかい?」

母の何気ない、蛍を思いやるつぶやきに、俺の心が揺れた。

どうやら、俺んちも夏が来た。
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